グランフォンドバイク、TIME NXS
乗り手の意図をよく汲んでくれる優等生
注目してほしいのは、同社がNXSをグランフォンドバイクと呼んでいること。そもそもグランフォンドとは1200kmとブルベよりは短いものの獲得標高は数千mにも及ぶ超ハードなロングライドイベントで、発祥の地イタリアでは専門誌があるほどの人気ぶりだ。
すでにタイムでは快適性重視のフルイディティシリーズがラインナップしているが、それよりもレーシーなポジションが取れるよう設計されたのが、このNXSなのである。全6サイズのうち、S~XLのジオメトリーはトップモデルZXRSと同一とされる。
結果、快適性と走りのパフォーマンスを高次元で両立した万人向けのフレームが完成したというわけだ。部位ごとに強度をコントロールできるRTM工法や下ワンを1-1/2インチとしたクイックヘッドセットなど、独自のテクノロジーが随所に詰め込まれる。
組み合わせるコンポの違いにより、メカニカル(機械式)とエレクトリック(電動式)の2種類の仕様を設定。
なお、ハンドルとステムは別売りとなっており、価格は両仕様とも39万9000円だ。
TIME NXS
タイム・NXS
フレームセット価格 39万9000円
フレーム:カーボン
フォーク:カーボン
コンポーネント:シマノ・デュラエース9070 Di2
ホイール:カンパニョーロ・ボーラワン35TU(フロント)/同・ボーラウルトラ35TU(リヤ)
タイヤ:ハッチンソン・カーボンコンプ 700×23C
ハンドルバー:タイム・エルゴドライブ
ステム:タイム・モノリンクアルティウム
サドル:セラサンマルコ・コンコールレーシング
シートポスト:オリジナルシートポスト
試乗車実測重量:6.41kg(XSサイズ、ペダルなし)
サイズ:XXS、XS、S、M、L、XL
カラー:プラムルージュ、プラズマ
■タイム独自のクイックヘッドセットを採用。電動式はこの位置からケーブルを内蔵するのに対し、機械式はBB下にワイヤを通す。
■少数派となりつつあるBB30を採用。電動式はダウンチューブのこの位置に標準バッテリー装着用のブラインドナットを設けている。
■涙滴断面形状の専用カーボン製シートポストを付属。内部にビルトインタイプDi2とEPS V2バッテリーをレイアウトすることも可能。
■右側は縦方向に、左側は横方向にボリュームを持たせた左右非対称チェーンステー。シートステーはフルイディティと同じ形状。
大屋 雄一の試乗レポート
試乗したのは蛍光イエローの差し色が印象的なプラズマカラーのエレクトリック仕様。近づかなければロゴが識別できないステルス調のグラフィックゆえ、タイムならではのエッジを効かせた造型がより際立っている。
NXSの走りをひと言で表現するなら、「乗り手の意図をよく汲んでくれる優等生」。加速、減速、旋回といったすべての操作に対する反応が忠実で、ややもすると無味乾燥ととらえられかねないが、だからこそペダリングに意識を集中できるのだ。
感動的なのは下りのコーナーでのコントロール性能の高さだ。アッセンブルされたボーラ35の特性もあるが、高い制動力を受け止めつつラインを自在に修正できるなど、縦とねじれ方向の剛性バランスが優秀な証拠といっていい。
濡れた路面でのトラクションの抜けにくさも秀逸で、カーボンフレームの先駆者であるタイムのすべてが味わえる。
なお、乗り心地については、硬質な衝撃をまろやかにしつつも路面の状況はしっかりと伝えてくるので、安楽ではないものの快適性レベルは高い。
マスドレースからロングライドまで、本当の意味でのオールマイティに活躍してくれる優秀なフレームといえる。