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キャニオン2015フラッグシップ エアロードCF SLXとは vol.1

近年、急成長を遂げて世界中のサイクリストから注目されるドイツのキャニオン。同社は12月1日よりキャニオンジャパンを開設することとなり、その発表に合わせてドイツ本国よりスタッフが来日。これを機にキャニオンの2015年モデルで注目の1台となるエアロードCF SLXの特徴を、同社のバイクを4台乗り継いだフリーライターの吉本司がレポート
 
text:吉本司 photo:吉田悠太

注目度急上昇のブランド



今シーズンはナイロ・キンタナのジロ・デ・イタリア制覇によって大成功を収めたキャニオン。同社は07年にプロチームのサポートを本格的に初めて以来、フィリップ・ジルベールによるクラシックレース制覇、カデル・エヴァンスによってアルカンシェルも獲得。ここ数年のプロロードレース界においてもっとも成功したロードバイクブランドの一つだ。
 
こうしたレース界での活躍による高性能の実証もさることながら、キャニオンが世界中で大きく売り上げを伸ばしているのは、これまでの自転車業界で標準となる代理店・ショップを介した販売経路とは異なる、おもにインターネットを利用したユーザーダイレクトという販売方法だ。同社は既存の販売販路で生じる中間マージンを省くことにより、ユーザーに高品質なバイクを可能な限り手ごろな価格で届けることをモットーとしている。
 
近年、日本からもこのeコマースによる販売方法を利用してバイクを購入するユーザーも増加していた。しかしながら、とくに言葉の問題による購入者や既存のユーザーを満足させるサポートができない現状を鑑みて、新たにキャニオンジャパンが設立されることとなった。
 
これによりカスタマーサービスが国内に設けられ、6年間の製品保証、30日間の返品保証、テクニカルサポート、補修パーツの調達、クラッシュリプレイスメントといった各種のサービスは、日本語でストレスなく提供されるようになる。
 
過去、筆者は専用ステムの交換などで手間を要した経験を持つだけに、キャニオンジャパンの設立はじつに喜ばしい。そして、これまで言葉の壁でキャニオンの購入をためらっていたユーザーにとってもビッグニュースといえるだろう。
 

2015年旗艦モデル「エアロードCF SLX」

 
さて、話を本題に移すと、2015年のキャニオンのロードラインナップでもっとも注目される存在といえば新型の「エアロードCF SLX」である。キャニオンは前作の「エアロードCF」で同社初のエアロロードを投入したが、今作はその第2世代となる。しかし、その内容は前作を進化させたというよりも、完全に別物になったと言える。

このバイクの開発を担当したマイケル・アドマイト氏によると、「現在、我々が持つ製品開発への情熱と姿勢、最高のテクノロジーを投入しした一台がエアロードCF SLXであり、その開発のコンセプトは、現在ラインナップする軽量モデルの『アルティメットCF SLX』とTTモデルの『スピードマックス』の性能とデザインを、高いレベルで融合させることを目指した」という。

実際にエアロードCF SLXのフレーム形状を、アルティメットCF SLX、スピードマックスと照らし合わせてみると、両者のフォルムを受け継いでいることが分かるだろう。
 
初代のエアロードではおもに翼断面形状のチューブでフレームを構成したが、今作の手法は異なる。スピードマックスに用いられるカムテールコンセプトのチューブ断面とした独自設計の「トライデント」をベースにしながら、ロード用に最適化した新形状の「トライデント2.0」が用いられている。具体的には、トライデントよりもチューブ断面を幅広く設計することで、エアロダイナミクスとフレーム剛性の向上が狙われている。
 
エアロ効果について、チューブ後端を流れる空気が整流されたCFD(計算流体力学)の画像を公開するメーカーもあるが、アドマイト氏はそうした手法はマーケティングによるものだと指摘する。UCIルールで定められた3:1(縦:横)のチューブ断面形状では、その後端で起こる空気の乱流を完全に整えることはできないからだ。
 
したがってエアロードCF SLXではその現実を受け入れつつも、チューブ後端で発生する乱流を可能な限り最小限に整えるためのチューブ&フレーム形状としている。キャニオンが今回のプレゼンテーションで公開したエアロードCF SLXのCFDの画像は乱流の生じたものだが、しかしながらその乱流幅は抑えられており、これが空気抵抗の削減に効果を発揮している。
 
このように包み隠すことなく真実の性能を公開してしまうところは、キャニオンの物作りに対する真面目さといえるだろう。
 
 
今作ではフレーム単体としてではなく、バイクとしてトータルのエアロダイナミクスの追求も大きなテーマとなっている。
 
その一つが専用設計されたカーボン製のハンドル&ステム「エアロコックピットCF」だ。アップバー部分を扁平形状として、ステムはトップチューブの横幅に一致するようにデザイン、シマノ製電動変速のジャンクションはステム内部に収納可能される。
 
さらにアワーグラス型に成形されたヘッドチューブにより、走行時に大きな影響を及ぼすフロント周りの空力性能が追求されている。
 
 
前後のブレーキはシマノ製のダイレクトマウントを採用する。その取り付け部はブレーキ本体の形状に沿ったデザインにするなど、細かな作り込みが見られる。
 
シートポストもトライデント2.0に合致する専用品で、可能な限りパーツを専用化することで高度なエアロダイナミクスを追求している。
 
これらの工夫によってエアロードCF SLXは、前作のエアロードに対して時速45kmで走行した場合に13.5ワット分に相当する空気抵抗の削減が可能となり、1時間の走行では約30秒のタイムアドバンテージを生むことができるという(新旧ともにジップ・404ファイアークレストを装備して計測・比較)。
 
またエアロダイナミクスの大幅な向上とともに、フレーム剛性を増しながら150gの軽量化(フレーム単体で980gの重量)を達成しているのも見逃せない。こうしてドラステックに変化を遂げたエアロードCF SLXは、形状だけでなく、すべての面で前代のエアロードCFから大きな進化を遂げており、そのパフォーマンスの高さは今年のツール・ド・フランス2勝で証明されている。
 
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