フェルト・AR FRD 試乗レポート
フレーム単体で908gの重量を実現
従来機よりも直線的なフォルムとなったそのフレームは、翼断面のチューブ形状を見直したのはもちろんのこと、走行時に大きな空気抵抗となる前後のホイールまわりのレベルを、さらに低減する新 たなコンセプトが見られる。
フロント側にはヘッドチューブと一体感を増した形状で、フィンを備えたフォーククラウンを持つツインテールフォーク」を展開。一方のリヤ側はチェーンステー下にブレーキキャリパーをマウント。
さらにフィン付きの「ツインテールシートステー」、ホイール カットアウトされたシートチューブと内側に突起を与えたチェーンステーなどで構成される「ギャップシールドリアトライアングル」により空気の乱流が抑えられる。
こうした空力性能の向上に加えてAR FRDで見逃せないのは、最新のカーボン素材である「テクストリーム」を用いてきたことだ。
従来のUDカーボンは強度確保のために縦横方向2枚のカーボンを重ねる必要があったが、この新素 材はその役目を1枚のシートで行なうことが可能になり、剛性を保ちながら軽量化ができるという。
この素材と最新エアロ設計を駆使することで、AR FRDはフレーム単体で908gの重量を実現。1000gを超えるエアロロードが多いなかにあって、ほかを圧倒する軽さを手に入れている。
FELT AR FRD
フェルト・エーアールエフアールディー(フレームセット価格)32万8000円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・デュラエース9070Di 2
ホイール●シマノ・デュラエースC35
タイヤ●ヴィットリア・ディアマンテプロラジアル700×22C
ハンドルバー●3T・エルゴノヴァチームブラックシリーズ
ステム●3T・アークスチーム
サドル●プロロゴ・ゼロIIナック
シートポスト●オリジナル
試乗車実測重量●6.66kg(540サイズ、 ペダルなし)
サイズ●510、540、560
カラー●マットカーボン
一般的なタイプより大きな格子模様が特徴的なテクストリームカーボン。最新の素材とエアロフレーム設 計により、従来のARシリーズと比べて剛性が14.7%向上している。
断面形状とともにシートステー上部に小さなフィンを設けることで空気の整流を狙う。またステーのブリッジを省いたことで、乗り心地や路面追従性の向上の効果も得ている。
エアロシートポストは両側面にスリットを入れ、ボルトで左右から固 定する独創的な構造。装着位置の逆 転でシート角は72.5度と78.5度に設定でき、TTポジションまで対応
ワイドBBシェルでエアロロードの弱点となりがちな、ねじれ剛性を補完する。シートチューブとチェーンステーの内側をホイールに近づけた設計により、後輪の空力を高める
後方にフィンを大きく伸ばしたヘッドチューブ。ツインテールフォーク形状との相乗効果により、フロント部のエアロ効果を最大限にする。ワイヤ類はトップチューブより内蔵。
吉本 司の試乗レポート
扁平度の大きなチューブを多用した直線的なAR FRDのフォルムは、いかにもエアロロードらしい趣でりりしいものがある。しかしながらその走りは、 エアロロードを忘れさせるような低速からの軽快さがある。重量の軽いフレーム自体もそうだが、もっとも効果的なのはフレームの剛性レベルだろう。
チューブ肉厚に極端な薄さは感じない。オーソドックスなエアロ感のフォルムとしてはねじれ剛性はかなり高いレベルだ。 かといって高出力を与えたときに脚にストレスを得るような感覚もない。
低速から高速までつねに軽さを感じながら走れるし、ちょっとした速度・地形の 変化の踏み直しもスムーズに対応できる。
上りでも軽さは衰えないので、エアロロードだから といってハンディもないだろう。 駆動側は非常にバランスのいいレース性能が与えられている。
踏みやすい軽さがあるので、調子に乗っていいペースで踏んでいると脚にくるのは早い。やはり絶対剛性がある程度高いのはレースモデルならではだ。
縦方向の柔軟性は汎用的なレースモデルと比べると劣るが、 エアロロードとしては基準値以上。25Cのタイヤを装備すれば乗り心地の不満は一切ないだろう。
ハンドリングはエアロ形状が 影響してやや切れ込み感は強いが、レーサーらしいシャープさという範囲で片付けられる。
最新のカーボン素材とエアロテクノロジーを融合させたAR FRDは、エアロロードを感じさせない万能な駆動性能が魅力であり、価格も35万円を大きく下まわるとあって、レース派にはかなりお買い得だ。