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絶品のペダリングフィール BMC IMPEC
2012.01.06
巨大な機械が技術的ハイライト
新工場に鎮座する「スターゲイト」は、3mほどある機械外周を128本のボビンが複雑に回転しながらカーボン繊維を筒状に編み込んでいく(この工法は、LSW=ロード・スペシフィック・ウィーブと呼ばれる)。その後、RTM工法によって樹脂を浸透させ硬化させたチューブを使用する。これはタイムなどごく一部のメーカーが行なってきた特殊な工法で、一本のチューブ内で繊維の角度や密度を変えることができるため、チューブに意図的に特性を持たせることが可能になる。各チューブの接合は特殊なシェルで左右からはさみ込むことで行なわれる。
惜しむらくは小さいサイズが用意されないこと(最小サイズがトップ長530mm)。シェル形状の関係でスモールサイズの製造が不可能なのかもしれないが、これでは乗りたくても乗れない日本人は多いはずだ。それにシート角(74度)とヘッド角(72.5度)が全サイズで統一されているため、大きいサイズになるほどトップチューブ長でサイズを決めると最適サイズにならない可能性が大きい。オーダー前にはジオメトリ表とじっくり向き合うことが必要になる。
■写真下(左):ヘッドは下側ベアリング1-1/4インチのテーパードタイプ。フォークは太い根元から一気に細くなるストレート。フォークにもLSWとSNCテクノロジーが使われている。
■写真下(中):ヘッドチューブが短い「レースフィット」と、長く設定された「パフォーマンスフィット」の二種類のジオメトリが用意され、自分のフォームに合わせて選択することができる。
■写真下(右):トップチューブを後端より低い位置にシートステーを接合するiSC(インテグレーテッドスケルトンコンセプト)はBMCのアイコン。シート部を意図的にしならせる設計。
【安井行生のインプレッション】
やっと乗ることができたインペックだが、わかりやすいインプレは書けそうにない。劇的な硬さも圧倒的な軽さもないため評者を冗舌にするタイプではないが、走らせると「いいバイクだ・・・」としみじみ感動させられるのだ。ジオメトリには不満アリだが、走りはそれを吹き飛ばすほどすばらしい。しかし「その理由を端的に説明せよ」と言われても、「剛性バランスとペダリングフィールが最高だから」という曖昧な答えしか出てこない。
常にしっとりとした感触を伴ったまま、なぜか全速度域で軽快感がある。高速域でドカンと爆発するピナレロやコルナゴなどとはかなり異なる味付け。ペダルが前方に吸い込まれていくような並外れて滑らかなペダリングフィールは理解の範ちゅうを越えるほど。ハンドリングはオーバー志向で繊細だが(最小サイズにしてヘッド72.5度だと無理もないが)、危なっかしさはない。快適性も本当にすばらしい。路面の凹凸をハンドルにコクコクと逐一伝えつつ魔法のような収束性で振動を一瞬にして黙らせるという、理想的な振動吸収特性を持っている。フレームの振る舞いは似た製法を採るタイム・VXRSに近いだろうか(瞬間的な反応性と快適性はインペックのほうが優れており、登板や高速域でのバネ感はVXRSのほうが強い)。ロードバイクの新しい世界が開けるかもしれない、そんな幻想を抱かせるほど走りに深みがあり、既存の評価基準では測りきれない。くれぐれもサイズ選びは慎重に。
※写真のホイールに加え、ライターの私物ホイールでもインプレを行なった。
BMC IMPEC
価格
115万5000円(シマノ・デュラエースDi 2仕様)
105万円(カンパニョーロ・スーパーレコード仕様)
57万7500円(フレームセット、Di 2)
55万6500円(フレームセット、メカニカル)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・デュラエース
ホイール●イーストン・EC90SL
タイヤ●コンチネンタル・GPアタック&フォース 700×22C&24C
サドル●フィジーク・アリオネCX
ハンドルバー●イーストンEC90 SLX3
ステム●イーストンEA90
シートポスト●インペック オリジナルカーボンシートポスト
サイズ●50、53、55、57、60
試乗車実測重量●7kg(サイズ:50)
カラー●チームレッド、ノーブル、ホワイト
※写真は実際の市販モデルと仕様が異なる場合があります。
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