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ポルトガル初の世界チャンピオン誕生! トスカーナ世界選ハイライト

イタリアのトスカーナ地方で開催されたロード世界選はサプライズな勝利で幕を閉じた

 

 

photo: Graham Watson / cyclesports.jp

ポルトガル初のアルカンシエル!

 

イタリア中部のトスカーナ地方で開催された今年のロード世界選手権は、フィレンツェの美しい街並みの中を走るサーキットで競われた。しかし、最終日に行われたエリート男子ロードレースはスタートからひどい雨に見舞われ、厳しいレースになった。序盤から落車が相次ぎ、有力な選手たちが次々と棄権。全長272.26kmで、7時間半という長丁場で競われたレースの終盤には、3分の1の選手しか生き残っていなかった。

 

地元開催という重圧を背負っていたイタリアチームのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)も、チームメートのルーカ・パオリーニとともに残り3周回の終わりに落車。幸いすぐレースに復帰し、メイン集団にも追いつくことができたが、このアクシデントでイタリアチームの歯車は狂ってしまった。

 

落車による集団復帰で脚を使ったにもかかわらず、ニーバリは最終周回のフィエゾレの丘でアタックし、喰らいついたスペインのホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)とともに先行した。しかし、フィエゾレの下りではロドリゲスの独走を許し、後方から追いついてきたスペインのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)、ポルトガルのルイ・コスタ(モビスター)とともに追走する展開となった。

 

残り5kmのビア・サルビアーティで、ロドリゲスと追走する3人のタイム差は4秒にまで縮まり、ロドリゲスは下りで捕まった。彼はゴール前にあった小さな丘でもう一度アタックし、単独でフラムルージュを通過。しかし、アルカンシエルまで500メートルという場所で、振り返ったロドリゲスはコスタが追いついてきたことを知った。

 

そして最後は一騎打ちのゴールスプリントになり、両手を上げたのはコスタだった。ゴールでは選手たちを終日苦しめた雨はすっかり上がり、日差しがポルトガル初の世界チャンピオンの誕生を祝福した。

 

世界チャンピオンになったコスタは現在26歳。今季はツール・ド・スイスを2連覇し、ツール・ド・フランスでは2度目の区間優勝を勝ち取った。世界選の前には、他の選手のようにブエルタ・ア・エスパーニャを調整レースとして走ってはいなかった。今季まではスペインのモビスターチームに所属していたが、来季はイタリアのランプレ・メリダに移籍することが決まっている。

 

●優勝したコスタのコメント「このジャージを着ることは、ボクのキャリアを通しての1つの目標だった。だからまだ信じられない。世界選手権はいつだって宝くじみたいなもので、勝つのは難しい。とても厳しく、今回のような雨ではとくに最初の3時間は厳しさがさらに増す。調子がよくない場面が幾度かあったが、最終周回はずっとよくなった。フィエゾレの上りでは集中しつづけて、決定的な動きを止めなければならないとわかっていた。ビア・サルビアーティでも、ロドリゲスに追いついて最後にスプリントするために、攻撃しなければならないことはわかっていた。ロドリゲスのことはよく知っていたから、彼を打ち負かすことができるとは思っていなかったよ」

 

土砂降りに見舞われたロード世界選

 

トスカーナ世界選には52ヶ国の208選手が出走。残念ながら日本は出場枠が獲得できず、参加できなかった。ルッカをスタートした集団からは、すぐに5人の選手がアタックして先行した。メンバーはラファー・シティウイ(チュニジア)、ジョンデル・ゴドイ(ベネズエラ)、バルトシュ・フザルスキー(ポーランド)、マティアス・ブランドレ(オーストリア)、ヤン・バルタ(チェコ)。ルッカから106km走り、フィレンツェ市街のサーキットに入ったとき、英国チームのマーク・カベンディッシュがコントロールするメイン集団と5人のタイム差は8分近かかった。

 

スタートから降り続いた雨は次第にひどくなり、ビッグネームが次々とレースを去った。そのなかには今年のツール・ド・フランスで総合優勝し、アルカンシエル獲得も狙っていた英国のクリストファー・フルーム(スカイ)や、チームメートのブラッドリー・ウィギンスも含まれていた。

 

2009年のメンドリーズィオ世界選で優勝したオーストラリアのカデル・エヴァンス(BMC)は、落車でレースを棄権したが、検査の結果、幸い骨折はなかった。、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝し、このレースでも最年長だったクリストファー・ホーナー(レディオシャック・レオパード)は落車で肋骨を痛めてしまった。

 

10周したフィレンツェ市街サーキットの残り3周で、先頭にはまだポーランドのフザルスキーが逃げ続けていた。フィエゾレの上りで集団からアタックしたイタリアのジョバンニ・ビスコンティ(モビスター)は、ゴールまで残り36kmでフザルスキーに追いつき、2人で先頭を逃げ続けた。

 

ビスコンティが目覚ましい働きをしている間に、集団ではニーバリが落車。残り2周に突入した時点で、集団から15秒遅れていたが、なんとか追いつくことができた。ベルギーが引くメイン集団は、残り2周のフィエゾレの上りで先頭の2人を捕らえ、レースは振り出しに戻った。このときすでに、集団は50人もいなかった。

 

スタート前から降り続いていた雨は、残り25kmを切るとふいに止み、時折日も差すようになった。そして最終周回は、45人が先頭でフィニッシュラインを通過した。最後のフィエゾレで最初にアタックしたのは、イタリアのミケーレ・スカルポーニ(ランプレ・メリダ)だったが、すぐにバルベルデとロドリゲスが反応し、コロンビアのリゴベルト・ウラン(スカイ)、コスタ、ニーバリらが合流した。

 

 

しかし、つづくニーバリのアタックについて行けたのは、ロドリゲスだけだった。2人はフィエゾレの頂上で、ウラン、コスタ、バルベルデの3人に5秒差を付けることができた。この時点でディフェンディングチャンピオンだったフィリップ・ジルベール(BMC)は24秒遅れていた。彼のベルギーチームは、国別ランキングでトップ10に入らなかったため、今年の世界選には他の強国のように9人の選手を送り込めず、7人で闘っていた。

 

フィエゾレの下りでは、先頭の2人を追っていたウランが転倒するアクシデントが発生。ひどいケガは追わずに済んだが、優勝争いからは脱落してしまった。

 

先頭では下りが得意なはずのニーバリが、ロドリゲスに置いて行かれてしまっていた。終盤の落車が、彼に恐怖心を植えつけてしまったのかもしれない。ニーバリは追い付いてきたバルベルデとコスタを引き連れ、残り4kmでロドリゲスを捕らえたが、2人で闘うスペイン勢は圧倒的に有利だった。

 

スペインの2人にも、その過信があったのだろう。そして彼らは、おそらくニーバリしか見ていなかった。それが伏兵のコスタには強みとなった。最後の小さな上り坂でもう一度アタックしたロドリゲスの後方で、ニーバリがバルベルデと牽制し合っているすきに飛び出したコスタは、ゴール手前500メートルでロドリゲスに追いつき、彼を慌てさせたのだ。

 

そして残り150メートルからスプリントを始めたコスタは、ロドリゲスを打ち負かしてしまった。表彰台でアルカンシエルを着たコスタの両脇で、スペイン勢に笑顔はなかった。来年の世界選手権は、彼らの故郷スペインのポンフェラダで開催される。それはきっと、彼らにとってリベンジのレースになるだろう。

 

トスカーナ世界選 エリート男子ロードレース結果

1 ルイ・コスタ(ポルトガル)7時間25分44秒

2 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)

3 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)+16秒

4 ビンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)+16秒

5 アンドレイ・グリフコ(ウクライナ)+31秒

6 ペーテル・サガン(スロバキア)+34秒

7 サイモン・クラーク(オーストラリア)+34秒

8 マクシム・イグリンスキー(カザフスタン)+34秒

9 フィリップ・ジルベール(ベルギー)+34秒

10 ファビアン・カンチェッラーラ(スイス)+34秒

[出走:208人/完走:61人]

 

[世界選手権エリート男子ロードレース優勝者]

2013 ルイ・コスタ(ポルトガル)

2012 フィリップ・ジルベール(ベルギー)

2011 マーク・カベンディッシュ(英国)

2010 トール・フースホフト(ノルウエー)

2009 カデル・エヴァンス(オーストラリア)

2008 アレッサンドロ・バッラン(イタリア)

2007 パオロ・ベッティーニ(イタリア)

2006 パオロ・ベッティーニ(イタリア)

2005 トム・ボーネン(ベルギー)

2004 オスカル・フレイレ(スペイン)

 

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