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ミラノの個人TTで劇的なフィナーレ ジロ2012終盤戦ハイライト

第95回ジロ・デ・イタリアは、最終日の個人TTまで勝者の決まらないスリリングな展開となった。そしてマリア・ローザはカナダのヘシェダールの手中に収まった

明暗を分けたミラノの個人タイムトライアル

5月5日にデンマークのヘアニンで開幕したジロ・デ・イタリアは、3週間の日程を終えてミラノに到着したが、終盤戦につづいた過酷な山岳ステージでも、マリア・ローザ争いは決着しなかった。しかもミラノで優勝争いに残っていたのは、地元イタリアのイバン・バッソ(リクィガス・キャノンデール)やミケーレ・スカルポーニ(ランプレ・ISD)ではなく、チェコのロマン・クロイツィーゲル(アスタナ)でもなかった。終盤にマリア・ローザを守り切ったのはスペインのホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)で、カナダのライダー・ヘシェダール(ガーミン・バラクーダ)が、たった31秒差で得意な個人TTを迎えていた。スフォルツェスコ城前のスタートランプに上がる前からドラマの結末は明白だったが、それでもマリア・ローザの魔法を信じてロドリゲスは最後の試練に飛び出した。しかし最初の中間計測ポイントで、奇跡は起らないことがすぐ明らかになった。そして、2つ目の中間計測ポイントでは、ロドリゲスの手中からマリア・ローザはすべり落ちていた。
ドゥオーモ広場の表彰台でマリア・ローザを着て、ネバーエンディグと名付けられた螺旋のトロフィーを高く掲げた31歳のヘシェダールは、今年のジロの開幕前には優勝候補の1人とは考えられていない選手だった。「ボクは今年、ジロで100%集中できるチャンスを得た。チームはボクをエースに指名してくれた。選手としてのキャリアで、こんなプレステージの高いイベントでエースになれることは滅多にない。だからボクは好調な脚でやって来て、ベストを尽くしたいと思った。チームは素晴らしく、すべてを捧げてくれた。ベストを尽くすことで、ボクはこのレースを来る日も来る日も勝ち取ったんだ」優勝後にそう語ったヘシェダールは、終盤戦の過酷な山岳ステージで最強だった。最終日前日のステルビオ峠区間では、トーマス・ドヘント(バカンソレイユ・DCM)の驚異的な走りから総合2位の座を死守するために、みずからマリア・ローザ・グループを牽引して危機を脱した。その苦しい表情は、彼が今年のジロで初めて見せたものだったが、故郷カナダに初めてグランツールの栄冠を持ち帰る翌日の走りには、何の影響も出なかった。 16秒という僅差のマリア・ローザは、史上4番目の記録だった。もっとも少ないのは1948年に総合優勝したフィオレンゾ・マーニで、2位のエツィオ・チェッキに対して11秒差だった。新ディレクターのミケーレ・アクアローネが望んだ通り、今年のジロは国際色豊かな勝者が大勢誕生したが、地元イタリア勢はミラノの表彰台に誰も上がれない最悪の結末になってしまった。それは1995年以来の出来事だった。

チマ・コッピのステルビオ峠を制したベルギーのドヘント

終盤戦のサプライズは、今年最難関と言われていた伝説のステルビオ峠にゴールする第20ステージで、ベルギーのトーマス・ドヘント(バカンソレイユ・DCM)が後続に大差を付けて区間優勝したことだった。この日、マリア・ローザのホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)に5分40秒差の総合8位でスタートしてたドヘントは、モルティローロ峠で集団からアタック。トレーニングで何10回も上って熟知していたステルビオ峠を半分以上単独で上り切り、グラン・ツールでの区間初優勝を果たしただけでなく、2分18秒差で総合4位にまで浮上したのだ。そして個人TTは彼の得意分野だった。ドヘントはミラノで区間優勝したマルコ・ピノッティ(BMCレーシング)に1分1秒差の区間5位で今年のジロを終え、ミケーレ・スカルポーニ(ランプレ・ISD)を蹴落として総合3位になった。ベルギー人が3大ツアーの表彰台にあがったのは、実に17年ぶりのことだった。2度目のグランツールでトップステージレーサーの仲間入りを果たしたドヘントだが、今年のツール・ド・フランスは大会期間中に結婚式を上げる予定を優先し、欠場することがすでに決まっている。

イタリアのニューヒーローが世界チャンピオンを下す!

カナダ生まれの新チャンピオンが誕生した今年のジロは、終盤戦も初区間優勝ラッシュが続いた。唯一あった平坦ステージでは、世界チャンピオンのマーク・カベンディッシュ(スカイ)を集団ゴールスプリントで破ってイタリアのアンドレア・グァルディーニ(ファルネーゼビーニ)が、ジロ区間初優勝を果たした。昨年プロデビューしてすぐにツアー・オブ・ランカウイで5勝を上げ、トップスプリンターとしての道を歩み始めた22歳のグァルディーニは、ポスト・チポリーニとして大いに期待されている。今年は序盤戦の落車に巻き込まれてチャンスをいくつも失ってしまったが、来年は平地で大暴れするにちがいない。一方、このステージで勝てなかったカベンディッシュは、過酷な山岳ステージを制限時間内で走り切ってミラノにはたどり着いたが、ポイント賞のマリア・ロッサはたった1ポイント差で失ってしまっている。

ジロ・デ・イタリア2012 個人総合最終成績

1 ライダー・ヘシェダール(ガーミン・バラクーダ/カナダ)91時間39分02秒 2 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+16秒 3 トーマス・ドヘント(バカンソレイユ・DCM/ベルギー)+1分39秒 4 ミケーレ・スカルポーニ(ランプレ・ISD/イタリア)+2分05秒 5 イバン・バッソ(リクィガス・キャノンデール/イタリア)+3分44秒 6 ダミアーノ・クネゴ(ランプレ・ISD/イタリア)+4分40秒 7 リゴベルト・ウラン(スカイ/コロンビア)+5分57秒 8 ドメニコ・ポッゾビーボ(コルナゴ・CSF/イタリア)+6分28秒 9 セルジョルイス・エナオ(スカイ/コロンビア)+7分50秒 10 ミケル・ニエベ(エウスカルテル・エウスカディ/スペイン)+8分08秒 ■ポイント賞(マリア・ロッサ):ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン) ■山岳賞(マリア・アッズーラ):マッテーオ・ラボッティーニ(ファルネーゼビーニ/イタリア) ■新人賞(マリア・ビアンカ):リゴベルト・ウラン(スカイ/コロンビア) ■ファスト・チーム賞(時間):ランプレ・ISD(イタリア) ■スーパー・チーム賞(ポイント):ガーミン・バラクーダ(米国)