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ホイールインプレッション その前に! ホイールインプレの読み解き方
2013.01.18
主観にすぎないインプレッションを、どう活かすか
最新鋭ロードホイール22本を様々な観点から検証したホイール特集では、タイプの異なる3人のライダー(小笠原/写真左、岩佐/写真中央、安井/写真右)によるインプレッションを掲載する。しかし、インプレッションは客観的・絶対的なものではない。体型、好み、使用しているフレームやホイールなどによってコロコロと変わる主観的・相対的なものである。読む側としてはどうとらえ、どう参考にすればいいのか。評者3人へのインタビューを、本誌に先駆けて公開する。
インプレッションの基準ホイールって?
CS:まず、今までみなさんがどんなホイールを使ってきて、インプレッションの基準がどこにあるのかをはっきりさせておきたいと思います。まず安井さん。
安井:所有して長期間使っていたのは、シマノの歴代デュラエースグレード、歴代マヴィック・キシリウム、Rシス。カンパニョーロ・ハイペロン、ユーラスなどですね。今よく使っているのは、カンパ・ボーラ、ニュートロンウルトラ。マヴィック・RシスSLR。フルクラム・レーシングライトXLRあたり。ライトウエイト・スタンダードG3、コリマのMCC、ジップ・404も使ってます。
CS:さすがに多いですね。好みはどんなホイールですか?
安井:サクサク上ってくれるものが好みなんですが、リム重量があってガチガチのホイールよりも、ちょっとしなるホイールが好きなのかな、と。ニュートロンとかボーラとか。でもディープをフロントに付けるのは嫌いです。テクニックと体重の問題なのか、どうしても横風の影響を受けてしまうので。ボーラを持ってるんですが、フロントはほとんど使ってません。
CS:なるほど。小笠原さんは。
小笠原:練習ホイールとしてはマヴィック・アクシウム。これはなるべく重たいものを、という意図によるものです。レースではほぼ同社のコスミックカーボンSLR。
CS:どんなレースでも?
小笠原:ちょっとした上りがあってもこれで走っちゃいますね。僕も安井さんと同じで、外周部がガチッとしすぎたホイールよりも、バネ感があってちょっとたわむものが好みです。リムが硬くてパリッとしたホイールは確かによく進むんだけど、それでレースとかロングライドを走ると、しなりのないフレームと同じで進まなくなることもあります。ウィップがあってそれが上手く加速につながるようなものが好きですね。
CS:スーパーディープは?
小笠原:高速巡航性能が高いのは間違いないので、トライアスロンにはいいですね。でも瞬間的な動きには弱いので、好き嫌いは分かれます。ある程度スピードが出ていないと意味がない。時速35km以上は出ていないと。
CS:なるほど。岩佐さんは。
岩佐:フルクラム・レーシング7やシマノのR500から入って、シマノの7801-C24クリンチャー、7850-C50クリンチャー、7850-C50チューブラーなどを使用し、同ブランド内の進化を味わいました。お店をやるようになって多くのホイールを使ってきたんですが、大切なのは硬さよりもリムの軽さだと。要は反応性。自転車に乗っていて、同じ出力で淡々と走るというシーンはあまりないですよね。だから、出力の上下に軽やかにタイムラグなく反応してくれるものがいい。そこで出会ったのがレイノルズです。リムの硬さも軽さもピカイチで、66とか32などが非常に好きでしたね。そこから空力を求めてジップの303、404、スーパーディープをひと通り使いました。その後、ロープロファイルに戻ってきて、今はハイペロンをずっと使ってます。色々使ってきたうえで、最近では硬すぎないことも大切だと思うようになりました。「硬すぎない程度に硬い」「加減速が得意」「扱いやすい」ことが大事。疲れたときに素直にバイクを動かせるのがハイペロンだったんです。
CS:硬すぎず、リムが遅れて回るような感覚もなく、ちょうどいいところがハイペロンだったと。
岩佐:そうです。長所がズバ抜けているよりも、短所がないホイールが好きですね。
数字での性能評価=インプレッションではない
CS:それぞれに好みのホイールを出していただいたんですが、オガさんと安井さんは、どちらかというと柔らかいホイールが好きだと。
安井:いや、柔らかいのは嫌いです。
小笠原:うん。そうそう。
安井:「柔らかい」と「バネ感がある」とは別ですね。
小笠原:ペダリングのリズムにちょうどよく合うものがあるんです。リズムに合わないと、いくらいいホイールでも気持ちよくない。速いのは分かるんだけど、わざわざ使おうとは思わない。
安井:そのあたりが、今でもボーラとかハイペロンが生き残っている理由なんじゃないでしょうか。設計としてはかなり古い。でもいまだに愛用者が多いですよね。それには、そこらへんの理由があるのかな、と。
CS:なるほど。体重が異なるお二人は同じ嗜好というのも興味深いですね。
安井:嗜好が同じというだけで、必ずしも同じホイールが好きということにはなりませんが。
岩佐:速いけど嫌い、というホイールもありますもんね。
安井:ありますあります。個人の好みもあるし、フレームとの相性も大きい。ホイールを選ぶフレームもあればフレームを選ぶホイールもある。絶対評価はないに等しい。
岩佐:ホイールでいいフレームが台無しになっちゃうこともある。
安井:よーくあります。
CS:じゃあ今回のインプレではフレームも明記したほうがいいですね。
小笠原:もちろん。
安井:そこに、さらに好みと習慣がかぶさってくるので、難しいですよね。
CS:えーと、では、インプレの点数は「好き・嫌い」「気持ちいい・気持ちよくない」という視点に立ったものということでいいですか?
小笠原:いや……点数の評価は、ライダー個人が感じた絶対性能ですね。
安井:そうです。フレームとの相性があったうえでの絶対的な加速力、登坂力。インプレの文章には好みが入ります。
CS:あぁ、そうか。そうですね。数字で性能評価があって、文章には「好き・嫌い」が入ってくるということですね。
岩佐:速いけど使いこなせないホイールは、点数は高くなるけどインプレとしては低い評価になる。お客さんが乗っているフレームを見て、ホイールとの相性をアドバイスすることもあります。それじゃバランスがはちゃめちゃになっちゃうよ、とか。速いパーツを集めたからって速い自転車になるとは限らないですし。
小笠原:そうですね。
CS:今までは、単純にホイールの点数を出して読者の方々に判断してもらっていましたが、「好み」や「相性」という視点はすごく大事かもしれませんね。考えれば考えるほど記事作りが難しくなっていく気もしますが(笑) 。
ぜひここでの話をふまえた上で、本誌のホイールインプレッション記事を読んでみてください!