ヘットニュースブラッド2014 ハイライト
冷たい雨のクラシック開幕戦
69回目を迎えた伝統のベルギー開幕レース、オムロープ・ヘットニュースブラッド(ヨーロッパツアー1.HC)は、まさにクラシックらしい冷たい雨の一日になった。
この日、ベルギー北部のフランダース地方は、日中の温度が6度Cという予報で、気温1度Cという極寒のコンディションで行なわれた昨年よりはマシなはずだった。しかし、終日降り続いた冷たい雨は、思いのほか選手たちの体温を奪っていた。
優勝候補の1人だった地元のトム・ボーネン(オメガファルマ・クイックステップ)が、「おそらくボクのキャリアでもっとも寒い1日だった。(吹雪に見舞われた)去年のミラノ~サンレモよりもだ」と、レース後に語るほど、その日の寒さは普通ではなかった。彼は結局この日、4分近く遅れた集団でゴールした。
多くの選手が寒さで体力を奪われ、補給することもままならない状態で走り続けていた後半戦、ゴールまで残り62kmのターイエンベルフの坂で集団から最初に仕掛けたのは、2012年にボーネンをスプリントで打ち負かして優勝したセプ・バンマルク(ベルキン)だった。
先行したバンマルクにチームメートのマールテン・ワイナンツとイアン・スタナード(スカイ)が合流したが、すぐにオメガファルマ・クイックステップが制圧した。しかし、この動きで、集団はバラバラになってしまった。
リーベルフの丘を越えた後、残り42kmで先頭からは7人の選手が抜け出して先行し、この日最後の坂だったムーレンベルフに突入した。
ここで先頭から抜け出したのは、ツアー・オブ・カタールで総合優勝して絶好調のニキ・テルプストラ(オメガファルマ・クイックステップ)と、ラルス・ボーム(ベルキン)のオランダ・コンビだった。
2km先でエドワルド・ボアソンハーゲン(スカイ)が合流し、先頭は3人になり、後続とのタイム差は1分にまで広がった。
しかし、残り23kmでボームはパンクに見舞われ、先頭から脱落してしまった。その後、この日最後の石畳区間だったランゲミュントで、後続を気にするテルプストラを出し抜いてボアソンハーゲンがアタックを試みたが、失敗に終わった。協力体制を持てなかった2人は、結局残り16.5kmで後続に捕まってしまった。
そこから飛び出したのは、スカイのスタナードだった。すぐに地元ベルギーのグレッグ・バンアーベルマート(BMC)が追いつき、先頭は2人になった。
後方ではこの日、チャンスをモノにできなかったバンマルク、テルプストラ、ボアソンハーゲンの3人が必死で追い上げたが、その差はいっこうに縮まらなかった。
スタナードとバンアーベルマートは、数10秒のタイム差を守って、ゴールのあるゲント市街地へと突入した。
降りつづく雨の中、最後はゴールスプリント勝負になり、残り300メートルからスプリントを開始したトラック経験者のスタナードを、バンアーベルマートはけっして抜き去ることはできなかった。
28歳のバンアーベルマートは、悲願のクラシック優勝まであと一歩だった。「最後の闘いの最中、ボクは本当に凍えていた。それでも自分は最高のスプリントができると思っていた。けれど彼(スタナード)はボクを出し抜いて2メートル先行した。ボクの体は、期待していたようにはもう動かなかったんだ。自分はスプリントが得意だと思っていたから、がっかりしたよ」と、彼は振り返っている。
一方、ついにクラシックタイトルを手に入れた26歳のスタナードは「後続がちょっと遅れていたのはわかっていた。だからただ、正しいプレイをすればよかった。自分がリードすれば強いと感じていたし、スプリントには自信があった」と、語っている。
スタナードは伝統あるベルギーの開幕戦で初めて優勝した英国人になった。
雨天で落車が続発!
終日雨に見舞われた今年のオムロープ・ヘットニュースブラッドでは、すべりやすくなった路面のせいで落車が続発した。
今大会を2009年に制したノルウエーチャンピオンのトール・フースホフト(BMC)は、ゴールまで残り92kmのカーブで転倒し、レースを続けることができなかった。彼は地元の病院へと搬送されて検査を受けたが、幸い骨折は見つからなかった。
今年のクラシックシーズンはまさにこの日、ベルギーで開幕したばかりなのだから、家に帰るのは早すぎる!
第69回オムロープ・ヘットニュースブラッド結果
1 イアン・スタナード(スカイ/英国)4時間49分55秒
2 グレッグ・バンアーベルマート(BMC/ベルギー)
3 エドワルド・ボアソンハーゲン(スカイ/ノルウエー)+24秒
4 セプ・バンマルク(ベルキン/ベルギー)+24秒
5 ニキ・テルプストラ(オメガファルマ・クイックステップ/オランダ)+24秒
6 ジャンピエール・ドルッケール(ワンティ・グループゴベール/ルクセンブルク)+1分34秒
7 タイラー・フィニー(BMC/米国)+1分34秒
8 ドリス・デベナインス(ジャイアント・シマノ/ベルギー)+1分34秒
9 エゴイツ・ガルシア(コフィディス/スペイン)+1分34秒
10 アルノー・デマール(FDJ.fr/フランス)+1分34秒