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Q-RINGSついにスタンダードへ
2011.06.22
真円(ラウンド)運動は効率が悪い?
ペダルを踏み込むことでクランクが回りチェーンを動かしホイールを回転させる。この一連の動きで自転車は前に進んでいく。人がペダルを漕ぐという動作は足が上下する力を回転するペダルへ伝え、円運動の力へ変換されて伝達される。足の上下運動は、力の入れやすい場所、入れにくい場所がある。効率を上げるためにペダルにシューズを固定して引き足を使うが、これも効率が良いものではない。
右図は、真円(ラウンド)リングで円運動を行なったときのパワー分布を表したグラフ。黄色で示した部分がパワー伝達率を示している。この部分が真円になり、どの角度で踏んでも均等に力が掛かることが理想。クランクを回すと一番パワーが入る場所は、片足で90度付近(もう一方の足は270度付近)。力が入りにくい場所は0~60度付近(もう一方の足は180~240度付近)になる。
もうひとつの図ではパワーの伝わり方を棒グラフで表している。力の入りやすい、入りにくい場所で大きな差が生まれてしまっているのがわかる。これらのデータからわかるように、円運動では均等な力でホイールを回転させることは不可能である。
円運動に対するROTORの取り組み
ROTOR社は今まで当たり前であったクランクと真円チェーンリングの関係に疑問を持ち、真剣に考え、研究した。人間にとって最高に効率のよいペダリングとは?
1995年(学生の時)開発したのが2つのチェーンを使った位置相違クランク。(写真上)
1999年、フレームを内蔵したシステムを開発。(写真中)
2002年、クランクの回転軌道が変異するRSKへと進化する(ここでROTOR社を創立)。(写真下)
このRSKクランクは現在のRS4Xへと進化していく。RSシリーズのクランクは、真円リングのままでは力が入りにくいポイントで回転軌道を変位し早く通過することで、自動的に理想の回転へと変化させる。これは、乳酸を約18%も落とすことができる画期的なシステム。しかし、パーツ点数が多い・重量が重いなどの理由で、レースに使用されにくかったため、軽量でシンプルかつ近い効果を発揮する現在のQ-RINGSに変化していった。
Q-RINGSの働き
Q-RINGSと真円リングはどう違うのだろう?「力の入りやすい場所では重い歯数を、入りにくい場所では軽い歯数を」これがQ-RINGSの理論だ。
Q-RINGS版の図を見てみると、MAXパワーはわずかに減少しているが、ムラがなくなり均等に力が伝わっていることがわかる。均等にペダルに力が掛からないと、力が強く掛かった場所でスリップする(舗装路では分かりにくいペダリングのムラだが、オフロードでは簡単に出る)。長距離を走るロードレースでは、これが筋肉の疲労につながる。力を均等にペダルに伝えることができれば、最小限の疲労で済む。
引き足を使うこともロスにつながる。本来人間の足は上下に動かし、歩行や走ることを目的にできている。重い物を引き上げる動作を繰り返すと、本来の動きの邪魔をする筋肉が発達し、ペダリング効率を悪化させる。このロスを無くすのがQ-RINGSの働きとなる。テストラボでの実走テストからデータを抽出し、研究・開発へと繋げている。
Q-RINGSの効果
●どのレベルのライダーでも気軽に使うことができ、理想のペダリングが可能になる。
●真円に比べると、約9%乳酸の発生を抑える。
●ヒルクライム、平坦路などコースに関係なく効率よく走ることができる。
●疲れにくくなった分、より長い距離が走れたり、心拍数を落とすことが可能になる。
●ヒザに負担をかけない。
●効率が良くなった分、走りのレベルアップが可能になる。
Q-RINGSは効率にこだわって作られている。「無駄な力を使わず、最大の力を発揮する」そのために生まれてきたチェーンリング。重い歯数を踏むためや回転を上げるための物ではない。さらにヒザの保護にもつながる。
Q-RINGSの優れた性能は実践でも証明されている。ロードレースでは、2009-2010年のサーヴェロ・テストチーム、2011年のガーミン・サーヴェロ、ジェオックス、ヴァカンソレイユ、ソールソジャサンの4チームが採用している。MTBではスペシャライズド・ファクトリーチームが使用し、めざましい活躍をしている。