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ピッタリいいタイヤの選び方

自転車パーツのなかで唯一路面と接触するタイヤ。自転車の「乗り心地」を左右する重要なファクターであることは誰でも知ってるけど、あなたはどれくらいタイヤのことを知っているだろうか?
text●鏑木 裕/本誌 photo●永田まさお/澤田和久

タイヤに求められる4つの機能

●荷重を支える(負荷荷重) ●駆動力&制御力を路面に伝える(縦方向のグリップ) ●衝撃を緩和する(乗り心地) ●方向性を転換する(横方向のグリップ) ユーザーの使い方や自転車の種類によっても求められる性能は異なるため、バランスを見極めることが大切。タイヤのディテールに目を向けてみよう。

コンパウンド

トレッド部に使われているゴム質はコンパウンドとも呼ばれ、端的にタイヤの特性を分けることとなる。たとえば硬質なコンパウンド(シングルコンパウンド)は転がり抵抗が小さく、耐摩耗性に優れる。このためロングライド用、通勤用タイヤ、ヒルクライム用など一部の特殊目的のために使われることとなる。 一方、安心できるグリップ力を求めるには柔らかめのコンパウンドが不可欠だ。このためセンター部のコンパウンドを硬くし、両サイド部に柔らかいコンパウンド配置する「デュアル(ダブル)コンパウンド」のタイヤも多く見られ、レースなどに使用されている。 トレッド部のパターンは、23C以下の細いタイヤではスリックが多い。しかし接地面が多い、すなわち太いタイヤでは、降雨時の水はけ性を高めるためにサイピング(排水溝)を設けることが一般的になっている。 ●耐パンクベルト(ブレーカー)を備えたモデルは、トレッド部から内部への異物侵入を防ぐ。ツーリング用、練習用。 ●かつて、カラータイヤは耐久性が乏しいと言われていた。しかしシリカ研究の発展により、耐摩耗性・耐紫外線性が向上している。逆に柔らかさを生かすため、サイド部に積極的に配置されるようになりつつある。

タイヤの太さ

タイヤの太さは側面に刻印(もしくはプリント)されている。たとえば700Cクリンチャーの場合は「700(タイヤ経)×23C(太さ)」などと表記され、23C=23mm幅であることを示している。ちなみに写真で併記されている「23-622」はETRTO(ヨーロピアン・タイヤ&リム・テクニカル・オーガニゼーション)での表記でISOにも採用されている。622というのがタイヤのビード直径(内径)。タイヤは太くなるほど乗り心地とグリップ力、耐久性が向上する反面、重量は重くなる傾向にある。ロードバイク用のタイヤでは、23Cの太さが一般的だ。 タイヤは入れる空気圧で驚くほどフィーリングが変わる。一般的には空気圧を上げるほど転がり抵抗が減り、下げるほど乗り心地は向上しグリップ力は増す。タイヤの性能を見極めるには、さまざまな空気圧で試してみることが不可欠だ。このとき、負担の少ない前輪の圧だけを下げるというように、前後のタイヤで空気圧を変える裏技も存在する。

TPI

ケーシングの太さ(細さ)を示す数値として一般的なものに、TPI(スレッド・パー・インチ)がある。1インチ(25.4mm)の間に、何本の糸が並んでいるかを示しており、TPIが少ないほど太いケーシング、多いほど細いケーシングとなる。 同じ素材でケーシングを作れば、TPI値が大きいほど乗り心地とグリップ力に優れる傾向となる。さらに細いケーシングはタイヤを薄くできるため、重量面でも有利だ(耐久性には劣る)。このためレース用タイヤではTPIが上がる傾向にある。逆に、TPI値が少ないと異物が通過しにくい、ケーシングが切れにくいなどのメリットがあるが、重量が重くなるためレース用には不向きとなる。ちなみにIRC(井上ゴム工業)の一般車用タイヤは24TPIだという。 チューブにも種類がある。右は一般的なブチルチューブ、左はラテックスチューブ。素材もさることながら、さまざまな厚さ(重量)の製品が作られており、乗り心地への影響も大きい。最も手軽にできるチューニング箇所といえるだろう。

メーカーが推奨する空気圧はどうやって決まる?

転がり抵抗やグリップ力、耐久性、乗り心地などを総合的に判断して決めていく。 タイヤ側面にはメーカーによって空気圧が指定されている。これはメーカー側が考える推奨空気圧で、日本メーカーが国内向けに販売する製品では、片輪に対して一定の荷重が想定して作られている。このときの転がり抵抗の少なさ、グリップ力、耐摩耗性などを総合的に考慮しているのだ。なお、製品によっては最大空気圧のみが指定されている場合もある。そういったときは最大値以下で調整することとなる。

エア圧はどうやって決める?

まずはメーカー推奨空気圧の中間値を入れてみて、続いて低圧気味、高圧気味を試してみよう。 メーカーが上限下限の空気圧を指定している場合は、その中間あたりを試してみよう。その後、高め、低めでどのようにフィーリングが変わるかを体感してみる。一般的に、空気圧が高いほど転がりが軽くなり、低いほど乗り心地とグリップが向上する。また、天候や路面で圧を変えるというのも賢い方法だ。たとえばグリップを稼ぎたい場合(たとえば降雨時など)に、前輪のエア圧を落とすというように。

タイヤの前後ローテーションは有効?

タイヤの寿命を延ばすのにはとても有効。 自転車は走行中、荷重の約7割を後輪が支えている。加えてリヤは駆動輪でもあるため、後輪にかかる負荷のほうが前輪よりも圧倒的に大きい。結果としてリヤタイヤばかり摩耗することになる。タイヤの寿命を延ばすためには、前後タイヤのローテーションはとても有効。1000kmから2000kmごとに前後を入れ替えれば、倍近く寿命を延ばすことも可能となる。

タイヤの寿命を延ばす方法

急制動を避け、直射日光に当たらないようにする。 保管は、外気に触れないようビニール袋などで密封し、押し入れなどの冷暗所に置く。 これは、大気中の酸素やオゾンと反応してゴムが劣化するのを防ぐため。タイヤは寝かすと性能が向上するという話もある。完成直後よりも一定期間熟成させたほうがゴムの組成が安定し、転がり抵抗などは若干小さくなる。 ★ホイールから選ぶタイヤ、クリンチャー&チューブレス比較検証は、サイクルスポーツ2月号に掲載しています。