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地元オーストラリアのベテランが激突! ツアー・ダウンアンダー2014総集編

南半球で開催されたUCIワールドツアー初戦は、地元オーストラリア勢が激戦を繰り広げた

 

Photo: Graham Watson

地元のゲランスが僅差の勝負を制して3度目の総合優勝

2014年のUCIワールドツアー初戦であるサントス・ツアー・ダウンアンダーは、猛暑に見舞われた真夏のオーストラリアを舞台に、地元のトップ選手たちが数秒差を争う熱い闘いを繰り広げた。

今大会ですでに2度、総合優勝していたサイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ)は、ダウンアンダー開幕に先駆けて行われたオーストラリア選手権を制し、オーストラリアチャンピオンジャージを着て、オーストラリア唯一のUCIプロチームのエースとして、オーストラリアで最高峰のレースで、まだ誰も成し得ていない総合3勝目を狙っていた。

しかしゲランスは、2012年の大会で優勝したとき、スペインのアレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム)とのタイム差が0秒だったことを忘れていなかった。

 

「過去数年間、この大会は数秒差で勝敗が分かれているから、すべてのチャンスを掴まなければならない」と、彼は、集団ゴールスプリントでドイツのスーパースプリンター、アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル)を下し、初日からオークル・オレンジのリーダージャージを獲得したときに明かしていた。

アデレード郊外で競われるダウンアンダーは、丘越えが多く厳しいコースではあるが、大差は付きにくく、しかも区間順位と中間スプリントポイントにボーナスタイムがかけられていて、毎年秒差を争うレースになっている。

 

総合3勝目を狙うゲランスの前に立ちはだかったのは、2011年のツール・ド・フランスで、オーストラリアに初優勝をもたらした地元の英雄、カデル・エヴァンス(BMCレーシンクチーム)だった。

彼は4年ぶりでダウンアンダーに参加し、総合制覇を今シーズン最初の目標に掲げていた。

エヴァンスもまた、コースの性質上、大差の付きにくいダウンアンダーは自分よりもゲランスに有利であることを承知していた。

それでも彼は、第3ステージの終盤にあったコークスクリュー・ロードの上り坂でアタックし、ゲランスに15秒差を付けて区間優勝し、地元最高峰レースのリーダージャージに初めてソデを通した。

しかし、ゲランスも黙ってはいなかった。翌日はチーム一丸となってレースをコントロールし、スプリントポイントでボーナスタイムを獲得し、エヴァンスとのタイム差を7秒差にまで縮めてしまった。

そして最終決戦の舞台は、ダウンアンダーのクイーンステージであるウィルンガ・ヒルにゴールする第5ステージになった。

リーダージャージを着た36歳のエヴァンスは、けっして守りの走りはせず、公言通りウィルンガ・ヒルでみずから攻撃をしかけつづけた。

 

しかし、最終局面でエヴァンスがアタックしたとき、カウンターで飛び出したのは、もう1人のオーストラリア人、リッチー・ポート(チームスカイ)だった。

彼もまた、今年のダウンアンダーでは優勝を狙っていたが、第3ステージで遅れを取り、総合争いからは一歩後退していた。

後方からゲランスが総合3位のディエゴ・ウリッシ(ランプレ・メリダ)とともに追いついてきたとき、すでにエヴァンスの脚にはこの日の攻撃のツケが回ってきていた。

ウリッシとゲランスの2人は、区間優勝したポートより10秒遅れでゴールし、ポーナスタイムを獲得したが、エヴァンスは2人よりも4秒遅れてしまった。

 

そのわずかなタイム差と、区間順位のボーナスタイムで、エヴァンスはこの日、リーダージャージを失ってしまったのだ。

 

たった1秒差で迎えた最終日のクリテリウムに、どんでん返しは待ち受けていなかった。

 

オーストラリアの建国記念日にあたるオーストラリア・デーに、オーストラリア唯一のUCIプロチーム、オリカ・グリーンエッジは、国内最高峰のタイトルをふたたび奪還することに成功した。

 

そして33歳のゲランスは、ダウンアンダーで史上初めて3度総合優勝した選手になった。

■優勝したゲランスのコメント:「チームメートたちが素晴らしい働きをしてくれた。彼らは正しくボクを集団の前方に置き続け、トラブルから回避してくれた。ツアー・ダウンウンダーで優勝することは大変な名誉だ。それがオーストラリア・デーで、しかもオーストラリアのチームで走っていてなのだから、これ以上いいことはない」

 

グライペルが通算16勝で大会記録をさらに更新!

サントス・ツアー・ダウンアンダーでトップスプリンターの闘いを制したのは、ドイツチャンピオンのアンドレ・グライペル(ロット・ベリソル)だった。

彼は区間2勝を上げ、昨年14勝にまで塗り替えた区間優勝記録をさらに16勝にまで伸ばした。

開幕2日前に行われたピープルズ・チョイス・クラシックでは、チームメートが完璧な列車をお膳立てしたにもかかわらず、グライペルは最後のスパートで同郷のマルセル・キッテル(チームジャイアント・シマノ)にあっさり負けてしまった。

 

さらに第1ステージでも、集団ゴールスプリントで先行しながら地元のサイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ)に惜敗し、チームワークが空回りしているかに見えた。

しかし、第4ステージでは見事なスプリントで勝利を勝ち取ることができた。その日は終盤の横風で集団が分裂し、ライバルのキッテルは後続集団に取り残されてしまっていた。

グライペルはユルフン・ルーランツ(ロット・ベリソル)を発射台としてスパートし、後続に大きな差を付けて今シーズン初優勝をあげることができた。

最終日のサーキットコースのゴール勝負でも、グライペルの赤い列車は完璧に機能した。

 

その一方で、最大のライバルとなるはずのキッテルは、チームメートの後方にぴったりと付いて行くことができず、ゴールスプリントに加わることもできなかった。

昨年のツール・ド・フランスで区間優勝を競ったトップスプリンターの今シーズン最初の勝負は、31歳のグライペルに軍配が上がった。

 

サントス・ツアー・ダウンアンダー2014 個人総合最終成績

1 サイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ/オーストラリア)19時間57分35秒

2 カデル・エヴァンス(BMC/オーストラリア)+1秒

3 ディエゴ・ウリッシ(ランプレ・メリダ/イタリア)+5秒

4 リッチー・ポート(チームスカイ/オーストラリア)+10秒

5 ネイザン・ハース(ガーミン・シャープ/オーストラリア)+27秒

6 ロベルト・ヘーシンク(ベルキン/オランダ)+30秒

7 ダリル・インペイ(オリカ・グリーンエッジ/南アフリカ)+34秒

8 ゲラント・トーマス(スカイ/英国)+37秒

9 アダム・ハンセン(ロット・ベリソル/オーストラリア)+37秒

10 エゴール・シリン(カチューシャ/ロシア)+47秒

[各賞]

■スプリント賞:サイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ/オーストラリア)

■山岳賞:アダム・ハンセン(ロット・ベリソル/オーストラリア)

■新人賞:ジャック・ハイグ(ユニSA・オーストラリア/オーストラリア)

■敢闘賞:ウイリアム・クラーク(ドラパック/オーストラリア)

■チーム成績:オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)

[各ステージの優勝者]

■第1ステージ:サイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ/オーストラリア)

■第2ステージ:ディエゴ・ウリッシ(ランプレ・メリダ/イタリア)

■第3ステージ:カデル・エヴァンス(BMC/オーストラリア)

■第4ステージ:アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル/ドイツ)

■第5ステージ:リッチー・ポート(チームスカイ/オーストラリア)

■第6ステージ:アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル/ドイツ)

 

 

 

 

今季、好調なスタート!日本チャンピオン・新城幸也

 

日本チャンピオンジャージをまとった新城幸也(ヨーロッパカー)は、第1ステージから果敢にアタックを仕掛け、今季の好調ぶりを示した。

 

第6ステージ、最終日を終えて総合56位。ダウンアンダー初出場の印象を語った。

 

「最終日にして、やっとエンジンがかかった感じで調子よかったよ。 チームメイトのケビン・レザがスプリントに行くと言っていたので、アシストにまわった。 このレースは本当にチャンスがあると感じたし、今シーズンの良いスタートを切れた思う」

 

新城は翌1月27日にはチームとともにフランスに戻り、スペインのマヨルカ島でのレースに向けてコンディションを調整中。

【text&photo:Miwa IIJIMA】

 

2/14~ J SPORTS:サントス・ツアー・ダウンアンダー 放送

 

J SPORTSでは、2014年UCIワールドツアー開幕戦となる「ツアー・ダウンアンダー クラシック」をハイライトで放送する。

1月19日~26日の6日間、真夏のオーストラリアで行なわれた熱戦をお楽しみに。 

第1ステージ放送予定 2014年2月14日(金)22:30~23:00

放送予定はこちら http://www.jsports.co.jp/cycle/