トピックス
最高にチネリ! 2019ニューモデル&ニューグラフィック
2018.09.07
グランドツアラー的作りのカーボンディスクロードが登場
2017年のスーパースターを皮切りに、翌2018年にはネモティグのディスクブレーキ仕様をデビューさせたチネリ。新登場の「ヴェルトリクス ディスク」はこの2機種とはアプローチが異なり、計画段階からディスクブレーキ仕様を念頭に開発された初のモデルなのだ。
BBエリアからチェーンステーにかけては剛性に優れるハイモジュラス、快適性を左右するシートチューブやシートステーにはハイレジスタンス、ヘッドチューブからトップチューブにかけては中間グレードという具合に、3種類の異なるカーボンプリプレグを要所で使い分けている「ヴェルトリクス」。
ジオメトリーはグランドツアラー的であり、振動吸収性に優れることから特にグランフォンド的な走りに向いている。初心者から中上級者までオールマイティに楽しめる一台だ。
VELTRIX DISC(ヴェルトリクス ディスク)
完成車価格/41万円(税抜)
■サイズ/XS(50)、S(52)、M(54)、L(56.5)、XL(58.5)
■フレーム/カーボン
■フォーク/カーボン
■BB/BSA68mm
■シートポスト/φ31.6mm
■メインコンポ/シマノ・105 R7020
■ブレーキ/ハイドローリックディスクブレーキ(フラットマウント)
■ホイール/ビジョン・チーム30コンプ(スルーアクスル)
■タイヤ/ミシュラン・ダイナミックスポーツ 700×25C
■フレーム参考重量/1000g(Mサイズ)
■フォーク参考重量/440g
■カラー/ブルーバーンズオレンジ
■最大タイヤ幅/700×28C
※他にリムブレーキ仕様完成車、同フレームセットあり
大屋雄一の試乗インプレッション
一踏みごとにスルスルと速度を上げていくヴェルトリクスディスク。気が付けば時速35㎞に達し、しかもその速度域を楽にキープできる。路面からの衝撃を包み込むように緩和するコンフォートさを持ちながら、加速の印象にもっさりとしたものは一切なし。
そして、やはりディスクブレーキ版を前提に開発されているからか、ハンドリングについて舵角の付き方に左右差は感じられず、またハードブレーキングにおいてもフォークがねじれるような症状は皆無だ。
試乗車がプロトタイプで、アッセンブルも完成車販売の内容からグレードアップされていたとはいえ、この新型車の素性の良さは十分に伝わってきた。
乗り心地抜群!究極のコミューティングロード「センパー ディスク」
SEMPER DISC(センパー ディスク)
■完成車価格/19万円(税抜)
■フレームセット価格/10万円(税抜)
■サイズ/XS(50)、S(52)、M(54)、L(56.5)、XL(58.5)
■カラー/ブルーディスティニー
■フレーム/アルミ
■フォーク/カーボン
■BB/BSA68mm
■シートポスト/φ27.2mm
■メインコンポ/シマノ・ティアグラ
■リム/アレックス・ATD500
■ハブ/シマノ・ティアグラ
■タイヤ/ミシュラン・ダイナミックスポーツ 700×25C
■サドル/サンマルコ・モンツァ
■ブレーキ/ディスクブレーキフラットマウント(ワイヤ式)
■フレーム参考重量/1600g(Mサイズ)
■フォーク参考重量/500g
■最大タイヤ幅/700×30C
※他に日本限定カラー完成車あり
センパーディスク試乗インプレッション
アルミロードのイクスピリエンスをベースに、主に後ろ三角を再設計してディスクブレーキ仕様とした「センパーディスク」。ヘッド角も寝かせるなど、主にコミューターとしての性格が与えられたモデルだ。
こちらも試乗車のアッセンブルの内容が完成車販売の状態よりもグレードアップされていたが、キビキビとした小気味良い反応にヴェルトリクスとは異なる魅力を感じた。また、アルミとは思えない振動吸収性の高さもポイントだろう。
チネリのグラフィックデザインはどう生み出されているの?
「社内には2人のデザイナーが常駐しています。アレッサンドラはイタリア国内でも有名なデザイナーで、実は1年間だけ日本の京都にある布団メーカーのグラフィックを手掛けていたこともあるんですよ。デザインについては自転車以外のフィールドからインスピレーションを受けることが多く、たくさんのデザイン画を壁一面に貼り付け、それを社員の多数決によって選びます。それ以外にも社外の著名なデザイナーに依頼することもありますね」
We are cinelli!(part1)
2019 New Models & New Graphics
チネリ代表・コロンボ氏が語る「これがチネリだ!」
チネリを傘下に収めたきっかけ
私の父は鋼管メーカーであるコロンボ社の経営者で、そこでは航空機や4輪、モーターサイクル、自転車、高級家具などに使われるスチールパイプを製造していました。
父の友人の一人がチネリの創業者であるチーノ・チネリ氏で、私は幼い頃から彼の元へよく訪れていたのを覚えています。チネリ氏は自転車競技の実力者であり、またコロンボ社にとっては自転車用パイプの有能な代理店でもあったのです。ちなみに彼の奥さんは、英語やフランス語、ドイツ語を話せましたね。
当時の私はというと、技術や工学系よりも人文学的なものに強く引かれる若者で、20歳になる前から絵画を買い始め、また自分でも絵を描いていました。自転車選手ではありませんがスポーツは大好きで、特にスキーや山歩きを好んでいました。建築家になるのが夢だった時期もありますね。
21歳の頃、コロンボ社の製品の中でも自転車用パイプに興味を引かれるようになりました。当時、我が社ではチネリ氏がどこにパイプセットを輸出しているのかを把握していませんでした。そのことで彼と対立した時期もありましたが、私はコロンボ社の仕事を自分でコントロールしたいという気持ちの方が強かったのです。
1976年頃、チネリ氏から「息子が仕事を継ぐ気がないんだ」という相談を受け、翌年に法律家でもある友人と相談し、コロンボ社から独立しました。自転車向けのパイプ部門だけを分離させるということで父が許可をくれたのです。それがコロンブス社で、銀行から大金を借り、チネリを傘下に収めました。
当時の多くの自転車メーカーは実用車と競技用の両方を生産していたのに対し、チネリはトッププロおよび一部のアマチュア選手が使うロードレーサーやトラックレーサー、さらには革新的なハンドルやサドルなどを製造していました。コロンブス社が経営に携わるようになってからは、私自身がアートに興味を持っていたこともあり、デザインに重きを置いた自転車を作れるのではないかと思ったのです。
ただ、決してレースを忘れたわけではないことを強調しておきたいですね。チネリ氏と一緒にジロの現場を追ったり、レースにはいい思い出がたくさんあるからです。
ちなみに、私は今でも絵画を収集していますが、趣味でも、ましてやビジネスでもありません。モノを集め、手にすることでその世界を深く理解できることもあります。しかしながら、人間の最大の特権は収集ではなく読書でしょう。そういう観点から考えると収集癖はある種の弱さであって、私自身ははかなさを探し求めているのかもしれませんね。
自転車は何らかのアイデアが必要
私がプロデューサーとして心がけていることは、自分を理解してもらえるスタッフを見つけることです。いいメンバーがそろうことで自分が蓄えてきた文化的な要素が製品やグラフィックとなって結実します。より良い結果を求めるには、常に自分とスタッフにストレスをかけ続けることが重要なんです(笑)。
全ての自転車製品は、何らかのアイデアを持つべきだと私は考えています。それは大小を問わず、パーソナルなものであってもいい。ある意味、存在しないものを探し続ける行為が必要で、それができればミッションを達成したといえるでしょう。もちろん、誰しもがダ・ヴィンチのようになれるわけではありませんから、プロダクトに何らかのアイデアを与えられれば成功だと考えています。そのうえで、デザインとは製品に付け加えるべきものではないと思っています。
そもそもデザインとは、生産現場からユーザーが使うシーンまでを総合的に考えることで、目標やミッションがあり、仕事が生まれ、個性が誕生する。あくまでも自転車というスポーツに突き動かされたものであるべきでしょう。競技用自転車のフレームの素材は、スチールからアルミ、そしてカーボンへと変化しました。あらゆる素材にそれぞれ固有の性質があり、ポテンシャルを追求するという行為自体は全てに共通します。
例えばチネリにはXCRというモデルがあります。ステンレスパイプの開発には何年もかかったので、それ自体は古く思えるかもしれませんが、新しい技術が導入されています。言うまでもなくカーボンにもいろいろな可能性が秘められているし、また古くからある鉄やアルミでも新しいパフォーマンスや課題、高いレベルの安全性を引き出すことが可能だと考えています。
スポーツでほほ笑むことを目指す
1981年にエアロダイナミクスをコンセプトとする「レーザー」を発表しました。これはニューヨーク近代美術館(MoMA)にも展示されています。スチールパイプで新しいことをやろうという構想からプロジェクトが開始し、当時のチネリの全てを集め、限界に挑みました。
1980年代初頭において最高の剛性を確保しながらも柔らかい曲線で構成されたこのフレームは、有能な設計者アンドレア・ペゼンティをはじめとする何人もの力の結晶といえるものです。美しさ、速さ、狂気を閉じ込めたライディングマシンに仕上がりました。
スポーツは自分を幸せにするためにあり、必ずしも競技で1位になるためではありません。スポーツでほほ笑むことができれば完全なスポーツマンになったといえます。レーザーはナショナルチームの選手には輝かしい結果を、また私たちのようなホビーライダーにもほほ笑みを与えてくれるバイクです。
最近は自社工場を持つブランドとそうでないところがありますが、完璧なプロトタイプを作ることができ、さらに製造現場のクオリティコントロールができるのであれば、この2つに違いはないと思っています。あくまでも重要なのはアイデアで、それをチネリで生み出すこと。さらにプロトタイプをチネリで作ることができれば、生産はどこで行っても変わりがないと私自身は考えています。
最後にみなさんへメッセージを。チネリのオーナーになるということは、優れた仕事をした製品に触れることとイコールであり、人生や芸術のひとかけらを手に入れたことになります。それに気が付いてもらえるかは分かりませんが、テクノロジー、切磋琢磨、着想がチネリのプロダクトには必要なのです。
「チネリのオーナーになることは、人生のひとかけらを手に入れること」
チネリキャンプ2018 in 淡路島
チネリファンのための交流イベントが今年も淡路島で開催! イタリアの一流シェフをゲストに招き、参加者たちは料理とライドをぜいたくに楽しんだ。
地元食材が本格イタリアンに
本キャンプも今年で2回目。今回は合計12人の〝チネラー〞が集まった。さすがはチネリファンで、ウエアとバイクをバッチリとコーディネートしている人が多く見られた。
目玉はシェフのアンドレア氏による料理教室で、ライド前に参加者が仕込みを行い、ライド終盤には氏が料理を仕上げて待っていてくれるというものだ。たこやたまねぎといった地元食材がふんだんに使われ、マカロニ、リゾットといった本格料理が出来上がった。
食した参加者たちは一同に「おいしぃ.....」とため息。大満足の一日となったようだ。オリジナル補給食レシピを教えてもらったので、ぜひ作ってみよう。
【text:CYCLE SPORTS】