踏みごたえは抜群!チポッリーニ・ボンド
チェーンステーが「もっと踏め!」と訴える
チポッリーニのなかでも「ボンド」はいちばん手に入れやすい価格帯のモデル。その構造はトップグレード譲りで、オートクレーブ製法によって成型されている。もちろん生産国はイタリア。カーボン繊維間の余分なレジンや気泡を取り除き、高い強度を実現。レーシングカーのシャシー構造にも使われている技術なのだ。
そして同社独自の特許技術が「アトムリンクシステム」だ。一般のカーボンフレームにおいて、チェーンステーは前三角に差し込んで接着するのみ。だが、この技術では、BBシェルによってモノコックの前三角とチェーンステーのBB部をくし刺しにして結合している。BBとチェーンステーがダイレクトにつながるので、動力伝達性能が高まっているのだ。
そのBBの規格には、BB30を進化させたBB386エボを採用。とにかくパワーのロスを最小限にしようという意気込みをひしひしと感じる。また、ボリュームあふれるフレームデザインとエアロダイナミクスを意識した形状は、見る者をやる気にさせる。チポッリーニほどの脚力はもちろんないが、自分のパワーをムダにしたくない、という気持ちはホビーライダーも同じ。その願いに応えてくれるのが「ボンド」だ。
■写真下・左:フロントフォークは、クロモリフォーク2本分はあろうかという極太のブレードを持つ。肉厚もあり、ハードブレーキングやコーナリングでは心強い味方となってくれる。
■写真下・右:シートステーは低い位置に接続され、コンパクトなバック三角を構成。フレームのなかで唯一細身といえる太さのチューブを採用している。振動吸収性と路面追従性がアップ。
■写真下・左:ヘッドチューブは上下異径。Sサイズでヘッドチューブ長が115mmと短めだ。長めのモデルが多いなか、ハンドルをしっかりと下げたい人にとっては魅力的。
■写真下・右:「アトムリンクシステム」という設計で、前三角とチェーンステーのBBシェル部分にスリーブを通して両者を接続。これにより、動力伝達性能を向上している特許技術だ。
■写真下・左:ダウンチューブは、ヘッドからBBに近づくにつれて縦方向に扁平した形状から、横方向に扁平した形状へと変化する。BBのねじれを抑え、パワーを逃がさない形状だ。
■写真下・右:リヤエンドはフルカーボン。ブランドのなかではコストパフォーマンスの高いモデルだが、細部の作りは各社の中級グレードと並ぶものとなっている。
チポッリーニ・ボンド
シマノ・105完成車価格 39万9000円
フレームセット価格 34万8000円
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
コンポーネント:シマノ・105
ホイール:シマノ・WH-R501
タイヤ:ヴィットリア・ザフィーロ2 700×23C
ハンドルバー:プロ・バイブ 7S
ステム:プロ・バイブ 7Sステム
サドル:ヴェロ
シートポスト:フレーム付属品
試乗車実測重量:8.20kg(Mサイズ、ペダルなし)
サイズ:XS、S、M、L、XL
カラー:シルバーカーボン、レッド、ホワイトシルバー、ブルー
CYCLE SPORTS.jp編集長・ナカジの試乗インプレッション
希代のイタリア人スプリンター、マリオ・チポッリーニのブランドというだけあって、フレームの剛性はかっちりしている。「アトムリンク」という独自のフレーム設計を用いたことで、BBからチェーンステーにかけてをひとつのパーツとして作っているというのが大きな特徴。実際に走ってみても、その強烈なチェーンステーの剛性を体感できる。踏み込んでいっても、しっかりと力を受け止めているなという実感が強い。それは上りでも、平地でパワーをかけているときでも。また、パンッとスピードを上げたいときでも、チェーンステーの力強さはとても存在感がある。ここまでチェーンステーを意識させるフレームはなかなかない。
BBの規格はBB386エボを搭載。ただ、完成車販売の場合はシマノ・105のクランクが搭載される。試乗車も同様の仕様であったが、それでも十分な剛性を感じたので、ちゃんとBB386エボ規格のクランクとBBを搭載した状態での性能には期待できる。シートポストはエアロ形状の専用品を使用するが、やや固定力が気になるところ。完成車販売では、ホイールにWH-R501という入門グレードのものが付いてくるが、このフレームのポテンシャルを考えると非常にもったいない。ハイクラスのホイールこそ真価を発揮するフレーム。やはりレースの相棒として候補に入ってくるバイクだ。