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カンチェッラーラの理想を具現化したTREK DOMANE
2012.05.15
カンチェッラーラの理想を具現化した トレック・ドマーネ
トレックは昨シーズンからチームレオパード(今年はレイディオシャックと合併)をサポートし、A・シュレクとともに10回目のツール・デ・フランス制覇を目指している。同時にこの契約でツール・ド・フランドルとパリ~ルーベという、北のクラシックと呼ばれる世界一過酷なワンデイレースの制覇も照準とした。なぜならそれは、この2つのレースを一昨年に制したもう1人のエース、ファビアン・カンチェッラーラを擁するからだ。
パヴェが次々に現われ、選手とバイクを容赦なく痛めつける北のクラシックには、グランツールと違った性格のバイクが求められる。万能な走行性能で知られるマドンは、パーツの仕様を一部変えればこのレースに対応できるが、トレックではカンチェッラーラの能力を余すことなく引き出すため、ともに一からこのレースを制するためのバイクを開発することに。
そして3年近い開発を経て、今年のフランドルで発表されたのがこの「ドマーネ」だ。車名はラテン語で「王冠」を意味し、“クラシックの王”であるカンチェラーラにちなんで名づけられている。
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3月3日にイタリアで開催されたストラーダ・ビアンキにはコースにダートルートが設定される。
この悪路のレースでカンチェッラーラはドマーネを駆り優勝。その性能の高さを証明してみせた。
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トレック・ドマーネ
●フレーム/600シリーズOCLVカーボン(E2、BB90、パフォーマンスケーブルルーティング、デュオトラップコンパチブル、ライドチューンドシートマスト、アイソスピード)
●フォーク/トレック・アイソスピードフルカーボンE2
●コンポーネント/シマノ・デュラエース
●ホイール/ボントレガー・アイオロス5 D3カーボン
●タイヤ/ボントレガー・R3 700×25C
●サドル/ボントレガー・インフォームアフィニティRXLチタン
●ハンドルバー/ボントレガー・レースXライト アイソゾーン OCLVカーボン
●ステム/ボントレガー・レースXライト
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独創的なアプローチで優れた快適性と 高い動力性能を実現
Domane’s Key tchnology 5
OCLV Carbon
ドマーネの性能を支える高いカーボン技術
カーボン素材はマドン6シリーズと同様の「OCLVカーボン600」というグレード。ボイド(空隙)を最小限に抑えて軽さと剛性、そして強度を高次元で維持できる「OCLV」、さらには金型成型後の2次加工を必要とせず、そのままフレーム体を構成できる高精度のカーボン成型技術の「Netモールディング」という独自技術に支えられ、ドマーネの独創的な構造は実現している。
Domane’s Key tchnology 6
Power Transfer Construction
動力性能を高める強固なパワーライン
マドンと同様にロワーベアリングに1.5インチ径を採用した上下異径のE2ヘッドチューブ、業界最高幅の90mmに設計されたBB90という、マドンに採用される技術をドマーネは踏襲。この構造を基にカーボンレイアップを見直し、さらにダウンチューブとチェーンステーの外径アップと形状変更により、ヘッドチューブからリヤエンドにかけてのパワーラインにマドン以上の剛性を与えた「パワー・トランスファー・コンストラクション」設計を採用。数字的にはヘッド部が9%、フレーム全体で6%、フォークは30%マドンに比べて剛性が向上している。エンデュランスロードといえば快適性を高めるためにフレーム全体の剛性を落とす傾向が強いが、ドマーネはアイソスピードによりフレームアッパー部とフォーク部に高い快適性を備えるため、パワーラインをより高剛性にすることでレースパフォーマンスをいっさい犠牲にしないきわめて高い動力性能の追求が可能になった。
【吉本 司のインプレッション】
今回の試乗はフランドルのコースで行なわれ、その名所とされるコッペンベルフやオーデクワルモントといったパヴェの急勾配が含まれた。ドマーネの性能を知るには、これ以上ないシチュエーションだ。ベルギーの路面は日本のそれと違って舗装が粗く、亀裂や段差も多く状況は悪い。パヴェを走らずとも、ドマーネの乗り心地の良さは容易に体感できる。まるでタイヤの空気圧を0.2~0.5BAR落としたようなすばらしいフラットライドの感覚がある。
サドルに腰を下ろしてペダリングをすると、路面からの入力の大きさによってはシート部がわずかに動くのがわかる。とはいえ、コッペンベルフのような急勾配で腰を引いた後ろ荷重の状態で低い回転のトルクをかけても、下りで高回転となってもシート部には違和感はなく腰まわりは安定する。試乗前に危惧したペダリングを妨げるネガティブなしなりを感じることはなく、フォームは安定し駆動のロスはない。
フロント側のアイソスピードがまた秀逸だ。ベンドしたブレードが大きな衝撃を全体で吸収し、小さな路面の凹凸は先端が従順に動いて振動を和らげる。前後の優れた振動吸収性によって、普段なら軽く抜重して気を遣うような小さな段差でも、サドルに座って越えてもいいとさえ思わせる。ラフな扱いでもバイクの挙動は乱れにくい。加えて長いホイールベースと低いハンガー下がりによって得られる低重心設計、十分な直進安定性を持つハンドリングの効果によって抜群の安定感を発揮する。パヴェの経験が少ないテスターでも、バイク任せで走っていけるほどの安心感が得られる。
これだけ特徴的なジオメトリーだと、ハンドリングのくせや踏み出しに重さが出そうだが、それは感じない。ハンドリングは直進性が高いものの、軽さも演出されている。試乗を終えるまで詳細なジオメトリーは不明だったが、後に80mmのハンガー下がりと聞いて驚いた。通常これほどの値だと安定感は高まるが、踏み出しはかなり重くなる。しかしそのデメリットはまったく見られず、見事に全体をバランスしている。
そしてフレーム剛性はトレックのデータのとおり、ドマーネのほうがマドンよりも高い印象だ。パワーラインはしっかりとした剛性があるので、ペダリングをしっかり受け止めて推進力に変える。でも不快な硬さがないのはマドンに共通する感覚だ。したがって低速から高速まで、上りから平坦路まで、不満のない加速性能が楽しめる。巡航性能も高い。厳密に言えばマドンのほうが車重は軽く、ジオメトリーも違うので俊敏性は上だ。しかしドマーネとの差はきわめて小さく、その動的性能は一線級のレースバイクにまったく引けをとらない。
エンデュランスロードといえば加速よりも巡航性能の楽しさで勝負するモデルが多いが、ドマーネはそれらと一線を画す。加速がじつに楽しく、恐ろしく攻撃的な走りができる。おそらくホビーレベルの脚力なら、多くの場面でドマーネの性能で事足りるし、長距離ライドや厳しい路面状況であればドマーネのほうがより楽に、速く、楽しく走れるだろう。これほどドマーネが高性能だと、今後マドンのユーザーをかなり奪う可能性もありそうだ。したがってマドンが次にどう進化をするのかも見物である。
プロジェクトワンと 限定車の6.2が販売される
ドマーネ6シリーズはカラーやパーツを選べるトレック独自のオーダーシステム、プロジェクトワンで注文が可能。最も手ごろな完成車は46万7000円から。現時点でフレームセットの販売はないが、今後は予定している。そして限定販売されるのが、シマノ・アルテグラのコンポとボントレガー・レースXライトのホイールを装備した「6.2」だ。カラー(シートマスト部分はホワイトカラーになります)は写真のホワイト×ブラック。価格は49万9000円。サイズは52と54のみ。すでにプロジェクトワン、6.2ともに発売が開始されている。
プロジェクトワンウェブサイト
*惜しくも完走ならず……カンチェッラーラのドマーネ詳細はサイクルスポーツ5&6月合併号で!
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