ピナレロ・ネオール T6【10万円台からのロードバイク・シリーズ】
スペックだけでは判断できない実力を持つフレーム
アルミ合金製のメインフレームで適度な軽さと剛性を確保し、カーボン製のフォークとシートステーが快適性を担う、というアルミ/カーボンバックフレーム。
このハイブリッド構造の出現は15年ほど前で、広めたのはイタリアのピナレロである。
90年代後半に発表されたアルミ/カーボンバックの初代プリンスは、当時としては突出した走行性能を持っていた。
当然、多くのライバルが追従し、カーボンバックはあっという間に浸透する。
ピナレロが提唱したカーボンバックという手法は、2000年代のロードバイクを新しい世代に移行させたのである。
カーボンフレーム全盛の現在だが、カーボンバックが途絶えたわけではない。ピナレロのエントリ ーモデル、ネオールT 6は、6061アルミニウムのメインフレームにピナレロの専売特許であるオンダカーボンシートステーを組み合わせたカーボンバックフレームである。
トップチューブやダウンチューブには、内側から油圧をかけて変形させるハイドロフォーミング加工が施されている。
これは、かつてはトップモデルのみに許された特別な加工法だ。 さらにピナレロは、左右非対称設計という新しい思想を取り入れた。ドライブトレインが右側にある自転車の左右バランスを整え、より精度の高いライディングを実現するためである。
伝統のカーボンバックと最新の左右非対称設計の組み合わせは、どんな走りを見せてくれるのだろうか。
PINARELLO NEOR T6
ピナレロ・ネオールティーシックス
シマノ・ソラ完成車価格 17万476円(税抜)
フレーム:アルミ+カーボン
フォーク:カーボン
コンポーネント:シマノ・ソラ
ホイール:シマノ・WH-R501
タイヤ:ヴィットリア・ザフィーロ 700×23C
ハンドルバー:モスト・イクシオンアルミ606
ステム:モスト・フォーボルツ
サドル:モスト・レオパード
シートポスト:モスト・アルミシートポスト
試乗車実測重量:9.18kg(500サイズ、ペダルなし)
サイズ:440、460、500、520、540、560
※580以上は受注発注
カラー:ホワイト×レッド、ブラック
操作系はモデルチェンジで基本性能を向上させたシマノ・ソラ。変速性能も操作感も良好。ステムやハンドルはピナレロオリジナルブランドでまとめられる
質実剛健に組まれたハンガーまわり。サイズごとにハンガー下がりを細かく調整するなど、低価格ながらジオメトリーに手抜きはない。サイズも9種類と豊富
ヘッドチューブは下側ベアリング径が 1-1/2インチ。この上下異径ヘッドとオンダフォークとの組み合わせが高いコーナリング性能の秘密だろう
大きく湾曲させることで快適性と剛性を両立させたピナレロ自慢のオンダフォーク。左右非対称設 計が採用されており、右側ブレードが太い
フロントフォークと同じく、カーボンで作られるシートステーにも左右非対称設計が取り入れられ、 右側が左より太く作られている
安井行生の試乗レポート
「ピナレロのボトムモデル」という先入観をいい意味で裏切る。
アルミならではの力強い加速には、ロードバイクを操るプリミティブな快感が詰まっている。
しかも快適性はかなり高い。ONDAフォークの形状をうまく実性能に落とし込んでいる印象だ。
ハンドリングも優秀で、高負荷コーナリングも涼しい顔でこなす。
ソラ完成車でこの価格はライバルと比べるとやや高めに思えるが、走るとフレームにコストがかかっていることがわかる。
ピナレロは、カタログ上の商品力より走りを決定するフレームの品質を重視しているのだ。
ただフレームとフォークの性能がかなり高いので、ブレーキとホイールにしわ寄せがくることがある。
「ホイールを換えれば......」とは低価格帯モデルの試乗記事の常套句だが、それを承知で言わせてもらうと、個人的にはブレーキを105グレードに、ホイールをワンランク上のものに交換したい。
このフレームには、それほどの実力がある。いいパーツを組み合わせる価値のあるエントリーモデルである。