スペシャライズド・S-ワークスアレー 試乗レポート
アルミフレームの極限性能を目指したレーシングモデル
注目すべきはヘッドまわりで、大きな応力を受けるこの部分には剛性や耐久性を高める新技術が投入された。一般的なフレームはチューブを単純に溶接して製作するが、Sワークスアレーでは液圧成型によりヘッドチューブとトップ&ダウンチューブの前端をあらかじめ成型し、そこに各チューブをつないでいる。
さらにこの部分の溶接は「ダルージオ・スマートウェルド」という同社が特許を持つ工法を用いる。これは接合するチューブの切断面を内側に丸め上げて面を作り、その面同士を溶接で埋める手法だ。
ちなみにヘッド部以外は一般的な溶接法だが、それでもTig溶接ビード痕の目立たない美しい仕上げは手の込んだ仕事といえる。
アルミフレームの課題とされる振動吸収性の低さについては、ターマック譲りのアーチ形トップチューブと外径を抑えたチューブをベンド加工駆使したバックステーによって解消を試みている。
そのほかセラミックスピード製のベアリングを搭載したBB部、軽量化に貢献するアノダイズド塗装など、高性能の追求は徹底的に行なわれる。自転車マニア集団のスペシャライズドらしい究極のア ルミフレームといえるだろう。
S-WORKS ALLEZ
スペシャライズド●エスワークスアレー
シマノ・デュラエース9000完成車 66万8571円(税抜)
フレーム●アルミ
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・デュラエース9000
ホイール ●ロヴァール・ラピーデCLX40
タイヤ●Sワークス・ターボ700×24C
ハンドルバー●Sワー クス・ターマック FACTカーボン
ステム●Sワークス・SL
サドル●トゥーペプロ・カーボン
シートポスト●Sワークス・カーボン
試乗車実測重量●6.58kg(56サイズ、ペダルなし)
サイズ●490、520、540、560
カラー●デュアルアノブラックシルバーレッド
横方向に扁平加工された薄型のシートステーが乗り心地を高める。メインフレームに対して、トップチューブの横幅に合わせて幅広に接合することでねじれ剛性を高めている
変速ワイヤを収納する小物部分は、フレームへの固定をリベットではなく溶接式とすることで最小の大きさを実現して軽量化を図る。接合部も非常にきれいに仕上げられている。
スマートウェルドのヘッドチューブまわり。溶接のビード痕もほとん ど見えない滑らかな仕上げだ。テーパードヘッドのロワーベアリングは、ターマックSL4と同じ1-3/8インチ
ハンガーシェルはワイドタイプのBB386規格。ダウンチューブの外径に比べて、チェーンステーはかなりサイズを抑えているのがわかる。ハンガー部の微調整に貢献する。
ハイドロフォーミングによってトップチューブは、ターマックSL4のように大きく横扁平したアーチシェイプとして乗り心地の向上を図る。ブレーキワイヤは内蔵式を採用する
吉本 司の試乗レポート
カーボンフレームとは違った、 密度感のあるペダリングフィールから繰り出される鋭い加速性能。そして切れ味抜群のハンドリング。アルミのよさを最大限に生かしたレーシングモデルだ。
加速の出足はSワークスター マックSL4に少し及ばないとはいえ、全体的な駆動性能はトップクラス。スプリントから上りまでマルチにこなせ、本格派のレーサーでも頼りになるだろう。
シャープな加速はヘッドからハンガーまわりの高剛性によるものなのだが、扱いにくさはない。とくに効いているのがバックステーの作りだ。
メインフレームのボリューム感からすると、チェーンステーの外径はかなり細め。これがパ ワーラインの過剛性をある程度抑制している。おそらくもっと外径が大きいと、加速のシャープさは演出されても脚への負担 は大きくなるに違いない。
そしてチェーンステーも含めてベンドしたシートステーの効果もあって、リヤ側の突き上げ感は予想よりマイルド。一方のフロント側はやや突き上げ感はあるものの、そこは鋭いハンドリングやダンシングでの優れた加速性をもたらすフロント剛性を考えれば納得できる。
感心させられるのは、フレー ムとホイールのマッチング。くせのないロヴァールのホイール、 グリップ感と転がり抵抗の軽さを上手にバランスさせたタイヤは、フレームの乗り心地や剛性の尖った部分をうまくならして扱いやすさを演出しているように感じる。
完成車販売のモデルとしてトータルで性能を煮詰めているのも、大手メーカーらしい見事なアドバンテージだ。