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お薦め入門ロードバイク part3

駆動、変速、制動を司るコンポーネントは、フレームやホイールに並ぶ重要なパーツ。コンポの基礎を押さえておけば、バイク選びがもっと楽しくなる!

コンポーネントとは

自転車乗りの会話でよく出てくる「コンポ」という言葉。これは「コンポーネント」のことで、シフト&ブレーキレバー、前後ディレーラー、カセットスプロケット、チェーン、クランクセットなどの駆動系のパーツにブレーキを加えたパーツ群のこと。現在はおもに日本のシマノ、イタリアのカンパニョーロ、アメリカのスラムの3メーカーが作っている。どれもトータルで性能が発揮されるように設計されており、メーカーの間に互換性はないに等しい。主要パーツはメーカーやグレードが同じものでそろえたい。 コンポーネントにはグレードが設定されており、シマノとカンパニョーロは6グレード、スラムは4グレードをラインナップする。リヤディレーラーの変速段数の設定も複雑だ。シマノの上級モデルは10速で、下位グレードは9速か8速。カンパニョーロの上位4グレードは11速を採用しており、ロード用コンポのなかでは最も多い。下位グレードは10速となる。スラムはすべてのグレードで10速となる。グレード間の違いはギヤ枚数だけではない。上位グレードにはカーボンやチタンなどの軽量素材が惜しげなく使用され、軽く作られている。プロの過酷な使用状況に耐えうるように設計され、仕上げも美しい最高級パーツだが、アマチュアが楽しむ分にははっきり言ってオーバースペックで高価。動作精度や変速スピート、制動力は上位グレードのほうが上だが、最近のコンポは技術の進歩によってグレード間の性能差が縮まってきており、レース使用を視野に入れてもミドルグレードのもので性能的に不満は出ないはず。使用目的と予算に応じて自分に合ったコンポーネントを選ぼう。

ORBEA AQUA(完成車価格)15万7500円(105仕様)13万6500円(ティアグラ仕様)9万8700円(ソラ仕様)

熱狂的な自転車競技ファンが多いことで有名なスペインのバスク地方に本拠を置く老舗ブランド「オルベア」。トップモデルに超高性能と比類なき美しさを持ち合わせ、他メーカーにも多大な影響を与えたスーパーバイク「オルカ」を持つ。オリンピックでゴールドメダルを獲得するなど、プロレース界においても数々の勝利を獲得している。 オルベアといえば、軽量フルアルミフレームを得意としていたブランド。ツール・ド・フランスの山岳ステージで、鮮やかなオレンジにペイントされたオルベアのフルアルミフレームが最新フルカーボンフレームを蹴散らしてきたことを覚えている人も多いと思う。このアクアは、そんな先輩バイクのDNAを受け継ぐフルアルミバイク。オルベアのなかで最も多い販売量を誇るベストセラーモデルである。複雑にベンドさせることなく、チューブ接合ポイントを直線でつないだシンプルでロードバイクらしいシルエットを持つ。 アクアは各チューブにハイドロフォーミング(パイプの内側から液体で圧力をかけて成型する手法)を用いることで、ねじれ剛性を向上させ、さらに溶接面積を増大させることでロードバイク本来のキビキビとした動力性能を獲得している。塗装の美しさも特筆すべきポイント。オルベアのエンジニアは走る楽しみに加え、所有する喜びも追求している。 テストしたのは2011年3月末に日本限定で発売したシマノ・105仕様(限定200台)。そのほかにシマノ・ティアグラ仕様とシマノ・ソラ仕様も用意されている。7万円強というリーズナブルな価格でフレームセットも用意されるため、この上質なアルミフレームを上級コンポと軽量パーツで組むことも可能となる。
●塗装クォリティはエントリーモデルとは思えないほど高く、細部の仕上げもていねい。凝視するとアラが見えてしまうフレームも多いなか、アクアは細かいロゴまできれいに出ており、低価格ながら所有欲も満たしてくれる。 ●ダウンチューブはハイドロフォーミングによって縦長(涙滴形状)断面になっており、ペダリングパワーをしっかりと受け止める。各チューブはギミックが見られず直球勝負的な設計。これが躍動感あふれる走りにつながっている。 ●フォークはスラリと伸びるストレートタイプ。フレームとベストマッチングを見せる。アクアの持ち味である素直なハンドリングと軽快なヒルクライム性能は、このフォークによるところが大きいかもしれない。 ●トップチューブは逆三角形断面。パイプのたわみがコントロールされており、さらにヘッドチューブとの溶接面積が大きくなることで接合部剛性が向上し、ダンシング時の軽快感につながっていると思われる。 【安井行生のインプレッション】鋭い加速。キレのある登坂性。フルアルミのよさを最大まで引き出せている。走る・曲がる・止まるの基本性能が高い。高負荷のヒルクライムでもフルパワーのスプリントでも、涙滴断面のダウンチューブが脚力をとらえるため、バイクがアゴを出さない。坂を上るのが楽しくなってくる。ハンドリングは全速度域で一貫して扱いやすい。ブレーキの効きは強力かつコントローラブル。快適性も悪くない。フルアルミながら振動の減衰性も良好だ。ハイドロフォーミングによる形状設計が意図どおりの効果を出していると見るべきだろう。パイプ肉厚はさほど薄くないため、毎日ガンガン使っても大丈夫。ロングライドオンリーならまだしも、少しでもレーシーな走りをしてみたいなら、ナマクラカーボンフレームを買うより、アクアのようにキリッと走るロードバイクを手に入れたほうが100倍幸せになれる。キャードに並ぶフルアルミフレームの傑作である。 【SPECIFICATION】 ◆フレーム/アルミ ◆フォーク/カーボン ◆コンポーネント/シマノ・105 ◆ホイール/シマノ・WH-R500 ◆タイヤ/ヴィットリア・ザフィーロ700×23C(ホワイト) ◆サドル/セライタリア・SLフロー ◆ステム/オルベア・アル ◆ハンドルバー/オルベア・ロード ◆実測重量/9.0kg ◆サイズ/48、51、54、57、60 ◆カラー/ホワイトブルー、ホワイトレッド、ホワイトオレンジ、ブラックホワイト 問・ダイナソア TEL0742-64-3555

PINARELLO QUATTRO CARBON(完成車価格)29万8000円

インテグラルヘッド、カーボンバック、コンパクトドライブ、そして左右非対称設計。数々のトレンドを作り出しつつ、現在もロードバイクシーンの最先端を走り続けるイタリアンブランド「ピナレロ」。ビッグレースで勝利を量産する、レース界にはなくてはならない存在である。華やかなペイントもこのブランドの大きなアイデンティティ。 2009年にデビューした旗艦モデル「ドグマ60.1」に採用されていた「完全左右非対称設計」で世界中の自転車ファンをアッと言わせたピナレロだが「左右非対称デザインは、もはやトップグレードだけの特別なものではありません」と、その最新テクノロジーを惜しげもなくトップダウンさせる。2011モデルでは、ドグマの下に位置する「パリ50-1.5」「クアトロ」まで「完全左右非対称フレーム」となった。自転車という乗り物はドライブトレインが車体右側にあるためフレームにかかる応力が左右で異なることがわかっている。ピナレロはフレームを左右非対称に設計することで補正し、ペダリングパワーをよりニュートラルに推進力へと変換することに成功しているのだという。 ミドルグレードの万能バイクとしてデビューしたクアトロのフレーム素材は30HMカーボン。曲線を多用した複雑な形状を持つフレームは、必要とされる部分にはしっかりと剛性を持たせたうえでビギナーにも扱いやすい剛性バランスに調整されている。もちろん、ピナレロのアイコンである湾曲したオンダフォークも搭載される。フレームカラーは6色から選択でき、ここに紹介するシマノ・105仕様のほか、シマノ・アルテグラ仕様、カンパニョーロ・アテナ仕様が用意される。
●触るとすぐわかるが、トップチューブも左右で形状がまったく違う。ブレーキケーブルは内蔵される。「左右非対称」をアピールするかのように、トップチューブのグラフィックもアシンメトリー。ピナレロにしかできないデザイン。 ●シートステーの取付部(ブレーキキャリパーを外したところ)は左右で太さがまったく違うことが見てとれる。より力のかかる右側を強化し、左右のバランスを補正しているという。 ●ステム、ハンドル、サドル、シートポストには専用のカラーリングが施されたピナレロオリジナルモデルが搭載され、統一感のあるルックスを見せる。このデザインセンスに魅了される人は多い。 ●カーボンならではの複雑な形状を見せるヘッドチューブ。下方にある突起は2007年に登場した当時の旗艦モデル「プリンス・カーボン」から受け継がれる形状。 【安井行生のインプレッション】低速ではおとなしいが、高速域に入ると水を得た魚のように生き生きとしてくるオールラウンド系レーシングフレーム。ピナレロのレーシングラインの血を受け継いでいる印象。表面はソフトで乗りやすくしつけてあるが、トルクをかけるにしたがってフレームの芯がしっかりしてくる。強く踏み込んだときに後ろからググっと押し出される感覚は、テストしたバイクのなかで最も強かった。トルク型のライダーが走らせても動的性能に不満を感じることはほとんどないと思われる。ハンドリングとハイスピード域の安定感は非常に良好。ダウンヒルでもドシッと路面に吸いついており、安心してスピードを上げることができる。左右非対称設計の明確な効果は感じられないが、カーボンフレームとしてのバランスが非常にいい。これ1台でさまざまな楽しみ方ができそう。ステム、ハンドル、サドルまでトータルでデザインされており、見る楽しみも与えてくれる。 【SPECIFICATION】 ◆フレーム/カーボン・30HM12K ◆フォーク/オンダFPK カーボン30HM12K ◆コンポーネント/シマノ・105 ◆ホイール/シマノ・WH-R500 ◆タイヤ/コンチネンタル・ウルトラスポーツ ◆サドル/モスト・レオパード ◆ステム/モスト・タイガーウルトラカーボン ◆ハンドルバー/モスト・ザイロンアルミコンパクト ◆実測重量/8.3kg ◆サイズ/440s、465s、500、515、530、540、550、560、575、595 ◆カラー/486・ブラックレッド、511・ホワイトグリッター、493・レッド、514・BOB 問・ピナレロジャパン TEL072-238-0039

RIDLEY ORION(完成車価格)22万5750円

自転車競技を国技とするベルギーで進化を続ける「リドレー」。1990年にジョシム・アールツが塗装会社を創業させたのがスタート。フレームの塗装を請け負いながらアルミフレームの製作に着手し、フレームメーカーに転身。その後完成度の高いカーボンフレームを次々と生み出し、今や世界のトップブランドと肩を並べる存在になった。 このオリオンはリドレーブランドの中核を担うハイパフォーマンスモデル。2007年にデビューし、当時はフレームセットで約20万、完成車で30万円という価格だった。2009年にカタログからドロップしたが、2011年モデルとして再びラインナップ。1年間の製作・熟成期間を経て、フルモデルチェンジを果たした。 新生オリオンは、ダウンチューブのボリュームをあえて落として、しなやかさを向上させているのが大きな特徴。一方でチェーンステーとBBエリアは前作よりも外径がアップしており、リヤセクションを硬く作ることでパワー伝達効率を向上させ、快適性と動力性能の両立を図っている。前作オリオンの特徴であったT字断面のトップチューブは廃止され、新たに五角形断面のトップチューブが与えられた。これにより、しなやかさを向上させつつ必要な剛性レベルが確保されている。シートステーは快適性に優れるモノステーに変更。チューブ自体の外径も細くすることで、より高い振動吸収性能の獲得を目指している。シマノ・105を装備しながら20万円強と、前作よりも大幅なプライスダウンを実現していることも見逃せない。
●一定方向の曲げのみに強いT字断面から、全方位に強くしなやかさにも優れる五角形断面にすることで、フレームバランスの向上を狙っている。 ●走行性能を大きく左右する要因のひとつであるBB~チェーンステー。前モデルから大口経化されている。チェーンステーの内側のみをつや消しブラックにするセンスはリドレーならでは。 ●モノ化されたシートステー。チェーンステーに比べるとかなり細い。リヤホイールから入る振動に対し積極的にしならせることで高い快適性を実現している。 ●旧オリオンのダウンチューブはびっくりするほど太かったが、新生オリオンは標準的な外径でしなやかさが向上している。複雑な六角形断面で、素材は24tカーボン。 【安井行生のインプレッション】ミドルグレードのカーボンフレームとしてトータルバランスに優れた一台。加速性や登坂性はややゆったり。その分快適性は非常に高い。ショックを優しく吸収しつつ、微振動はうまく減衰させている。最大の魅力は価格を感じさせない高度な剛性バランス。カーボンらしいバネ感があり、ヒルクライムやスプリントで強く踏み込んでも、ダウンチューブ~ハンガー~チェーンステーがわずかにしなって瞬時にピュンと戻ることで、脚に優しい走行感を実現している。どんな走らせ方に対しても懐の深さを見せる。他パーツに比べてやや見劣りのするブレーキを換えて決戦用ホイールを買い足せば、アッパークラスを食う実力を秘めていると感じた。ハンドリングは基本的にクイック指向だが、高速コーナーでは安定する。レース入門からロングライドまであらゆる用途に向いているので、はっきりとした目的が決まっていない人が手に入れても間違いない動きをしてくれるだろう。 【SPECIFICATION】 ◆フレーム/24tハイモジュラスカーボンファイバー ◆フォーク/24tハイモジュラスカーボンファイバー ◆コンポーネント/シマノ・105 ◆ホイール/シマノ・WH-R500 ◆タイヤ/ヴィットリア・ルビノ ◆サドル/4ZA ストラトス ◆ステム/4ZA ストラトス ◆ハンドルバー/4ZA ストラトス ◆実測重量/8.5kg ◆サイズ/XXS、XS、S、M ◆カラー/1103A(ブラック)、1117A(ホワイト) 問・JPスポーツグループ TEL072-686-3838