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お薦め入門ロードバイク part2

「サイズの合っていない100万円の自転車より、サイズの合った10万円の自転車」という格言(!?)がある。ロードバイク選びの第一歩・フレームサイズについて解説してくれるのは、東京・阿佐ヶ谷にある1933年創業の老舗プロショップ「フレンド商会」のスタッフ・樗沢(ぶなざわ)剛さん。
photo●永田まさお/大前仁/小見哲彦/佐藤正巳/山内潤也

適正サイズのフレームを選ぼう!

体型にフィットさせる必要があるロードバイクには靴や服と同じようにサイズがあり、自分の体に合ったサイズを選ぶ必要がある。サイズが合っていないバイクは操作がしにくく、実力が発揮できない。スポーツ障害などの要因となってしまうこともある。一般的には1車種で少なくともS、M、Lの3種類、サイズ展開の多いモデルなら10種類以上のサイズが用意される。しかし、ビギナーにとってはどのサイズが適正なのかわかりづらい。身長から決められれば簡単だが、手や脚の長さ、柔軟性などによっても異なるため一概には言えないのだ。 スポーツバイクのプロであるフレンド商会の樗沢さんに、ロードバイクのサイズ選びについて聞いてみた。「たいていのモデルは幅広くサイズ展開しているので、サイズをあまり気にせずに、まずは車種を決めてもいいでしょう。小柄な人の場合は乗れるモデルが限定されることもありますが、最近はヨーロッパメーカーも小さいサイズを用意しています。欲しいバイクが決まったら、そこからはお店の仕事。専用の機械を使って、お客様に適したサイズの測定を行なっているので、どのサイズが合っているかという判断はショップに任せてしまってもいいと思います」

EDDY MERCKX:EMX-1(完成車価格)29万8000円

16年間の現役時代にツールとジロで各5勝、世界選手権プロロード3勝、クラシックレースを含む通算525勝という史上最強のレーサー、エディ・メルクス。そのメルクスが引退後に興したブランドが、みずからの名を冠した「エディメルクス」だが、09モデルから慣れ親しんだロゴやヘッドマークを刷新し、新しいスタートを切った。 エディメルクスのカーボンロードバイクは全7種。ハイエンド向けの「プロ」と、EMX-1などエントリー向けの「パフォーマンス」がある。EMX-1に採用される「パフォーマンスジオメトリ」は、ヘッドチューブがプロシリーズより長く設定されていて、フレーム素材には比較的トン数が低く、柔らかい24HM・UDMカーボンが使用されている。これにより走行中の上半身への負担は軽減され、ロングライドにおいて、より快適な走行感を実現しているという。 フロントフォークやシートステーには特徴的な造形が見られるが、これは走行中のフレームにかかる応力をコンピュータ解析し、最適なバランスを実現するためのもので、ただのデザインではない。快適さを向上させながら、ハイレベルなコーナリングや加速の性能を実現するためのものなのだ。 ボリューム感あるヘッド部は下が1-1/4で、トップチューブとダウンチューブを巻き込んだ独特のデザイン。トップチューブは逆三角形の断面形状にして剛性と軽さを両立している。コンポーネントにはシマノ・105を、そしてホイールにはリニューアルされたフルクラム・レーシング7が採用されている。
●近年増えているのがBBまわりに続いて、ヘッドチューブまわりの断面積アップ。EMX-1の下ワンはスーパーオーバーサイズ化(1-1/4インチ)だけでなく、トップチューブとダウンチューブも巻き込んだ大ボリュームになっている。 ●ハンガーまわりのデザインはボリューム感たっぷりで、ねじれを排除し、踏んでもしっかりとした芯を感じる。ライダーの脚力を余すことなく車輪に伝えるので、一般的なライダーであればレースに使っても十分な加速感を楽しめる。 ●シートステーはモノタイプを採用し、つぶされて薄く仕上げられている。全面投影面積は小さいが、縦方向には長さがあるので、しっかりしたバックの剛性が持たされている。 ●コンフォートモデルというと乗り心地抜群というイメージだが、メルクスの基本はさすがにレーシング。フォークの縦方向のボリュームはしっかりあるので、ロードインフォメーションはシビアに伝えてくる。 SPECIFICATION ◆フレーム/カーボン24HM・UDM ◆フォーク/カーボン ◆コンポーネント/シマノ・105 ◆ホイール/フルクラム・レーシング7 ◆タイヤ/ヴィットリア・ゼフィーロプロ700×23C ◆サドル/オリジナル ◆ステム/FSA・OS190 ◆ハンドルバー/FSA・ヴェロコンパクト ◆実測重量/8.1kg ◆サイズ/420、450、480 ◆カラー/ブラック、ブラック×レッド、ホワイト×グレー 【小林徹夫のインプレッション】セットされているステムを見て「長すぎるのでは?」と感じたが、ショートリーチバーの効果か違和感はなかった。縦方向にはしっかりしていて、踏んだときに物足りなさを覚えるようなバイクではなく、ロードバイクならではのシビアなバイクコントロールや、ソリッドな舗装路の走行感を楽しむことができる。それでいてロングライド的なポジションを持たせたバイクだろう。 オーバーサイズBBは、カーボンフレームらしいボリューム感でハンガー部のねじれを排除し、パワーを無駄なく車輪に伝える。フレーム自体のパリっとした剛性はさほど高くないと感じるものの、フロントフォークもしっかりとしていて路面のインフォメーションも正確に伝えるのはレーシングブランド、メルクスらしい。ステアリングの印象は直進性が高く、安定感があるが、高速のダウンヒルではもう少しバーを低くして押さえたい感じもある。走り方に応じてセッティングするといいかもしれない。 問 深谷産業 TEL052-909-6201

GIANT:TCR1( 完成車価格)15万7500円

ジャイアントの創業は1972年。欧米の有名ブランドのOEM生産を請け負う時代を経て、1981年にオリジナルブランドを掲げた。1997年にはプロチームであるオンセのマシン供給を発表し、一気にヨーロッパに進出した。「世界一の生産台数」で語られることが多いジャイアントだが、同社が最も誇るのは台数よりもその品質にある。世界で最もたくさんの自転車を作るメーカーゆえの技術力。数えきれないほどのレースからのフィードバック。その裏にある新たなアイデアを現実にする充実した設備。そういった環境から生み出されるフレームはプロ選手にも好評を得るほど完成度が高い。 TCR1のフレームは、ジャイアントが長年アルミを研究し続け、素材の特性を分析して生まれた「ALUXX(アラックス)SLアルミニウム」を使用し、独自の製造工程により組み上げている。それによりできあがったフレームは、剛性と反応性が非常に高い最強のレースエントリーバイクだ。アルミらしいキビキビとした走りはレースバイクとしての適応性を備えるのはもちろん、コンパクトドライブとワイドギヤが標準採用され、ヒルクライムにも対応する。 さらに「パワーコアBB」と呼ばれるカートリッジベアリングにクランクシャフトを直接取り付ける独自規格のハンガーまわり、ヘッドパーツの下部品を1-1/8インチから1-1/4インチに拡大する「オーバードライブヘッド」を採用することで、剛性アップを実現しながら、軽快な加速性能とハンドリングを追求している。
●スローピングで前三角はコンパクト。硬くなりがちなイメージのアルミフレームだが、湾曲させたトップチューブと細めのシートステーがうまく振動を吸収している。パーツ類がフレームカラーと統一されているので、見た目も美しい。 ●ハンガーまわりのデザインはボリューム感がたっぷりといった印象はないが、パワーコアBBと呼ばれるカートリッジベアリングにクランクシャフトを直接取り付ける独自規格を採用することで、類まれな軽快さを生み出している。 ●ヘッドチューブまわりの断面積アップは最近の流行だが、TCR1ではオーバードライブヘッドと呼ばれるテーパードヘッドを採用(下部品は1-1/4インチに拡大)して、安定性とコントロール性を向上している。 ●一見すると細めで頼りないイメージのフロントフォークだが、乗り味はシャープで弱さはまったく感じない。フルブレーキングでも最速のダウンヒルでも、気持よく狙ったラインをトレースしてくれる。 SPECIFICATION ◆フレーム/アラックス SLアルミニウム ◆フォーク/アドバンスド グレードコンポジット カーボン ◆コンポーネント/シマノ・105 ◆ホイール/ジャイアント・P-R2 ◆タイヤ/ミシュラン・ダイナミックスポーツ700×23C ◆サドル/ジャイアント・パフォーマンスライト ◆ステム/ジャイアント・コネクト ◆ハンドルバー/ジャイアント・コネクト ◆実測重量/8.5kg ◆サイズ/430(XS)、465(S)、500(M) ◆カラー/ブラック×ブルー、チームカラー 【小林徹夫のインプレッション】近年流行のスローピングフレームをいち早く開発したのはジャイアントだ。スローピングフレームでコンパクトなTCR1は、前三角が小さいので軽くて高剛性。コントロール性が高く、同価格帯の他社を上回る性能を有する。乗った瞬間に高性能バイクと感じられる踏み出しの軽さ、登板での軽さ、ダッシュのかかりの良さ、走る上での欠点はほとんど見つからない。いっときのアルミバイクは、反応性はいいが多くのライダーが「硬すぎる」と感じていた。しかしこのTCR1は、スローピングフレームでありながらも、剛性をうまくコントロールして、誰にでも扱いやすいレベルにしている。 アルミでは苦手だと思われていた振動吸収性も十分だ。直進安定性、フロントまわりの剛性感からくる出足の良さなど、走ることが楽しくなる。もちろんダウンヒルでもそれは変わらない。低予算で高性能を求めれば、TCR1はその期待に応えてくれるはずだ。 問 ジャイアント TEL044-738-2200

GIOS:SESSANTA(完成車価格)18万6900円

ジオスは1948年にトルミーノ・ジオスが創業したブランド。トルミーノは17歳のときにベルリン五輪のイタリア代表になり、クォリティに強いこだわりを持つ。1973年からプロチームに機材供給を始めたが、ジオスを世に知らしめたのはなんといってもクラシックレースで勝ちまくったブルックリンチームのR・ブラマンクの活躍だった。 ジオス最大の特徴は鮮やかなブルーカラーに彩られた、徹底的にこだわった精度の高いフレームだ。使うパイプや作り方に応じて溶接の方法を変えるように、製品のクォリティにはとくに強いこだわりを持っている。もちろん入門バイクであるセサンタにもそのこだわりを見ることができる。使用されるクロモリのパイプは主に2種類の肉厚を持つダブルパテッドが使用され、各所に必要な強度が確保されている。カーボンに比べて重量が増してしまう傾向にあるクロモリだが、肉厚なパイプを使用することにより完成車で9.4km(ペダルレス)と入門車としてはまずまずの重量。フロントフォークにオリジナルカーボンフォークを採用することにより、軽快なハンドリングを実現している。 アッセンブルされるパーツはステム、シートポスト、バーテープに至るまで同社オリジナル製品。加えてコンポーネントには操作性に定評のあるイタリア、カンパニョーロ社のヴェローチェ、ホイールにも同社のカムシンを採用。フレームのみならずバイク全体でイタリアンな雰囲気が演出されている。セサンタは主流となっている戦闘的なカーボンバイクとは一線を画す、細身でクラシックテイストなバイクである。
●ブレーキプラケットはロードバイクでは重要なパーツ。カンパニョーロのエルゴパワーレバーは不評を聞いたことがないほど使いやすい。ラウンドパワーに慣れた人にも、このハンドルバーの形状は違和感がない。 ●ジオスではパイプメーカーにジオス専用のオリジナルチュービングされたものを作らせて、それをアッセンブルしている。半世紀以上にわたりロードレースの現場で勝利をあげ続けてきたブランドのこだわりといえる。 ●ジオスオリジナルのカーボンフォークは、ゆるくベンドしたもの。ストレートに比べると前後に揺れる感じはあるが、突き上げる感じもなく高速のダウンヒルから一気に踏んでいく場合にもしっかり応えてくれる。 ●ブルーの下地にオリンピックの五輪が並ぶヘッドマークは、ブルックリンチームをスポンサードすることでトップブランドになった歴史を記したもの。 SPECIFICATION ◆フレーム/オリジナル4130クロモリ スペシャルチュービング ◆フォーク/オリジナルカーボンフォーク ◆コンポーネント/カンパニョーロ・ヴェローチェ ◆ホイール/カンパニョーロ・カムシン ◆タイヤ/ヴィットリア・ゼフィーロ700×23C ◆サドル/ジオス・セライタリア ◆ステム/ジオス・オリジナル ◆ハンドルバー/ジオス・オリジナル ◆実測重量/9.4kg ◆サイズ/48、50、52、54 ◆カラー/ジオスブルー 【小林徹夫のインプレッション】カーボン主体のロードバイクのなかでクロモリはやはり過去のものと判断せざるを得ない。ただ間違ってほしくないのは、それは重量のことであり、踏んだ瞬間に反応する応答性などについて実際のレースの場に持ち込んだ場合は、おそらく大したデメリットはないだろう。走行感ははっきり言ってかなりいい。クロモリ独特のしなやかさがあり、荒れた路面では跳ねない、踏んでいったときに持続する、スプリントが伸びる、高速でのコントロール性がいいなど、メリットは多い。そうしたメリットは乗らなければわからない。重量をカーボンと比べてしまうとクロモリを選ぶ人は少ないだろう。しかし、その独特の走行感にはファンも多い。キビキビとした走りが要求されるレースももちろん使えるが、それよりは一定のペースで長い距離を走るロングライドのほうが向いているようだ。 問 ジョブインターナショナル TEL06-6368-9700