ミヤタ・エレベーション RC 試乗レポート
スチールらしいしなりが心地よい
素材となるミヤタ独自のフォースライトNbチュービングは、エクストリームと同じ仕様。 レアメタルのニオブを添加することで強度を高めるとともに、内部にSSSTB「スパイラル・スプライン・トリプル・バテッド)と呼ばれる加工が施されている。
これはトリプルバテッドの肉厚変化に加えて、とくに剛性や強度が必要とされる軸(BBやヘッド側)に、らせん状のリブを5本配置したもの。これにより軽量化をしながらも必要な剛性を獲得し、素材特有のバネ感のある軽いペダリングフィールを最大限にする。
フレームの製作は手間のかかるフィレット溶接を駆使して、接合部は滑らかに美しい仕上がりを見せる。上位機種とは生産される工房とフレーム小物、カーボン製フォークが異なるものの、エレベーションRCは、スチールらしい繊細なフォルムや仕上げの美しさを十二分に楽しむことができる。
スペック的にもフレーム単体重量が1780g(520mmサイズ)、フォーク380gという数値は、スチールモデルとしてかなり軽量な部類。
また、チュービングと製法が同じなので、走行性能も上位モデルに迫るレベルを期待できる。
価格を身近にしながら、ミヤタスポーツのスチールフレームへの情熱を体験できる1台である。
MIYATA ELEVATION RC
フレームセット価格 18万9524円
スラム・レッド完成車価格 47万5238円
フレーム:クロモリ
フォーク:カーボン
コンポーネント:スラム・レッド
ホイール:スラム・S30 スプリント
タイヤ:ヴィットリア・ルビノプロスリック 700×23C
ハンドルバー:FSA・SL-Kカーボン
ステム:FSA・SL-K
サドル:セライタリア・SLRモノリンク
シートポスト:FSA・SL-K モノリンク
試乗車実測重量:7.53kg(520サイズ、ペダルなし)
サイズ:460、480、500、520、540、560
カラー:スカイブルー、スノーホワイト
■シートステーは上下の外径を細くしたダブルテーパー仕様。中央部分を三角断面に近い形状に成型し、さらに前三角の接合位置を低くすることで後三角の剛性が高められている。
■フロントフォークオーソドックスなベンドタイプのブレードを採用したフルカーボンモデル。さらにブレードを内側へ軽く絞り込んだ形状として乗り心地と剛性を両立する。
■ヘッドチューブは上下1-1/8インチ径のベアリングを装備するインテグラルタイプとして、ヘッド剛性が高められる。ベアリング収納部以外の外径を抑えることで軽量化も追求。
■ハンガーシェルは標準的なスレッドタイプ。丸断面チューブをフィレット仕上げで接合した美しい仕上がりが魅力。チェーンステーブリッジも装備してハンガー部剛性を高める。
■トップチューブ下側に付くダボは、レース時のゼッケンプレート取り付け用。クロモリ全盛期の実戦レーサーに見られた仕様。昔からのマニアックなファンにはうれしい工作だ。
吉本 司の試乗レポート
とにかく気持ちのいいペダリングと軽い走りが印象的だ。トルクをかけるとウイップが出たが、その戻りが早くて素直。バネ感の演出がみごとだ。
SSTBの効果を最大限にするため、あえて丸断面のチューブにしているらしいが、その狙いはこの絶妙なバネ感の演出に表れている。
これによりウイップが欠点にならず、滑らかなペダリングへとつなげられる。しかもトルク系、回転系ともになめらかなペダリングができる非常に懐の深いフレームだ。
そして肉厚な大径チューブの効果によって、パリッとしたペダリングフィールも得られる。単に脚当たりのいいしなやかなフレームではなく、反応性も満足できるレース性能も確保されている。
開発コンセプトはスチールのバネ感を生かしたヒルクライムパフォーマンスの追求とあるが、その言葉はだてじゃなかった。
試乗車にはアルミリムのエアロホイールを装備していたが、その重量も気にならない。ダンシングでもシッティングでもペダリングは軽く、カーボンフレームにひけをとらないほどの走りだ。
個人的に気になったのはハンガー下がりの寸法。やや高めの65mmという設計は、下りなどで少々腰高な感覚もあるが、慣れれば問題はない。
上りや加速の軽さを求めたモデルと考えれば納得いく設計といえる。
素材のバネ感を最大限に生かしたエレベーションRCは、レースやヒルクライムを闘える高性能を有するが、なによりの魅力は走りが楽しくなる気持ちのいいペダリングにある。