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英国のウィギンスがマイヨ・ジョーヌをキープ ツール2012 中盤戦ハイライト

ウィギンスがアルプスでマイヨ・ジョーヌを守ったツール・ド・フランス中盤戦。残りはピレネー越えと最終日前日の個人TTを含めた5ステージとなった。マイヨ・ジョーヌは史上初めてドーバー海峡を渡るのか?!
Photo: Graham Watson

念願のマイヨ・ジョーヌを獲得したウィギンス

今年のツール・ド・フランスで総合優勝候補のブラッドリー・ウィギンス(チームスカイ)は、今年最初のカテゴリー1の峠ゴールだった第7ステージで早くも総合首位に立ち、念願だったマイヨ・ジョーヌを獲得した。彼は初日のプロローグで区間優勝したファビアン・カンチェッラーラ(レディオシャック・ニッサン)に、たった7秒差の区間2位になり、相次ぐ落車も免れて序盤戦を終えていた。そして第7ステージでは彼の最強のチームメート、クリストファー・フルーム(チームスカイ)が頭角を表した。5.8kmつづくゴールのラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ峠で、チームスカイはマイケル・ロジャースとリッチー・ポートのオーストラリア勢が終盤までメイン集団を引き、マイヨ・ジョーヌのカンチェッラーラを脱落させた。そして残り2kmで先頭を引き始めたフルームは、フラム・ルージュでアタックしたカデル・エヴァンス(BMCレーシング)をあっさり制圧すると、逆に2秒差を付けてゴールラインに飛び込み、ツールで初めての区間優勝を上げた。 ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ峠のゴールで、エヴァンスと同タイムの区間3位になったウィギンスは、カンチェッラーラに代わって総合首位の座についた。英国出身の選手がツールでマイヨ・ジョーヌを着用したのは、2000年のデービッド・ミラー以来だった。この日、区間優勝したフルームはプロローグを16秒差でスタートしていたが、スランの丘にゴールした第1ステージで1分32秒を失っていた。彼は不運にも終盤にパンクしてしまい、ゴールに向けて速度を上げていた集団に追いつくことができなかったのだ。そのためフルームは第7ステージで区間優勝した後も、首位のウィギンスから1分32秒遅れの総合9位だった。 そして迎えた第9ステージの個人タイムトライアルでは、まさかの展開が待ち受けていた。タイムトライアルが得意なエヴァンスが、序盤から失速して1分43秒遅れの区間6位でゴール。10秒遅れで追っていたウィギンスを逆転するどころか、逆に1分53秒差をつけられてしまった。それとは対照的にウィギンスは、得意の個人タイムトライアルで区間優勝し、ツールで初の区間優勝を上げた。そしてフルームはこのステージで35秒遅れの区間2位になり、総合3位へと浮上。27歳のフルームは、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝したフアンホセ・コボと死闘を演じ、総合2位になったクライマーだが、タイムトライアルでのスキルも示すステージになった。 盤石かと思われたウィギンスの総合優勝に疑問符が付いたのは、アルプス山岳区間2日目の第11ステージだった。終盤のラ・トゥスイール峠で、マイヨ・ジョーヌのグループから総合優勝候補の1人であるイタリアのビンチェンツォ・ニーバリ(リクィガス・キャノンデール)がアタックし、前にいたグループに合流してウィギンスに数10秒差を付けた。しかしすぐにフルームがウィギンスをニーバリのグループまで運び、事なきを得たかに見えた。その次の瞬間、先頭を引き始めたフルームの加速について行けず、マイヨ・ジョーヌは後方でちぎれてしまったのだ。チームスカイはすぐさま無線で指示を出し、フルームは減速した。この攻防のなか、ウィギンスの最大のライバルになるはずたったエヴァンスは早々に脱落し、総合で3分19秒遅れとなり、表彰台から転落してしまった。 これでウィギンスの総合優勝は濃厚になったはずだったが、ラ・トゥスイール峠での一件で、フルームがウィギンスを出しぬいて総合優勝を狙っているのではないかという憶測が飛びかうようになったのだ。彼はウィギンスから2分5秒遅れではあるが、総合2位に浮上していた。しかしフルームは主催紙レキップのインタビューで「ボクは自分がこのツールで勝てる力があると知っているが、チームスカイではそれはない。ボクたちはウィギンスを中心にして戦略を定めている。そしてみんながそれを順守するんだ」と、反逆を否定している。今年のツールは観客からの妨害行為があったり、チームスカイで働くオーストラリア勢に対してエヴァンスを応援するオーストラリアのファンがブーイングを送ったりと、英国人のウィギンスのリードを快く思わない空気が流れている。ピレネーではそれを払拭するような、真のチャンピオンらしい闘いを期待したい。

ツール・ド・フランス2012 第15ステージまでの総合成績

1 ブラッドリー・ウィギンス(チームスカイ/英国)68時間33分21秒 2 クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)+2分05秒 3 ビンチェンツォ・ニーバリ(リクィガス・キャノンデール/イタリア)+2分23秒 4 カデル・エヴァンス(BMCレーシング/オーストラリア)+3分19 5 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+4分48秒 6 アイマル・スベルディア(レディオシャック・ニッサン/スペイン)+6分15秒 7 ティージェイ・バンガルデレン(BMCレーシング/米国)+6分57秒 8 ヤネシュ・ブライコビッチ(アスタナ/スロベニア)+7分30秒 9 ピエール・ロラン(ヨーロッパカー/フランス)+8分31秒 10 ティボー・ピノ(FDJ・ビッグマット/フランス)+8分51秒 ■マイヨ・ジョーヌ:ブラッドリー・ウィギンス(チームスカイ/英国) ■マイヨ・ベール:ピーテル・サガン(リクィガス・キャノンデール/スロバキア) ■マイヨ・アポワ:フレドリク・ケシャコフ(アスタナ/スウェーデン) ■マイヨ・ブラン:ティージェイ・バンガルデレン(BMCレーシング/米国) ■チーム成績:レディオシャック・ニッサン(ルクセンブルク)

ツール・ド・フランス2012公式プログラム、発売中

世界13カ国で翻訳出版されている「ツール・ド・フランス公式プログラム」の日本語版は、フランスのパリにあるツール・ド・フランスの主催者ASOの許諾、協力のもとにチクリッシモが特別編集。各チーム、選手、全ステージの詳細データ満載で「ツールのすべて」を知ることができる、日本で唯一の公認のガイドブックだ。 ツールを5回制したフランスのスーパースター、ベルナール・イノーによる、出場22チームの辛口戦力分析や、コース設定責任者ジャンフランソワ・ペシューによるプロローグ+20ステージのステージ解説など公式プログラムならではの内容に加え、日本語版独自の記事もフィーチャー。付録は2012ツールの全ルートが掲載されたフランス全土マップの大判ポスター! 体 裁:A4ワイド判(225×297mm)、オールカラー196ページ 発売日:2012年6月20日(水) 定 価:付録とも1575円(税込み) 全国書店、amazon、J SPORTS onlineshopなどで好評発売中!

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