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スチール製レーサー MIYATA ELEVATION EXTREME
2012.08.24
スチール製スペシャルレーサー
当時の代表的なリザルトは、バイクを供給していたチームカプリゾンヌ・コガミヤタのピーター・ビネンが1981年のツール・ド・フランス第19ステージ、モルジンヌ~ラルプ・デュエズで優勝。日本製バイクとして初めてラルプ・デュエズを制したというもの。ビネンはその年に新人賞も獲得した。
その活躍を支えたフレームに使われていたチューブは、ミヤタのオリジナルバテッドチューブだった。そのチューブをさらに進化させて1984年に発表されたのがSSTB(スパイラル・スプライン・トリプル・バテッド)というチューブの内部に螺旋状のリブを設けることで、軽さと強度を両立させた独創的なチューブ。大きな話題となったのはもちろん、サイクリストの記憶にも特別なものとして残っている。
「エレベーションエクストリーム」に使用されているクロモリチューブは、先に説明したSSTBの技術を生かし、チューブ素材にニオビウムを加えることで、軽さに加え通常のクロモリチューブに比べて重量当たりの剛性が30%以上向上している。これにより完成車重量6・5kg(カタログ値)を実現。さらに強度を失わずに靱じん性を保つことができているので、ペダリングパワーのロスを抑えて、かつバネ感のあるフレームに仕上げている。また衝撃吸収性能も持ち合わせ、ライダーへのストレスを減らすとともに安定した走行を可能としている。なお、このバイクは完全受注生産となっている。
■写真下・左:フォークにはコロンバス・カーブを採用。オフセットは44mmとオーソドックスな作りとなっており、安定した走りを提供する。ルックスにおいてもフレームの雰囲気を壊さない
■写真下・中:インテグラルヘッドを採用。ただクラシックな雰囲気のバイクではなく、アップデートすべきところにはちゃんと現行の規格を盛り込んでいる。伝統のギヤエムヘッドバッジがまぶしい
■写真下・右:ダウンチューブのBB側にこのバイクのアイデンティティーであるスプライン加工が施されている。ほかにトップチューブの両端、シートチューブのBB側も同様だ
■シートステーは横方向からつぶしが入った形状になっており、リヤエンドに向かってすっと細くなる。トップチューブの少し下に取り付けることで振動吸収性向上を狙っているのだろう
ミヤタ・エレベーションエクストリーム
フレーム価格 26万9000円
カンパニョーロ・スーパーレコード完成車価格 99万円
フレーム:クロモリ
フォーク:クロモリ
コンポーネント:カンパニョーロ・スーパーレコード
ホイール:カンパニョーロ・ハイペロンウルトラツー
タイヤ:ヴィットリア・クロノエヴォCS 700×22C
ハンドルバー:FSA・Kフォースライト ナノK
ステム:FSA・OS99
サドル:セライタリア・SLRモノリンクチームエディション
シートポスト:セライタリア・モノリンクカーボンシートポスト
撮影試乗車実測重量:6.75kg(500サイズ、ペダルなし)
サイズ:46、48、50、52、54、56
CYCLE SPORTS.jp編集長・ナカジのインプレッション
発表された当初から、あのミヤタのスプラインチューブが復活するのか!と注目されていたモデル。乗る機会を得たのはとてもうれしいことだ。
さて、走り出してみよう。まず感じるのは、スタンダードなクロモリフレームの持つしなりとはまた違う走行感。ずっと剛性感にあふれたフレームに仕上がっている。もちろんカーボンバイクで言われているような場ィ高剛性場ィ とは違い、自分のパワーでもしなりを感じながら走ることができる。肉薄のクロモリチューブ独特の張力を持ったフレームである。
6kg台の車重と相まって、上りはもちろん、平地でもペダリングが軽い。また前後のバランスもいい。しっかりと腰の下に重心が来ているのを感じながら走ることができる。この安定感は下りに突入したときに、よりありがたみを感じる。コーナーをクリアする速度が上がり、自分の技術が向上したかのような錯覚を覚える。興味深いのは100万円近い価格の完成車をラインナップしていることだ。フレームのみを購入して、自分の好きなパーツアッセンブルにしたり、パーツを載せ替えたりという買い方もある。だが、エレベーションエクストリームの完成車の魅力は、このフレームの性能を最大限生かすことができるパーツを、元チームミヤタのメカニックが組み付けをしていることだ。究極のクロモリバイクを味わいたい。そんな要望に応えてくれる一台である。
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