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ポートがオーストラリア人として初優勝! パリ~ニース2013ハイライト

今シーズン、ヨーロッパで最初のUCIワールドツアーは、チームスカイのリッチー・ポートが初制覇した
Photo: Graham Watson

チームスカイ第三の男がパリ~ニースを制覇


1933年に創始し、今年で71回目を迎えたフランスのパリ~ニース(UCIワールドツアー)では、これまでオーストラリア人が総合優勝したことはなかった。その称号を今年勝ち取ったのは、28歳のリッチー・ポートだった。彼は地元のUCIコンチネンタルチームからデンマークのチームサクソバンクへ移籍した2010年に、初出場したジロ・デ・イタリアで3日間マイヨ・ジョーヌを着用して脚光をあびた。ポートは最終的に総合7位で新人賞を獲得し、グランツールで活躍できるステージレーサーとしてのキャリアをスタートさせたのだ。しかし彼は昨年、英国のチームスカイへ移籍し、山岳アシストとしてブラッドリー・ウィギンス栄光の影に隠れてしまっていた。昨年のパリ~ニースでも、ポートはウィギンスの総合優勝のために働いていた。 しかし、ポートの転機は意外にも早く訪れた。今年のパリ~ニースにはウィギンスは出場せず、チームスカイでウィギンスとともにグランツールのエース格であるクリストファー・フルームは、コロンビア勢をアシストに引き連れてイタリアのティレーノ~アドリアーティコ(UCIワールドツアー)に参加することになった。そしてポートは、ウィギンスの代わりにゼッケン1を付けて、パリ郊外のウイユで行われたプロローグのスタートランプに上がったのだ。フランス人のダミアン・ゴダン(チームヨーロッパカー)がプロ初優勝を飾ったプロローグでは、ポートは9秒遅れの39位だった。

パリ~ニースは『太陽へと向かうレース』という愛称を持っているが、今年はなかなか太陽に恵まれない日が続いた。フランスチャンピオンのナセル・ブアニ(FDJ)とマルセル・キッテル(チームアルゴス・シマノ)が、スプリンターのための最初の2区間を分け合ったあと、迎えた第3ステージは雨天のなかで行われた。その厳しいステージを逃げ切り、ゴール勝負を制して区間優勝したのは米国のアンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ)だった。チームは彼の総合成績をバックアップするために、万全の布陣で今年のパリ~ニースに参加していた。リーダージャージのマイヨ・ジョーヌを獲得したタランスキーは、今年最難関だった第5ステージのラ・モンターニュ・ド・リュール峠も、最終日のコル・デーズも自分に向いていて、マイヨ・ジョーヌを最終日まで守り切るのは可能だと、自信に満ちあふれていた。 標高1600メートルのラ・モンターニュ・ド・リュール峠にゴールした第5ステージ。スタート前にマイヨ・ジョーヌのタランスキーとポートのタイム差は、たった7秒だった。最後の峠で、弱冠24歳のタランスキーはけっして守りの走りはしなかった。ゴールまで残り3kmの間に、彼は自らアタックを3度試みたのだ。しかし、ポートは落ち着いてその攻撃に反応し、マイヨ・ジョーヌを先行させることはけっしてしなかった。そしてゴールまで残り1.4kmで、ポートがアタックしたときには、タランスキーも他のライバルたちも、付いて行くことはできなかった。この日、ポートはタランスキーに33秒差を付けて区間優勝し、表彰台でマイヨ・ショーヌにソデを通し、「ずっと欲しかったんだ」と言うクレディリヨネのライオンのぬいぐるみを獲得した。 ニース郊外のコル・デーズ峠を上る最終日の山岳個人タイムトライアルは、ポートの初優勝に花を添えただけだった。彼は9.6kmのコースを19分16秒で駆け上がり、今大会で2度目の区間優勝を果たした。彼はモナコに住んでいて、この峠はトレーニングで熟知していたのだ。総合でタランスキーとのタイム差が30秒以上あったことも、精神的に有利だったはずだ。それでもポートは、マイヨ・ジョーヌを着て走った2日間はとてもストレスを感じていたと明かしている。 ■総合優勝したポートのコメント「このレースでは昨年ウィギンスをアシストしたこと以外に、素晴らしい経験はしていなかった。なのにここに来て勝てたのは信じられない。落ち着くには時間がかかりそうだよ。7月の(ツール)のことはわからないけれど、来年の5月にはマリア・ローザ獲得に挑戦するだろう。ボクはジロ・デ・イタリアが好きなんだ。ツール・ド・フランスは最大のレースだけど、パリ~ニースで区間2勝して総合優勝するのだって、そう悪くはないさ」

第71回パリ~ニース個人総合最終成績

1 リッチー・ポート(スカイ/オーストラリア)29時間59分47秒 2 アンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ/米国)+55秒 3 ジャンクリストフ・ペロー(AG2R・ラモンディアル/フランス)+1分21秒 4 ティージェイ・バンガルデレン(BMCレーシング/米国)+1分44秒 5 シルバン・シャバネル(オメガファルマ・クイックステップ/フランス)+1分47秒 6 シモン・スピラク(カチューシャ/スロベニア)+1分48秒 7 ディエゴ・ウリッシ(ランプレ・メリダ/イタリア)+1分54秒 8 リューウェ・ウエストラ(バカンソレイユ・DCM/オランダ)+2分17秒 9 アンドレアス・クローデン(レディオシャック・レオパード/ドイツ)+2分22秒 10 ペーテル・ベリッツ(オメガファルマ・クイックステップ/スロバキア)+2分28秒