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レーシング性能+快適性 KUOTA K-UNO
2012.03.09
レーシング性能のうえに成り立った快適性を追求
快適性を前面に押し出すモデルといえば、アップライトな乗車姿勢をはじめ乗りやすさを重視したジオメトリーを採用することも多いが、クノはそうしたモデルとは一線を画すコンセプトで作られる。ジオメトリーはKOMとほぼ同じ。そこからも設計の基本がレーシングとなっていることが想像できる。クノが目指す快適性は、あくまでKOMに対して優れるというレベルであり、反応性をはじめとする動力性能はきわめてレーシーな味付けがなされている。
こうしたコンセプトを実現するため、クノはフレームの上下でメリハリの効いたデザインがされる。ロワー部分は大径のチューブで構成されヘッドからBB、リヤエンドの高いねじれ剛性を追求する。対するアッパー部は横扁平の強いトップチューブをはじめ、衝撃を柔軟に吸収して横剛性を抑えて、扱いやすさを演出している。また、シートまわりの設計はオーソドックスなセパレートタイプとして、さらに細身の27.2mmのシートポストをセットしているのも乗り心地を高めるうえで大きなポイントになっている。
2012年モデルにおける内蔵式ワイヤは、電動と機械式の双方に対応できることが欠かせない要素だが、その流行にも対応するなど細部の作りもぬかりはない。レーシーな走りと快適性の両立を目指したクノは、レースを神髄とするイタリアンブランドだからこそ生まれたモデルといえる。その試みは興味深く、ホビーでロードレースを楽しむライダーには見逃せない存在になりそうだ。
■写真下・左:底辺を幅広く設計することでねじれ剛性を高めたダウンチューブ。高い加速性能に貢献する。シフトワイヤの挿入口にはアルミ製のカバーが装備され、ダウンチューブから内蔵される。
■写真下・中:細身のシートポストをセットすることでシートまわりにしなりを与え、乗り心地を高める演出がされる。オリジナルのシートポストは、側方から1本ボルトで固定する方式で調整もしやすい。
■写真下・右:トップチューブの形状をそのまま受け継ぐようにデザインされるモノタイプのシートステー上部。幅広ながら薄型に成型することで横剛性を確保しつつ高い乗り心地を追求している。
【吉本 司のインプレッション】
KOMといえば、肉薄大径チュービングによるパリッとした軽さ際立つ加速が魅力的。対するクノはそこまでの軽快さはないものの、大径チューブを使ったことによる剛性感は十二分に確保されている。大きなトルクをかけて加速を試みても、ヘッド~BB~リヤエンドまではムダなねじれを出さない。加速性能はレーシングモデルの延長線上にあることを体感できる。
横剛性を抑制するフレームアッパー部との相性もいいので、ハンガー部をはじめ全体的な剛性感は高すぎず、脚へのストレスも少ない。そのため、加速を持続でき、走りやすさが際立っている。加速側の性能は実業団クラスのレースに参加しているライダーでも不満を覚えることはあまりないだろう。そして振動吸収性は、一般的なコンフォートモデルのような安楽なレベルではないが、その高い動的性能からすると高次元にある。大きなギャップに突っ込んだ際の挙動の安定感、腰まわりへの突き上げ感の少なさは、レースで十分なアドバンテージがある。
KOMは軽さの際立つ軽いハンドリングだが、それとジオメトリーをほぼ共通とするクノのほうが安定感が高く、ホイールベースが長くなった感覚さえある。これはおそらくクノの路面追従性の高さゆえだろう。上りのレースで必要とされる重量比剛性、加速のキレで勝負するならKOMだ。しかし、とくにホビーレーサーの場合、公道での長距離レースや下りを苦手とするならクノを選んだほうが肉体的、精神的な余裕が生まれ、走りのクオリティが上がるだろう。
クォータ・クノ
フレームセット価格 37万5000円
フレーム●ユニディレクショナル ハイモジュラスカーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・デュラエース
ホイール●ライトウェイト・スタンダードG3
タイヤ●ヴィットリア・コルサ エヴォ CX2 28''×21
サドル●プロロゴ・ナゴ EVO TS
ハンドルバー●デダ・ゼロ100-31コンパクトハンドル
ステム●デダ・ゼロ100セルヴィッツィオコルセ31ステム
シートポスト●専用品
サイズ●XXS、XS、S、M、L
試乗車実測重量●6.16kg(サイズ:S、ペダルなし)
カラー●マットブラック
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