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ケモ・KE-R8 5KS 試乗レポート

スイスのカーボンフレームメーカー、ケモ。ブルターニュセシュが2014年のツール・ド・フランスに参戦したことで同社の存在を初めて知ったサイクリストは、決して少なくないだろう。日本での認知度はまだ低い新興ブランドだがカーボンテクノロジーにおいて数年のキャリアを持っている。

 

text:吉本司 photo:吉田悠太

乗り心地に優れる軽量オールラウンダー

 

「ケモ」というブランドを起こしたコマリ兄弟は、 イタリアのクォータを起こしたメンバーの中核的存在。  そんなケモのラインナップにおいてツールを走ったフラッグシップが、この「KE R8 5KS」だ。 

 

まず最大の特徴となるのは、カーボン素材に話題の「テクストリーム」を採用したこと。スウェーデンのオクスイオン社が開発したこの素材は、従来のUDカーボンに比べてレジンの使用量を20~30% 削減できるという。  

 

そして、このカーボン素材の特性を生かしてモノコック構造で作られたKER8 5KSは、フレーム単体重量で760gという軽さを実現している。 フレームの作りはテーパードヘッドやPFのハンガーシェルといったトレンドを抑えつつも、派手なギミックが見られないのは、 軽量化はもちろんのことだが実戦を重んじた仕様といえる。  

 

メーカーではヒルクライムからロードレース、グランフォンドに至るまで多方面なライディングシーン、さらには脚質に順応する性能を目指したということだが、堅実な作りはそれ故なのだろう。

 

KEMO KE-R8 5KS

 

ケモ・KE-R8 5KS

フレームセット価格/40万円(税抜) 

シマノ・アルテグラ6800完成車価格/51万円~53万4300円(税抜) シマノ・デュラエース9000

完成車価格/61万9200円~79万2800円(税抜)

 

フレーム●カーボン 

フォーク●カーボン 

コンポーネント●シマノ・デュラエース9000 

ホイール●シマノ・WH-9000 C-35CL 

タイヤ●コンチネンタル・グランプリ4000S2 

ハンドルバー●FSA・K-フ ォースカーボン 

ステム●FSA・OS99-CSI31 

サドル●プロロゴ・スクラッチプロ134ナックCPC 

シートポスト●オリジナル 

試乗車実測重量●6.77kg(Lサイズ、ペダルなし) 

サイズ●XXS、XS、S、 M、L、XL 

カラー●カーボンホワイト

 

※インプレッション車は市販モデルと仕様が異なる場合があります

 

 

ハンガー部はダウンチューブと一体化させるというよりも、とくにこのエリアだけに大きく断面積を与えた形状。過剛性を防いで、脚への負担を抑えたペダリング性能を追求

 

 

 

フロントフォークは前後に幅を持たせたクラウン部によって十分なボリュームを確保してねじれ剛性を高めつつ、わずかにベンドしたブレードを組み合わせて快適性を両立する

 

 

編み目の大きなテクストスーパーライトリームカーボン。従来の素材に比べて肉薄で、なおかつ柔軟なため複雑な形状の箇所でもシワが出にくく、成型精度も向上できるという

 

 

角形断面のチェーンステーを使用する。タイヤとのタイトなクリアランスを見てもわかるが、とくに高い剛性を必要とするBB側は、縦横ともに大きなボリュームが与えられる

 

 

 

2本タイプのシートステーは、細身にして軽く弓状のラインを描き、 形状面からも振動吸収性を高めている。フレーム前三角との交点は断面積を上げて、ねじれ剛性を高める

 

吉本 司の試乗レポート

 

ケモの創業者はクォータの設計などを行なっていたというが、それもあってか KE-R85KSの一部の作りは、どことなくクォータに似ている。最新のカーボン素材を使用した軽量車とあって、試乗前はパリパリの踏み味を想像したのだが、そうしたものとは毛色の違う走行感覚がある。  

 

軽量フレームの場合、剛性を確保するために振動吸収性に際立つことは少ないが、KE-R85KSは違う。アッパーラインの縦方向への柔軟性や、フレーム全体で路面からの振動を吸収してくれる感覚がある。とくにバック側のレベルはコンフォートロードに迫るレベルといえるだろう。

 

したがって、きわめて滑らかに走る印象が強い。重量の軽さは、低速時の出足の軽さに感じられる。フレーム全体の剛性はメリハリのあるもので、ダウンチューブとチェーンステー中ほどの良好なウイップを、加速につなげて滑らかに進ませる。不足のないハンガー横剛性を持つが、力任せにガツガツ踏むというより、一定トルクの走りのほうが走りに力強さが感じられる。高トルクの等速巡航では滑らかに進み、速度の維持性に優れている。

 

上りも車重の軽さを生かし、回転型のシッティングでよく進む。ダンシングでは、しっかりした前まわりの剛性と若干切れ込みの早いハンドリングによってバイクの振りは軽く、ペダリング との同調性にも違和感はなく走りは軽い。ハンドリングはやや切れ込み感があり、大味な印象もあるが慣れの範ちゅうにある。 

 

走りの強烈なインパクトといった面を出すよりも、乗り心地、加速性、軽さのバランスを図ったモデル。開発コンセプトどおりオールラウンドな軽量車といえるだろう。

 

問い合わせ先

塩野自転車スポーツ事業部
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