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クラシックレース前半戦ハイライト

カンチェッラーラ、ボーネン、ジルベールといった優勝候補たちがしのぎを削るだろうと予想されていた2011年のクラシックレース前半戦。フタを開けてみれば、優勝したのは驚くべきニューカマーばかりだった
Photo: RCS Sport / Slipstream Sports

オーストラリアのゴスがスプリントで優勝@サンレモ

春のクラシックレースの初戦を飾るミラノ~サンレモ(3月19日/イタリア)は、ゴールまで残り90km地点のレ・マニエ峠で起こった落車が優勝候補たちの明暗を分けた。この落車でメイン集団は2つに分裂。落車に巻き込まれた世界チャンピオンのトール・フースホフト(チームガーミン・サーベロ)、チームメートのタイラー・ファラー、マーク・カベンディッシュ(HTC・ハイロード)、セバスティアン・ラングフェルド(ラボバンク)といった有力選手たちが後方集団に取り残されてしまった。さらにレ・マニエ峠の下りで、ディフェンディングチャンピオンのオスカル・フレイレ(ラボバンク)が落車。彼もフースホフトの集団でメイン集団を追走することになり、結局彼らは最後まで前に追いつけなかった。 メイン集団では、ゴールまで残り12kmのポッジオの丘でアタックしたグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング)が残り2kmまで逃げ続けたが、ビンチェンツォ・ニーバリ(リクィガス・キャノンデール)、フィリップ・ジルベール(オメガファルマ・ロット)、マシュー・ゴス(HTC・ハイロード)、ファビアン・カンチェッラーラ(レオパード・トレック)、フィリッポ・ポッツァート(カチューシャチーム)、アレッサンドロ・バッラン(BMCレーシングチーム)らに捕まってしまった。ジルベールはロングスパートを狙ってアタックしたが失敗。最後は小集団でのゴールスプリントになり、24歳のゴスが難なく制して母国オーストラリアに初優勝をもたらした。

ヌイエンスがついにビッグタイトル獲得@ロンド

サンレモの翌週からクラシックレースの舞台は北部ベルギーへ移動。E3プレイスはカンチェッラーラが得意の独走で制し、ゲント~ベベルゲムではトム・ボーネン(クイックステップ)が集団ゴールスプリントを制して復活優勝した。最有力候補が1勝ずつ上げて迎えたロンド・バン・ブラーンデレン(4月3日/ベルギー)は、『カンチェッラーラ対ベルギー勢』になるだろうと予想されていたが、ベルギー勢のなかでもまさかニック・ヌイエンス(サクソバンク・サンガード)が優勝するとは誰も思わなかっただろう。 ゴールまで残り41kmのリーベルフの坂でカンチェッラーラが発進したとき、誰もが昨年と同じシナリオを思い描いたにちがいない。彼は先行していたシルヴァン・シャヴァネル(クイックステップ)に合流し、2人でゴールを目指したが、残り16kmのミュールのふもとで追走集団に捕まってしまった。ミュールの頂上で先頭はジルベール、バッラン、ビヨルン・ルークマンス(バカンソレイユ・DCM)、カンチェッラーラ、シャヴァネル、ヌイエンスに絞り込まれた。このグループから残り4kmでカンチェッラーラが再度アタック。シャヴァネルとヌイエンスが追走し、最後はこの3人でゴールスプリントを競い、地元ベルギーのヌイエンスに軍配が上がった。今年30歳のヌイエンスにとって、これが初のビッグタイトル獲得だった。

伏兵ヴァンスーメレンがビッグタイトル獲得@ルーベ

昨年春のクラシックを圧倒的な強さで支配したカンチェッラーラが、ビッグレースで1勝もできないというまさかの展開で迎えた前半戦最後のパリ~ルーベ(4月10日/フランス)でも、波乱に満ちたドラマが待っていた。4度目の優勝を狙っていたボーネンは、アランベールの長い石畳の道の途中で自転車が壊れ、代車が到着するのを1分以上待たなければならなかった。不運はさらにつづき、残り70km地点では落車に巻き込まれ、ボーネンの春クラシックはあっけなく終わってしまった。 残り65km、ルーベで1997年に優勝した経験がある大ベテランのフレデリック・ゲドン(FDJ)がメイン集団からアタック。ラース・バック(HTC・ハイロード)とヨハン・ヴァンスーメレン(チームガーミン・サーベロ)らが彼に付き従い、先行していた逃げ集団に合流した。ここから残り22kmでバックがアタックし、ヴァンスーメレン、チャリンギ、グレゴリー・ラスト(チームレディオシャック)の4人で先頭集団を形成。そして残り15kmのカルフール・ダルブルの石畳で、ベルギー人のヴァンスーメレンがみずからの勝利のためにアタック。サンレモでは落車でパンクしたエースのフースホフトに車輪を貸した30歳のアシスト選手が、ゴールのベロドロームに単独で飛び込んできた時、大観衆はスター選手の勝利と同じくらいの熱狂ぶりでその栄誉を称えていた。

ベルギー勢の活躍が際立ったクラシックレース前半戦

今年のクラシックレース前半戦は、思いがけない選手たちの優勝で幕を降ろした。期待されたカンチェッラーラは1勝もできなかったが、それでも優勝候補の筆頭としてのプレッシャーに耐え、ライバルたちの厳しいマークを振り切ってミラノ~サンレモで2位、ロンド・バン・ブラーンデレンで3位、パリ~ルーベで2位と、3大レースすべてで表彰台に上がったのはさすがだった。彼の敗因はただ「強すぎた」ということだけだった。一方、打倒カンチェッラーラを目指していたベルギー勢は、ビッグネームが不発に終わったとしても、ロンドとルーベのタイトルを獲得し、クラシック前半戦は大成功だったと言えるだろう。『フランダース・クラシックス』シリーズとしてキャンペーンを展開した春先の6レースでも、4レースをベルギー人が制する結果に終わっている。