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タランスキーが逆転優勝! ドーフィネ2014 ハイライト

ツール調整レースでフルームとコンタドールが激突! 

しかし、栄冠を手にしたのは25歳の米国人だった

 

Photo: Graham Watson

最終日の逆転劇

 

ツール・ド・フランスの調整レースとなる、フランスのクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)には、今年も大勢のビッグネームが参加した。

 

開幕前からディフェンディングチャンピオンである英国のクリストファー・フルーム(スカイ)と、スペインのアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)の対決が期待され、実際に初日の個人タイムトライアルから、この2人の激しいバトルが繰り広げられた。

 

しかし、最終日のクールシュバルで栄誉あるドーフィネのマイヨ・ジョーヌにソデを通したのは、2人のうちのどちらかではなかった。

 

前日にマイヨ・ジョーヌを着たコンタドールが、フルームとの最後の闘いを演じているスキに、米国のアンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ)が運試しのような逃げを決め、みごとにスペインの王者を出し抜いてしまったのだ。

 

現在25歳のタランスキーはグランツールでトップ10に入る実力者で、昨年のパリ~ニースではリッチー・ポート(スカイ)との闘いに破れ、総合2位でレースを終えていた。彼もけっして無名の選手ではないのだが、開幕前には同郷のティージェイ・ヴァンガーデレン(BMC)のほうが注目されていた。

 

しかし、ヴァンガーデレンはコル・デュ・ベアル峠ゴールの第2ステージであっさり2分以上の遅れを取ってしまった。彼は後日、ツール・ド・ロマンディの落車で負った腰の小さな骨折を抱えて走っていたことを明かした。

 

不調のヴァンガーデレンとは対照的に、第2ステージで元気な走りを見せたのがタランスキーだった。彼はコル・デュ・ベアル峠で精鋭グループに入り、マイヨ・ジョーヌを着たフルームに戦いを挑みすらした。

 

タランスキーはフルームが区間優勝した第2ステージで12秒しか遅れず、33秒遅れの総合4位になっていた。運命の最終日の朝でも、彼は総合首位のコンタドールに39秒しか遅れていなかったのだ。

 

チームスカイ VS コンタドール

 

それはレースの定石から言えばあり得ない展開だった。マイヨ・ジョーヌのコンタドールを擁したティンコフ・サクソは、総合でたった39秒遅れのタランスキーが加わった集団を逃してしまったのだ。

 

そのときすでに、コンタドールが今年のドーフィネに万全なチームで臨んではいなかったことは明らかになっていた。フルームはいつものように、最強のチームとともにスタートし、常にアシスト陣に護られていたが、コンタドールのチームには危険な逃げを潰す力すらなかった。

 

初日の個人タイムトライアルで優勝し、最初からレースを主導する責任を負っても、フルームにはまったく何の問題もなかった。チームスカイにはもう、ツールで闘う準備もきっちりできあがっているようだった。

 

第5ステージでもコンタドールの攻撃をチーム力で押さえつけ、フルームの総合優勝は盤石だと思われた。ところがその翌日、思わぬ落とし穴がマイヨ・ジョーヌを待ち構えていた。

 

フルームは狭くうねった田舎道で前輪が溝にはまり、落車してしまったのだ。幸いレースを棄権するようなケガにはならなかったが、レース後、彼は左ヒジを縫合しなければならなかった。

 

ティンコフ・サクソは落車したフルームを出し抜くようなことはしなかったため、第5ステージでも総合成績は変わらなかった。しかし、その翌日、コンタドールは容赦しなかった。カテゴリー超級のフィノー・エモソン峠のゴールで、彼は残り2kmでアタックしたのだ。フルームはこれを追うことができず、マイヨ・ジョーヌを失った。

 

王者コンタドールが逆転劇を演じ、今年のドーフィネは幕を下ろすのだろうと誰もが確信していたのだが、最終日にはもっとドラマチックな大逆転が繰り広げられた。

 

タランスキーがいた逃げ集団とのタイム差は、ゴールまで残り22kmになってもまだ2分あり、マイヨ・ジョーヌのコンタドールは独走で追撃を開始。得意のダンシングで坂を駆け上がり、見る見るうちにタイム差を縮めていった。しかし、残り4kmでタイム差が1分になったところで、彼は追撃をやめてしまった。

 

コンタドールは前日、マイヨ・ジョーヌを獲得したときに「何が起きようと、ボクは自分の脚が日に日に調子が上がっていて満足だ。これは調整レースだからね。ボクにとってもっとも重要なのは、7月5日に自分の能力が100%になっていることだ」と、語っていた。

 

コンタドールにとっては、ドーフィネのマイヨ・ジョーヌは無理をしてまで手に入れたいものではなかったのだろう。総合2位で表彰台に上がった彼は、優勝したときと同じ笑顔だった。

 

ドーフィネでのフルームとコンタドールの闘いは、フルームの負傷で水が入ってしまったが、これで7月のツールでの闘いが楽しみになった。タランスキーのような若手選手の挑戦は、レースをさらに盛り上げてくれるだろう。

 

真のマイヨ・ジョーヌ争いは、7月5日にスタートする。

 

第66回クリテリウム・デュ・ドーフィネ結果

1 アンドリュー・タランスキー(ガーミン・シャープ/米国)31時間08分08秒

2 アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ/スペイン)+27秒

3 ユルフン・バンデンブルック(ロット・ベリソル/ベルギー)+35秒

4 ウィルコ・ケルデルマン(ベルキン/オランダ)+43秒

5 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+1分20秒

6 アダム・イエーツ(オリカ・グリーンエッジ/英国)+2分05秒

7 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+2分12秒

8 ミケル・ニエベ(スカイ/スペイン)+2分59秒

9 ダニエル・ナバロ(コフィディス/スペイン)+3分04秒

10 ヤコブ・フグルサン(アスタナ/デンマーク)+3分17秒

12 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)+4分25秒

[各賞]

■マイヨ・ベール:クリストファー・フルーム(スカイ/英国)

■マイヨ・アポワ:アレッサンドロ・デマルキ(キャノンデール/イタリア)

■マイヨ・ブラン:ウィルコ・ケルデルマン(ベルキン/オランダ)

■チーム成績:アスタナプロチーム(カザフスタン)

[各ステージの優勝者]

■第1ステージ:クリストファー・フルーム(スカイ/英国)

■第2ステージ:クリストファー・フルーム(スカイ/英国)

■第3ステージ:ニキアス・アールント(ジャイアント・シマノ/ドイツ)

■第4ステージ:ユーリ・トロフィモフ(カチューシャ/ロシア)

■第5ステージ:シモン・シュピラク(カチューシャ/スロベニア)

■第6ステージ:ヤン・バークランツ(オメガファルマ・クイックステップ/ベルギー)

■第7ステージ:リューウェ・ウエストラ(アスタナ/オランダ)

■第8ステージ:ミケル・ニエベ(スカイ/スペイン)