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セルフマッサージの基本テクニックを学ぼう!

自分の体を酷使するロングライド。そんなロングライドで受けるダメージをセルフケアしたい。世界のプロツアーチームでも活躍しているマッサージの第一人者・中野喜文氏に、誰にでもできて効果のあるセルフマッサージの方法を聞く!
text●佐藤友美 photo●山手良樹/澤田和久 イラスト:村上智行

セルフマッサージの必要性

ツール・ド・フランスなどの過酷なステージレースを走り抜くプロサイクリストたちにとって、マッサージはなくてはならないもの。レース中は最低でも毎日1時間、プロマッサージャーの施術を受けさせるチームもあるという。 一方で、ホビーサイクリストたちは自分の体をどのように管理しているのだろう。走ることに気を取られるあまり、体のケアは放っておきっぱなしという人も案外多いのではないだろうか。 「ホビーサイクリストは、普段は仕事をしながら休日にトレーニングを積んでいるわけですよね。いわば疲労のダブルパンチです。せっかくのトレーニングを有効なものにするためにも、そして体を作る前段階でコンディションを整えるという意味でも、マッサージで筋肉疲労を取ることはとても大切です」と教えてくれたのは、いくつもの海外プロチームで日本人プロマッサージャーとして活躍してきた中野喜文さんだ。 「リラクゼーション、つまり筋肉から疲労物質である乳酸を除去するという意味において、セルフマッサージは有効です。ただし、体のどこかに違和感を覚えた場合はすみやかに専門家に見せること。プロのマッサージとセルフマッサージはまったく別物なのです」

ロングライドではどこに疲労や痛みが起きやすい?

障害が起こりにくいという意味で、中野氏は頸椎から腰椎までのS字カーブが自然な形で湾曲し、どこにもムリな力がかかっていない状態でライディングすることが重要だと指摘する。それでも長時間乗っていると体の各部位に痛みが起こる。 首:前傾姿勢のまま前方を見すえる必要があるので、首は最も負担がかかる部位のひとつ。ただ乗っているだけでも疲労がたまりやすい箇所だ。また、後方確認の際、首と連動して僧帽筋、つまり肩も痛めるケースがある。 腕:ダンシングやシフトチェンジなどで強い疲労が残る。また、自転車は基本的に前傾姿勢を取り、脇を締めて乗るので、上腕二頭筋や三頭筋にも疲労がたまる。 腰:とくに平坦路の強度の高い走行後には、腰にも負担が。ただし、腰はマッサージが非常に難しい部位。セルフではなくプロに任せよう。 太腿:両脚の表(大腿四頭筋)と裏(ハムストリングス)を均等に使えていれば、どちらかに強い痛みを感じることはあまりないが、サイクリングでいちばん使うのが、この太腿だ。 ふくらはぎ:かかとが落ちるアンクリングというペダリングをするサイクリストに多い、ふくらはぎの障害。ここを傷めると、アキレス腱に影響が出ることも。ヒルクライムでは注意が必要。 足:特殊で硬い素材のビンディングシューズを長時間履くことによる疲れが原因。足の裏は体の各部位につながる末梢神経が集中する反射区であり、健康のバロメーター。適切なケアは障害の除去にもつながる。 筋肉が十分に温まらないうちにハードな乗り方をすると、どうなるのだろう? 中野さんは「アキレス腱やヒザなど、自転車選手特有の障害が出ることが多いですね」と話す。 外気温が10度以下、あるいは雨が降っていたら走行前マッサージで筋温を上げてから走り始めよう。

セルフマッサージの基本テクニック

ひと口にマッサージといってもいろいろな種類があるが、中野さんが教えてくれたのはオイルマッサージ。「オイルを使うことで、手技を簡略化できます。体への負担が少ないうえ、技術的にもそう難しくありません」 プロも以下の2つの動作を応用したり組み合わせたりしながら施術を行なっているのだという。できるだけ楽な姿勢で、筋肉をリラックスさせて行なおう。 ストローキング(さする):まずはオイルを手のひらに伸ばし、人肌に温める。温めたい筋肉を手のひら全体で包み込むようにして、適当な圧力を加えながら軽くなであげる。四指で裏側を包み込む手法と、親指のみに力を入れる手法がある。 ニーディング(もむ、こねる):次に手のひら全体で筋肉をつかむようにして「こねる」動作を。雑巾を絞るように手を互い違いにしてギュッとひねりを加える。少しずつ場所を移動させながら、温めたい筋肉全体に均一に力が加わるよう心がけて。

マッサージオイルの効果的な使い方

なぜ中野さんはオイルマッサージを推奨するのだろうか。「素手で行なう場合、まずは軽くなでることで筋肉に挨拶をし、圧を加えることで筋肉が刺激に慣れてから、もむという段階に進みます。それがオイルマッサージであれば、連続して1度に行なうことができる。短時間で効果的な施術も可能になります」 指圧などの場合、1ヶ所を押したら指を離し、次の箇所を押す。気がついたら、違う筋肉を押していた、という場合も少なくない。「その点、オイルマッサージなら、起始をきちんと決めるだけで停止まで手を離す必要がありませんから、筋肉の走行を正確にとらえることができます。皆さんでも比較的簡単にマスターできますよ」 セルフマッサージを行なう際に大切なポイント。「セルフマッサージで陥りがちなのは、痛い箇所だけ集中的にグリグリと押してしまうこと。気持ちはいいかもしれませんが、何の解決にもなりません。マッサージをするときに大切なのは、どの筋肉に対してアプローチしているのかを自分のなかで明確にしながら、起始と停止を押さえること。たとえば大腿四頭筋だったら、ヒザの上部から脚のつけ根までを、まずはストローキングでほぐします」 1. 体液の流れをよくするのが目的なので、体の末端から心臓に向けて行なうのが基本。老廃物や疲労物質が排出されやすくなる。 2. 骨や腱は、マッサージをしてもほとんど意味はない。それどころか付着している筋肉や皮膚など、ほかの体組織を傷つける原因にもなる。 ★ロングライドを走るための実践マッサージは、サイクルスポーツ2月号に掲載しています。

プロのマッサージとセルフマッサージでは、何が違うのだろう?

「ひと言で言うと、プロの施術は手技療法を用いた治療ですが、セルフマッサージは治療ではありません。つまり、セルフでは障害の除去は不可能。あくまでリラクセーション行為なのです。テカール・ジャパンでは、イタリアで普及している物理療法で、テカールという高周波機器を用い、テカールセラピーを行なっています。これは手技と組み合わせて初めて、飛躍的な効果が可能となる、非常に特別なものです」と中野さん。こうした特殊なセラピーは医療行為である特権のひとつだ。

問い合わせ先

ヒューマンテカール
080-2098-4602(完全予約制)
http://nakanoyoshifumi.com/massage/guide.html