純国産レーサー、トーヨー・カーボン&クロモリハイブリッドロード
金属とカーボン素材の魔術師が競演
5年近い開発期間を経て登場したこのフレームは、トップとダウンチューブにGDRと共同開発したカーボンチューブを使うのが最大の注目点。
2本のパイプにカーボン素材を用いた理由は、重量に対する剛性や強度を考えてのこと。スチールよりもメリットはあると、ビルダーの石垣鉄也氏は語る。
東レのT800カーボン素材を用いたチューブはバテッド構造を採用。フレームサイズによってもバテッドの長さや肉厚を変えたものを用意した。
さらにライダーや用途に応じてチューブの切断位置を変更し、バテッドの度合いを調整して走行距離の違いを演出するなど、きめ細かな対応も行なわれるという。
2本のカーボンチューブに対して、シートチューブとバックステーはカイセイ・アルティメットの独自スペックを使用する。
この部分をスチール素材としたのは乗り心地もそうだが、とくに大きなトルクを与えた場合、この素材が持つしなりのほうがカーボンよりも走りにいい影響を与えるからだという。
販売はGDR製カーボンフォークを装備したフルオーダーモデルのほか、レディ・メイドモデル(価格未定)も予定されている。
金属とカーボン素材の魔術師がタッグを組んで生まれた純国産フレームは、きわめて興味深い存在といえるだろう。
TOYO CARBON & CR-MO HYBRIDROAD
トーヨー・カーボン&クロモリハイブリッドロード
フレームセット価格 38万8500円
完成車参考価格 98万1750円
フレーム:カーボン&クロモリ
フォーク:カーボン
コンポーネント:シマノ・アルテグラ6870 Di2
ホイール:ゴキソ・32mm
タイヤ:コンチネンタル・グランプリ4000S 700×23C
ハンドルバー:オリジナル
ステム:オリジナル
サドル:オリジナル
シートポスト:オリジナル
試乗車実測重量:8.28kg(540サイズ、ペダルなし)
サイズ:オーダー
カラー:オーダー
■シート部はシートステーの根元がシートピンを兼ねる集合ステータイプ。東洋フレームの特徴で、リッチーを生み出す名ビルダー、トム・リッチーの影響を受けている部分だ。
■フロントフォークはGDR製をセットする。十分なボリュームを持つストレートタイプのブレードはわずかなSベンドが与えられ、乗り心地とねじれ剛性のバランスを追求する。
■ヘッドチューブ下側のベアリングをワンポイントファイブ規格として大径化し、この部分のねじれ剛性を強化。ワイヤ類はスチール素材のラグ部分からチューブ内に挿入される。
■東洋フレームの頭文字を記したショートタイプのリヤエンド。エッジはシャープに整えられ、上下ステーとの接合は美しく仕上げてある。東洋フレームの匠の技が光る。
■丸断面のダウンチューブのBB側にはGDRが東洋フレームのためにだけ供給を行なうカーボンチューブを示す、ギャランティステッカーが誇らしげに貼られている。
吉本 司の試乗レポート
走り出しは試乗車にセットされたゴキソホイールの滑らかな転がりに魅了されるが、フレームそのものに驚きはない。しかし、トルクをかけたレース的な走りをすると、じつにおもしろい。
最新カーボンバイクのような面で支える強さはないものの、フレームには絶妙な芯の強さを感じる。トルクをかけると脚にハードな印象はないが、その芯の強さが踏ん張って走りにパワーを与える。
とくに加速の中後半でバイクが押されるように走る伸びやかさを持っている。バイクのフロント部がしっかりと固められ、徐々に後ろに向かって剛性が調整され、加速すると微妙なウイップが作用して弾かれるように前に出る。
ダンシングは安定感に優れ、素直にまっすぐ進もうとするため自然にペダルにトルクをかけられるのも、適度に調整された剛性感ゆえだろう。
また、丸断面チューブのためウイップの出方が自然で、ダンシング、シッティングともにペダリングのリズムをつかみやすく、脚の疲労も抑えてくれそうだ。
振動吸収性は最新カーボンフレームのそれとは毛色が違い、適度なソリッド感がありながらも不快な振動はすばやく減衰させるのでレーサー好みといえよう。
そして、この乗り心地は、重心位置が低く安定性も非常に優れる印象を生み出し、バイクが自然にまっすぐ進み、走りのストレスを軽減してくれる。
個人的には長距離のレースなどで使ってみたい好印象の1台だ。2つの素材の競演によって独創的な走りは実現され、オーダーメイド対応も含めてきわめて付加価値の高い存在といえる。