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MTB用コンポーネントもついに電動化 XTR Di2登場!

ロード用電動コンポーネントを、レース界のスタンダードにしたシマノが、ついにMTB用電動コンポーネント「XTR Di2」を発表した。

text●鏑木 裕 photo●シマノ

待望のMTB用Di2コンポーネント!

M9000系となる新型XTRデビューのニュースから2ヶ月。その電動変速バージョンとなるM9050系 XTRの発売が決定した。

電動XTR自体は、先代電動アルテグラ(6770系) がリリースされた頃から一部でウワサはされていた。シマノの電動コンポの生産体制が落ち着いたら、いよいよオフロード用コンポーネントに着手するのではないか・・・、技術的にはいつでも実現可能なはずだと。しかしその後ロードコンポーネントのリヤ11段化などを経て、あっというまに数年という時間が流れてしまい、残念ながらなかなか我々の前に姿を現すことはなかった。

 

その、リヤが11速化された9070系 デュラエースと6870系アルテグラ。今回発表となったM9050系XTRは、それらで培われた技術をオフロード用に再構築したものである、と言ってしまうと簡単そうだが、ロード用Di2と は異なる部分がいくつも存在する。満を持してのリリースなだけに、独自の進化を遂げているのだ。

 

2&3×11に最適化されたFDとRD

前後のディレーラーは、基本的に機械式に準じた仕様となっている。まずフロントディレーラーは、ダブル用のFD-M9070と、トリプル用のFD-M9050が用意される。

 

ただし、機械式のFD-M9000に対して、チェーンを押す力は25%向上。泥など、より過酷な環境下でも確実な変速を実現するほか、リアディレーラーとシンクロすることで、自動的にトリム操作を実施。たとえばリアがローギヤやトップギヤに入った際にも、チェーンタッチが起こらないよう、勝手に位置の微調整をしてくれる。

 

一方のリヤは、主にトリプル用を想定したロングゲージのRD-M9050-SGSと、主にダブル用を想定したミドルゲージのRD-M9050-GSの2種が用意される。

いずれも機械式のRD-M9000と同様に、チェーン暴れを防止するスタビライザーが内蔵されており、荒れた路面や段差を走行してもチェーンが上下にバタつくことが抑えられる。

 

フラットバー用のスイッチとディスプレー

まず目を引くのが、フラットハンドル用に最適化されたシフトスイッチ(SW-M9050)と、ギヤポジションやバッテリー残量を表示するディスプレー(SC-M9050)だろう。

 

類似したものとして、アルフィーネDi2用のSW-S705&SC-S705がすでに存在している。しかしアルフィーネが内装リヤ変速のみ、つまり右スイッチしか存在していないのに対して、左右のスイッチがペアになっているということがまず差異点。

 

また右スイッチのディテールに目を向ければ、シフトアップ/ダウンの各ボタン位置も、アルフィーネが並列されているのに対して、押し間違えにくいように前後にずらされている。

 

ディスプレイは、単にギヤポジションやバッテリー残量を表示するにとどまらない。シフトモード(後述するマニュアル/シンクロ)や、サスペン ションのダンパーモード(クライム/トレイル/ディセンド)までを網羅する。

 

新型外付けバッテリーとケーブル処理

ロードやシクロクロス、はたまたクロスバイクとのフレーム形状の違いから、バッテリーの積載方法もMTB用 として追加されることとなる。細身な携帯ポンプのように、ボトルケージと並列して装着可能なSM-BTC1は、フレームの前三角が小さいがゆえ、SM-BTR1が取り付けにくいという現実があるためだ。

 

また内蔵バッテリーであるSM-BTR2にしても、シートチューブ(もしくはシートピラー)内に収めることに加えて、シマノではフォークコラムへの内蔵も提唱している。

XC向けのハードテールバイクだけならロードやシクロクロス的な考え方で電動化ができそうだが、前後トラベル量大きなグラビティ系ともなるとそうはいかず、一方でシマノとしてもあらゆるジャンルのMTBを電動化させることを考慮していると言えよう。

 

バッテリーやジャンクションB、エレクトリックワイヤの内装に関しては、各自転車メー カーの今後にゆだねられる部分も大きい。ロードフレームが電動変速の登場でディテールが変化したように、MTBも 今後は同様の事象が起こるかもしれない。

 

前後変速を同調させるシンクロシフト

M9050系のXTRが他のDi2と大きく異なるのは、その変速パターンにある。ロード系と同様の完全マニュアルシフトに加え て、シンクロシフトモードが用意されているのだ。

 

シンクロシフトモードでは、右の変速スイッチだけで前後のディレーラーを操作してしまう。たとえばトップ側からギヤを軽くしていくと、途中でフロントディレーラーをインナーに落として、その分リアも小さなスプロケットに入ってしまう。ロー側からトップ側への変速も同様で、途中で勝手にアウターギヤへと変速する。

 

この“ワンハンド・オペレーション”は、段階的にギヤ比が軽く(もしくは重く)なるよう、なおかつチェーンラインが不自然にならないように計算されており、ライダーはただ何も考えず、その瞬間の「軽くしたい」「重くしたい」という本能だけで右手のスイッチを操作すればいいのだ。

 

これらの切り替えは前述のディスプレー、SC-M9050で切り替えるが、ここにあるのがリアサスの切り替え表示。これはサスペンションメーカーであるフォックス社とのコラボレーションによって生まれたもので、今後発売されるeチューブ(シマノの電動制御システムの総称)仕様のサスペンションで対応する。コンプレッション ダンパーの設定である、クライム(上り向けのロックアウトに近いモード)/トレイル(上り下りを繰り返すとき用)/ディセンド(サスを積極的に動 かす下り用)の各モードも、ここでモニタリングできるのだ。

 

シンクロは人間を越えるのか?

さて、注目のシンクロシフトはフラット区間で乗る限りは実によくできている。正直言って人間の頭や指先の感覚などより数倍賢く、しかも確実だ。

 

チェーンにねじれのストレスが掛かり、しかもギヤ板やプーリーとの摩擦抵抗が増えてしまう【インナー×トップ】や【アウター×ロー】には絶対に入らないし、一ギヤ比変化が一定になるよう、極めて違和感なく前後が変速してくれる。

 

しかもシフトアップとシフトダウンとでは変速パターンが微妙に異なっている。たとえば1段重くしたらアウターに入った場合、次に1段軽くしてもセンター(もしくはフロントダブルの 場合インナー)には落ちないのだ。微妙な斜度変化で変速しても、フロントギヤがガチャガチャなりすぎないよう工夫されている。芸が細かい。

 

ただし今回の試乗は、フィールドが平地に限られていた。果たして激上り斜面でチェーンにパンパンなテンションが掛かっている場合、さらにそこへ 泥が付着しているような環境下においてなら、どこまで違和感をキャッチするのか(もしくはしないのか)。そのあたりはいずれの機会を待つとしたい。

 

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■シマノセールス
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