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ツール・ド・フランス2015コース発表

来年はクライマー向きの山岳コースだが、オランダのユトレヒトで開幕してウイの激坂ゴールや石畳も登場!

 

Photo: Graham Watson / Map: ASO

TTが短く、クライマー向きのコース

来年のツール・ド・フランスのコースが、10月22日にパリのパレ・ド・コングレで発表された。

 

発表会には今年の優勝者であるイタリアのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)、2011年優勝者のオーストラリアのカデル・エヴァンス(BMC)、今年区間4勝を上げたドイツのマルセル・キッテル(ジャイアント・シマノ)らが招待された。

 

第102回大会は、来年7月4日にオランダのユトレヒトで開幕する。ツールが国外で開幕するのは12回目で、オランダからはその丁度半分の6回目になる。ユトレヒトはツールが初めて訪れる街で、ミッフィーの原作者、ディック・ブルーナの故郷として有名だ。

 

初日は3年ぶりで個人タイムトライアルが競われ、TTスペシャリストにマイヨ・ジョーヌを獲得するチャンスがまた巡ってくる。しかし来年は、この初日に行われる14kmの個人TTが唯一の個人TTになる。

 

コースは反時計回りで、2週目の前半にピレネー山脈で3区間を競い、最終週はアルプス山脈で4日連続の山岳ステージがある。パリ到着の前日には、ツールを象徴するアルプ・デュエズ区間が設定された。

 

山岳ステージは7区間で、そのうち5区間が頂上ゴール。3週間で26ヶ所の峠を上る。ピレネーではスキーリゾート地のラ・ピエール・サン・マルタン(標高1610メートル)が初めてゴールになる。

 

後半戦の山岳ステージが厳しく、個人タイムトライアルが少ない来年のコースにクライマーたちは喜んでいるだろうが、序盤にはトリッキーな区間もあり、最初から気が抜けない展開になるだろう。

 

とくに第9ステージに設定されている28kmのチームタイムトライアルは、クライマーにとっては難所になる。通常チームタイムトライアルは序盤に設定されるものだが、来年は2度目の日曜日に行われる。戦況によっては、それまでの8日間にチームメートを失っているチームも出てくるはずだ。

 

スプリンター向きの平坦ステージは9区間。来年はポイント賞のポイント配分が変更になり、区間1位で獲得できるポイントが45ポイントから50ポイントに増えた。区間優勝数が多ければ、マイヨ・ベール獲得も有利になるだろう。

 

3週間で21区間を競い、総距離は3344kmになる。マイヨ・ジョーヌは来年もル・コック・スポルティフ社製で、シャンゼリゼ大通りがツールの最終ゴール地になって40年目の記念として、前面に凱旋門のイラストが入ったデザインになっている。

ウイの激坂ゴールと北フランスの石畳

来年のツールはグラン・デパールのオランダからフランスへと移動する途中で、クラシックの聖地ベルギーを通過するため、特別な2ステージが用意された。

 

第3ステージはオランダ国境に近い北部のアントワープをスタートし、南部ワロン地方のウイにゴールするが、最後はアルデンヌ・クラシックのフレッシュ・ワロンヌでおなじみの“ウイの激坂”がゴールになる。

壁の異名を持つ“ウイの激坂”は全長1kmに満たないが、最大勾配19%という難所で、下手なクルマではエンストしてしまうような坂だ。

 

このステージはアルデンヌ・クラシックを得意とするフィリップ・ジルベール(BMC)やアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)と言った選手が狙ってくるに違いない。

 

その翌日は、ベルギーのスランから国境を越えてフランス北部のカンブレにゴールする、全長221kmで来年最長区間の第4ステージが行われるが、コースにはパリ~ルーベで使用される石畳セクションが設定されている。

 

この“ミニ・パリ~ルーベ区間”は今年のツールでも設定され、雨天となってまさに北の地獄となってしまった。落車ですべてを失う選手もいれば、石畳で大ブレーキとなり、総合争いで大きく遅れる選手も出てしまうだろう。

 

しかも来年は、今年よりも石畳セクションの総距離が長くなっている。主催紙レキップによれば、ツールの石畳は2010年に13.2km、今年は13kmだったが、来年は13.3kmだ。

 

北フランスでの石畳区間の後は、西に向かって移動し、スプリンター向きの平坦区間がつづく。しかし、自転車競技がとくに盛んなブルターニュ地方では、もう一つの壁ゴールが設定されている。

 

第8ステージは“ブルターニュのアルプ・デュエズ”と呼ばれているミュール・ド・ブルターニュの坂がゴールになる。最大勾配が15%と言うこの坂は、2011年のツールでゴールになり、カデル・エヴァンス(BMC)が小集団でのゴールスプリントでアルベルト・コンタドールを下して優勝した場所だ。

 

オランダの風、石畳区間、そして2つの壁ゴールで生き残った選手たちは、ブルターニュ地方で競われる第9ステージのチームタイムトライアルで前半戦を締めくくる。

ピレネーとアルプスで7つの山岳ステージ

チームタイムトライアルの後は、いっきにフランス南部のピレネーにまで移動する。そして最初の休養日のあとには、ピレネー山岳3連戦が待ち構えている。

 

初日の第10ステージは、ツール初登場のラ・ピエール・サン・マルタンの頂上ゴール。2日目の第11ステージは、アスパン峠とツールマレー峠を越える。

 

そして最終日の第12ステージは、3つの峠を越えた後、標高1780メートルのプラトー・ド・ベイユにゴールするピレネー最大の難所区間だ。

 

ピレネーとアルプスの間には中央山塊を通過するが、ここで休むヒマはない。第14ステージにはマンドの上りゴールが設定された。

 

ゴール手前のクロワ・ヌーヴ峠は、1995年の革命記念日に200kmを逃げ切って区間優勝した偉業にちなみ、“ローラン・ジャラベールの登坂”と名付けられている。

 

マンドは2010年のツールでもゴールになり、その時はスペインのホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)が、コンタドールとの一騎打ちのゴール勝負を制して区間優勝している。

2度目の休養日のあと、最終週にはアルプス山岳区間が4日間つづく。

 

初日の第17ステージは、コル・サン・ミシェル峠とアロス峠を越えたあと、標高1620メートルのプラ・ルー山頂にゴールする。

 

アルプス3日目の第19ステージは、3つの峠を越えた後、標高1705メートルのトゥスイール山にゴールする。この山では、2012年にピエール・ロラン(ヨーロッパカー)が優勝した。

 

ツール最終日前日は、標高1850メートルのアルプ・デュエズにゴールする区間が設定されているが、この日は序盤からテレグラフ峠とガリビエ峠も越えなければならない厳しいステージだ。21ヶ所のつづら折りのカーブで、来年はどんなドラマが生まれるのか楽しみだ。

 

 

スペインのアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)はチーム発表で「ボクはこのツールが好きだ。過去数年よりもハードで、ジロ・デ・イタリアから十分に回復することをボクに要求するだろう。けれどボクは完全に自分自身を準備するつもりさ」と、語っている。

 

昨年の総合優勝者である英国のクリストファー・フルーム(チームスカイ)は、自身の公式サイトで来年のツールに出場するかどうかは確実ではないと発表した。

 

「どのグランツールに参加するかを確約する前に、チームとボクは慎重に考慮しなければならないだろう。ボクはとてもバランスの取れたGCライダーなので、60kmという長い距離のTTと、タフな頂上ゴールが含まれていて、バランスが取れたジロが自分にとても向いていると思う」と、フルームは言っている。

 

来年はディフェンディングチャンピオンとなるニーバリは、地元イタリアのガゼッタ・デッロ・スポルト紙で「このツールはすごく好きだ。最初の一週間は風と坂と石畳でとても神経質なものになる。そして山がレースを決定づけるだろう。プラトー・ド・ベイユとアルプ・デュエズが気に入った。ジロとツールを両方勝つのは可能だ」と、語っている。

ツール・ド・フランス2015全日程

7月4日(土) 第1ステージ[ユトレヒト(オランダ)~ユトレヒト(オランダ) 14km 個人TT]

7月5日(日) 第2ステージ[ユトレヒト(オランダ)~ゼーラント(オランダ) 166km]

7月6日(月) 第3ステージ[アントワープ(ベルギー)~ウイ(ベルギー) 154km △]

7月7日(火) 第4ステージ[スラン(ベルギー)~カンブレ 221km ■]

7月8日(水) 第5ステージ[アラス~アミアン・メトロポール 189km]

7月9日(木) 第6ステージ[アッブビール~ル・アーブル 191km]

7月10日(金) 第7ステージ[リバロ~フジェール 190km]

7月11日(土) 第8ステージ[レンヌ~ミュール・ド・ブルターニュ 179km △]

7月12日(日) 第9ステージ[バンヌ~プリュムレック 28km チームTT]

7月13日(月) 休養日

7月14日(火) 第10ステージ[タルブ~ラ・ピエール・サン・マルタン 167km ▲▲△]

7月15日(水) 第11ステージ[ポー~コートゥレ/バレー・ド・サン・サバン 188km ▲▲▲]

7月16日(木) 第12ステージ[ランヌムザン~プラトー・ド・ベイユ 195km ▲▲▲△]

7月17日(金) 第13ステージ[ミュレ~ロデーズ 200km]

7月18日(土) 第14ステージ[ロデーズ~マンド 178km △]

7月19日(日) 第15ステージ[マンド~バランス 182km]

7月20日(月) 第16ステージ[ブール・ド・ペアージュ~ギャップ 201km]

7月21日(火) 休養日

7月22日(水) 第17ステージ[ディーニュ・レ・バン~プラ・ルー 161km ▲▲▲△]

7月23日(木) 第18ステージ[ギャップ~サン・ジャン・ド・モーリエンヌ 185km ▲▲▲]

7月24日(金) 第19ステージ[サン・ジャン・ド・モーリエンヌ~トゥスイール/レ・シベル 138km ▲▲▲△]

7月25日(土) 第20ステージ[モダーヌ・バルフレージュ~アルプ・デュエズ 110km ▲▲▲△]

7月26日(日) 第21ステージ[セーブル/グラン・パリ・セーヌ・ウエスト~パリ・シャンゼリゼ 107km]

 

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