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ビアンキ・オルトレ XR
2013.02.27
ヴァカンソレイユ仕様のオールラウンダー
「オルトレ XR」のフレーム形状は従来のオルトレと同様。素材についても40&60tクラスのHMカーボン繊維にナノパウダー配合のレジンを用いることに変更はない。しかし、ダウンチューブからチェーンステーまでの素材の選択や積層などを見直すことで、剛性の強化とともに軽量化を果たしている。具体的には30g減少した895gのフレーム単体重量(55サイズ)を実現しながら、剛性については20%の向上を果たしている。
トッププロレースのハイスピードライドを念頭に、エアロフィンを装備したフォーククラウンや翼断面を持ち、ホイールカットアウトされたシートチューブなど空力性能を意識した造形のフレームは印象的。しかも、きわめてバランスに優れたオールラウンドな性能を追求している。パワーラインについてはダウンチューブからBB30規格のハンガーシェル、チェーンステーまでの一体感にあふれる作りによってパワーロスが抑えられている。一方のパワーラインはきゃしゃな印象。アーチ状のトップチューブに始まり、UTSS(ウルトラ・シン・シートステー)と呼ばれるきわめて細いシートステーによってパワーラインとの剛性をバランスしながら、乗り心地の向上と脚への負担の少ないペダリングフィールが追求されている。
オルトレXRは今回のマイナーチェンジを受けて重量比剛性と空力、そして快適性という最新レーシングバイクに必要とされる要素をさらなるレベルへと引き上げ、高次元なオールラウンド性をいっそう際立たせることとなった。
ビアンキ・オルトレ XR
カンパニョーロ・スーパーレコードEPS 11 SP完成車価格 120万7500円
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
コンポーネント:カンパニョーロ・スーパーレコードEPS 11 SP
ホイール:フルクラム・レーシングスピードXLR
タイヤ:ハッチンソン・カーボンコンプ 700×23C
ハンドルバー:3T・エルゴノヴァ プロ
ステム:3T・アークスチーム
サドル:フィジーク・アリオネキウム
シートポスト:オルトレ・フルカーボンエアロ
試乗車実測重量:6.63kg(55サイズ、ペダルなし)
サイズ:47、50、53、55、57、59、61
カラー:OC
■写真下・左:フロントフォークのクラウン後方にはエアロフィンが装備されている。ダウンチューブとの間隔を埋めるようにすることで前から受ける風を後方へとスムーズに流して空力効果を高める。
■写真下・中:ヘッドチューブは下側のベアリングを1-1/4インチに設計したテーパードタイプ。正面から見るとわずかにアワーグラス状に成型され、空気抵抗を高めると同時に重量増を防いでいる。
■写真下・右:ボリューム感のあるチェーンステーに対し、きわめて極細に設計されたUTSSと呼ばれるシートステー。不安にも思える細さだが走りに問題はなく、快適性の向上に大きく貢献する。
■写真下・左:トップチューブは、シートポスト側の断面積をかなり抑えた設計。全体のアーチシェイプとともに振動吸収性の向上、パワーラインとの剛性バランスを調整して快適な走りを与える。
■写真下・右:チェーンステーは縦方向にボリュームを持つデザイン。中間付近をしっかりと内側に絞り込み、さらにその付近の断面積を増やして効率性と快適性を両立するペダリングが追求される。
■ハンガーシェルはBB30規格を採用。ダウンチューブからハンガーシェル、チェーンステーまでを流れるような一体感のある造形として最適な剛性バランスが追求されている。
吉本 司の試乗インプレッション
フレーム形状やスペックからも万能な性能を追求したことが想像できるオルトレXRだが、その走りには開発コンセプトがしっかりと反映されている。前作のオルトレはガッチリというよりも、しなやかな感覚のあるフレームだった。今作は剛性が向上したとはいえガチガチという作りではなく、基本設計は継承されている。ヘッドからハンガー部まではしっかり感があるが、チェーンステーとアッパーラインの剛性は抑えられ、それがフレーム全体に最適な剛性バランスをもたらしている。
出足に驚くほどの鋭さは感じないが、それでもレースには不足のないレベルだ。そして、このバイクの美点は高い巡航性にある。レーススピードで走り続けるような場面ではペダルを踏みやすく、しかも脚への負担が少ないため巡航時間を延ばすことができる。また、加速についても中~後半で伸びる感覚がある。脚への負担を抑えつつ走れるので、レーススピードが上がってちぎれそうなとき反対にライバルを振り切るときにもうひと踏みできそうだ。タイプとしては高速ツアラー風味の万能モデルで、乗り心地もかなり優れるため、今回セットされているようなエアロ系ホイールも相性がいい。そして、どっしりと安定感のある走りは老舗イタリアンブランドならではで、その乗り心地のよさも相まって荒れた路面の下りでも恐怖感は少ない。
全体的に非常に扱いやすい性能なのでハイレベルなレースはもちろんなのだが、一般ライダーのエンデューロやロングライドといったシーンでも大きなアドバンテージを得られるだろう。
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