フォーカス・イザルコマックス3.0 試乗レポート
全方位に対応できる軽量レーサー
一新したフレームは軽量化を大きなテーマとし、単体で750g(56サイズ)という超軽量を実現している。
軽量化と剛性を両立するためメインフレームは、大径肉薄なチュービングが用いられる。 そして、とくに剛性が必要とされるヘッド部は、ブーストボックスと呼ばれる箱形の形状を取り入れ 断面積を増しているのが特徴的だ。
ボリュームのあるメインフレー ムに対してフロントフォークとバックステーは、その細さが際立っ ている。シートステーは定石ともいえる作りだが、フロントフォークのフォークブレードの細さは、ひと昔前のカーボンフォークを思い起こさせる。
しかも重量は295gという超軽量に仕上げられており、剛性面は同社の計測によると55 / Nmという高レベルを実現した自慢のフォークだ。
細部に目を向けると、変速ワイヤリードは軽量化のためにフレームと一体化したタイプ。このご時 世に機械式専用というのは、軽量化への大胆な割り切りといえよう(電動対応フレームは別途用意)。
また、フレームはサイズによってメインチューブの外径を変えて剛性を適正化する、独自の「SS PS」構造を採用するなど、精巧な作りも展開されている。
FOCUS IZALCO MAX 3.0
フォーカス・イザルコマックス3.0
スラム・レッド完成車 84万円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●スラム・レッド
ホイール●フルク ラム・レーシングゼロ
タイヤ●シュワルベ・ワン700×23C
ハンドルバー●フィジーク・シラー ノR3
ステム●コンセプト・PXカーボン
サドル●フィジーク・アリオネキウム
シートポスト● コンセプト・CPX-カーボン
試乗車実測重量●6.25kg(520サイズ、ペダルなし)
サイズ● 480、500、520、540、560mm
カラー●カーボン×イエロー
※インプレッション車は、市販モデルと仕様が異なる場合があります
前作から形状を変えてシンプルな2本式となったシートステー。全体的に細身の印象で、上部は横扁平とし、リヤエンド側は丸断面に成型して快適性と剛性をバランスしている
クラウン部はヘッドチューブに合 わせてボリュームが与えられるものの、ブレードは一気に細くなるきわめてユニークなフォーク形状。ブレ ードはごくわずかにベンドしている
ドイツのアクロス社のヘッド小物を採用する。上下のヘッド小物がスライドするうす式の構造により、一般的なアヘッドタイプにあるアンカーキットを省略して軽量化している
プレスフィット30規格のハンガーシェルは カーボン製で軽量化。各チューブを面一でシェルに接続し、チェーンステーに後方側もボリュームを与えて剛性を追求している
剛性を高めるために、箱形に成型された「ブ ーストボックス」と呼ばれるヘッドチューブ。 テーパードヘッド構造を採用して、ロワーベアリング径は1-1/4インチに設計される
吉本 司の試乗レポート
前後フォークの際立った細さ、 一見するとエンデュランス系とも思えるルックスだが、その走りはプロチームのAG2Rを支えるとおり、高性能な軽量レーサーに仕上げられている。
750gという軽さをダイレクトに体感できる。いや、それ以上にシャープな運動性能を持つようにも思える。
出足は軽量レーサーらしいみごとな鋭さ。しかも軽量なのにヤワな感覚を見せない。そこはドイツブランドらしく、大柄なゲルマン系の人種を意識しての剛性感だろう。
したがって単なる軽いだけのバイクではなく、強さもあわせ持っている。反応性はとてもよく、ペダルにトルクを与えた分だけ前に進む感覚が強い。平地でのスプリント的な場面から、大トルクを持続する走りまで、そつなく高レベルでこなす。
個人的には上りでとてもよく走ると感じた。重量的な軽さもその印象に貢献しているとは思うが、剛性のバランス感がいい。
ダンシングではフォークが突っ張らず、バイクを軽くスムーズ に左右へと動かせるので、振りが軽くペダリングの軽さと相まって、こう配変化やスピード変化にも楽に対応できる。
か細くて剛性を疑いたくなるフロントフォークだが、その心配は無用。十分な剛性だ。うまいと思わせるのは、わずかにブ レードを曲げたこと。これが突っ張り感を出さず、コーナリングでもタイヤの接地感を失うこ となく、安定感のあるコーナリ ングに結びつけてる。
ハンドリングもニュートラルで乗車感覚に腰高感はないので、素直に走らせることのできるオールラウンドな軽量バイクといえる。