パーリー ESX 試乗レポート
マルチな走りを追求したエアロロード
個性的なデザインで魅了するエアロロードのなかにあっても、フロントパートにこぶを与えたよう なESXの造形は際立っている。
それらは空力性能を追求しての形状だが、加えてこのモデルはエアロ化によって失われやすい快適性 にも最大の配慮がされている。
ESXで大きな要点となるのは、 特許を持つ「フルード・テール・ シェイプ」と呼ばれるチューブ。
翼断面形状の後方を内側に急激に絞り込み、後端にカムテール理論を組み合わせた独創的な断面形状 は、優れた空気抵抗を得ながらも高いねじれ剛性、さらに一般的な ロードバイクに勝る乗り心地も可能にするために考案されたものだ。
そして風洞実験における空力性能は、同社のノーマルロードであるZ5に比べると、ヨー角0~15度、時速40kmで走行した場合の出力は、 16W抑えられるという。
さらにカーボンのスペシャリストらしく、エアロロードで犠牲となりがちなフレーム重量の軽量化もESXの開発テーマのひとつであり、Sサイズのフレーム重量は950g以下に抑えられている。
空力性能と安定した制動性を両立するダイレクトマウントブレーキ、Di2内蔵バッテリー、さらにはエアロロードながら28Cサイズのタイヤを装備できる快適仕様も見逃せない。
速さを求めたエアロロードでありながら、エンデュランスライドまでマルチな走りを期待できる一台といえそうだ。
PARLEE ESX
パーリー●イーエスエックス
フレームセット価格/59万円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・デュラエース9070Di 2
ホ イール●エンヴィ・スマートエンヴィシステムDT240
タイヤ●ミシュラン・プロ4 700×23C
ハンドルバー●エンヴィ・SESエアロロードバー
ステム●エンヴィ・ロードステム
サドル●フィジーク・アリオネ
シートポスト●オリジナル
試乗車実測重量●6.77kg(Lサイズ、ペダルなし)
サイズ●S、Sw、M、Mw、ML、MLw、L、Lw、XL、XLw
カラー●ブラック
※Wの付いているサイズは、トップキャップ装備のサイズ表記になります
※インプレッション車は、市販モデルと仕様が異なる場合があります
ダウンチューブと同じ断面形状に成型されたシートポスト。セットバックは0mmと25mmが用意される。トップチューブに内蔵されたシートピンによってポストは固定される
ダウンチューブの前半分はフルード・テール・シェイプに仕上げられる。まさにエアロフィンといった形状。ダウンチューブ前半と後半で極端に形状が変わるのは珍しい
プロトタイプではフォーククラウン後方にVタイプブレーキを装備する仕様だったが、市販車では制動の安定性と整備のしやすさを考慮してダイレクトマウント方式を採用した
ダウンチューブのBB側は横方向への扁平が大きく、BBまわりはエアロというよりノーマルロードに近いフォルム。PF30対応ハ ンガーシェルによりねじれ剛性が強化される
トップチューブのヘッド側は大きくせり上がり、ヘッド部の空力向上と必要なねじれ剛性をバランスさせる。その形状にフィットする専用のトップキャップも装備されている
吉本 司の試乗レポート
フレームの前後で大きく異なるフォルムだが、それは走りにも現われる。ひと言で言うなら、フロント側は剛性が高く、リヤ側は比較的穏やかな味付けだ。
BB30を中核としてハンガーまわりにボリューム感を与えているが、上下バックステーの外径を比較的抑えているためハンガー部の剛性は硬すぎず、脚当たりのいいペダリングができる。
必要な加速にもストレスなく応じるが、とくに高出力で踏み続ける高速巡航で魅力を感じるその走りはエアロロードらしい。
また、この種のバイクとしてはリヤ側の突き上げも少ないので乗り心地はよく、快適性に配慮した設計を感じることができる。
フロントまわりは断面積が大きいために剛性が高い。それゆえに直進での安定性は高いものの、ハンドルを切るとその切れ込みはやや早い印象。
人によって好みは分かれる部分だが、個人的にはもう少しダルい味付けのほうが扱いやすいと感じた。
さらにダンシングでの走りは、上半身のしっかりしたライダーのほうが、フロント部の高剛性を生かした俊敏な加速、上りでの軽快さを楽しめるだろう。
試乗車サイズはLで自分の体格に応じたものだったが、フレックスフィットというエアロ型のトップキャップを付属したヘッドチューブ長は215mmで、やや長いと感じた。
一般的な形状の製品を装備しても189mmなので、レースライクなライダーには首下がり仕様のステムが必要だろう。
エアロロードは高速走行を意識したバイクなのだから、個人的にはMLサイズのほうがフィーリングがマッチしたかもしれない。
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