9070系デュラエースロングタームレポート最終回! 半年使って思うこと……
最新、最良のコンポーネントはいかに?
楽に、速く、遠くまで。という自転車コンポーネントに課せられた至上命題を実現するべく開発された、最新コンポーネントであるデュラエースDi2 9070。登場したときは、その圧倒的な性能の進化に多くの賞賛が寄せられた。
機械式のデュラエース9000系が、先に発表されたにも関わらず、ショップでは“9070系待ち”のサイクリストが多く出たことからも、その期待度の高さが伺える。
リヤが11速化されたことをはじめ、誰でも体感できる引きの軽いブレーキシステム。7970系に比べても、よりスムーズになった変速性能。軽量化。進化のポイントはいくつもあるが、やはり自転車パーツは使ってこそのもの。その後、半年間にわたって使用することで、改めてどう感じたのかをレポートする。
秀逸なブレーキ
改めて思うが、ブレーキ操作の軽さ、制動はすばらしいの一言。これは誰にでも体感できると思う。久しぶりに7970のレバーを握ると、こんなにも引きが重かっただろうか?と衝撃を受ける。ライド後半の、疲労が溜まってきたときにそのありがたみを感じることだろう。峠の下りでも、指の筋肉がつりそうになる思いをしなくてもいいのだ。引きが軽くなったぶん同じ力でより多くの制動力を発揮することができる。
制動力の立ち上がりも一定で、わかりやすいのだが、その反面、ブレーキが効きすぎるとも感じるようになった。なんとも贅沢な悩みなのだが……。これはもはや個人の好みと、新しいパーツに対する慣れの問題ではある。
前後ブレーキワイヤのタッチだが、フレームに内蔵するタイプは、やはりフロントとリヤでタッチの違いが出てしまう。これは、今後ロード用油圧ブレーキの普及によって大きく変わるだろう。
また、ワイヤ取り回しを美しく仕上げることによってより抵抗が軽減されるのは従来のワイヤと同じ。ワイヤの表面処理が向上したからといって、適当な取り回しでは、本来の性能を発揮することはできない。
懐の深いディレーラーたち
電動変速のアドバンテージはかなり大きい、機械式には到底まねできないほど確実で、ライダーの無茶にも呼応してくれる。
特に上り坂でのアドバンテージは大きく、自分程度の脚力ならどんなにトルクをかけていたとしても、変速することができる。登坂でシフトミスによる遅れを最小限にとどめることができるのだ。
シフトミスを恐れるあまり変速をためらい、思いギヤで無理やり走るようなことをしなくてもいい。また、フロントをアウターのまま走りきれると思っていた上りの途中で、やっぱりインナーに落としたい。それによって、リヤはシフトアップしたいというような、前後同時変速でも確実にこなしてくれる。
一気変速については、2段、3段、無段階とあるなかで、自分の場合は一度は3段で使い続けていたが、結局無段階に戻したいなと思った。
走行中になるべく考えることを減らしたい。考えることがストレスだからだ。変速スイッチを押し続けることで、3段までは変速するというのが、自分の動作にとっては“考えること”になってしまったからというだけなので、人によってはまた好みも違う。
それを許容するだけの性能を、9070系は持っているのだ。
でも、少しだけ屁理屈を……
どこまでも優等生な9070デュラエース。それはもちろんすばらしいことだ。
しかし、あえてケチをつけさせてもらうなら、面白みがなくなってしまった。ともいえる。
機械なので、快適確実に動くことはすばらしいが、イレギュラーというか、人間の持っている感覚から、「少し遠くに行ってしまったな」と感じるときがある。そんなノスタルジーよりも、上り坂でつらいとき時に、確実に変速してくれるディレーラーの存在意義がはるかに大きいのは百も承知だが、あえて言わせていただいた。
たまに機械式のデュラエースを使うと、自分が自転車を操っているなという感覚が強い。例えて言うなら、クルマであえてマニュアル車を運転したいと思う感覚に似ている。自分の操作の上手い下手がそのままバイクに現れるおもしろさ。便利になりすぎる反動でそんな気がしているのかもしれない。
それほどにDi2 9070系の完成度は高い。冒頭でふれた“買い”かどうかといわれれば、間違いなく“買い”である。誰が使っても、最高に近いパフォーマンスを手に入れることができるからだ。しかし、機械式のデュラエース9000系や、アルテグラ6800系を使ってみると、何かいいなと感じる部分がある。
今ある動作の確実性に加えて操作する楽しさや、フィーリングといった部分が機械式のコンポーネントにはあるのではないだろうか。それを、電動コンポーネントでも研ぎ澄ませて行けば、より魅力的になるのではないだろうか?