トピックス

雨のお台場でマクドナルドが連覇! シクロクロス東京2015

初代王者と前年度王者の闘いになった今年のシクロクロス東京・エリート男子。冷たい雨にもかかわらず、大勢の観客が熱戦を見守った
 

米国のマクドナルドが今年も圧勝!

4年目を迎えたシクロクロス東京が、2月7日、8日の週末にお台場海浜公園(東京都港区)で開催された。今年も人気漫画『弱虫ペダル』とコラボレーションし、大勢の観客がお台場の会場に集まった。
 
2日目はお昼前から冷たい雨が降り始め、午後に行なわれた女子(CL1)とエリート男子のレースは走るにも観戦するにも厳しいコンディションになったが、それでも熱心なシクロクロスファンは会場にとどまり、熱い声援を送っていた。

メインレースのエリート男子には28選手が参戦。2012年の第1回大会で初代王者になったベルギーのベン・ベルデンが3年ぶりで来日し、新しくスポンサーになったWカップの真紅のジャージにゼッケン1を付けてスタートラインに並んだ。
 
その隣には、ディフェンディングチャンピオンである米国のザック・マクドナルド(サイクロクロス・プロジェクト2015)が立っていた。彼は1月中旬に開催された米国選手権で3位になり、ターボル世界選にも参加していた。
 
レースは予想どおり、大ベテランのベルデンと若手成長株のマクドナルドの闘いになった。しかし、勝負は意外にも早く決着がついてしまった。スタートから先頭に立ったマクドナルドをベルデンがマークする形になったのだが、すぐに2人の間にはタイム差がつき始めたのだ。
 
「砂浜ではベンの方が速いが、林の中ではボクの方が速かったからだ」と、マクドナルドがレース後に分析していたように、ベルデンは雨で滑りやすくなっていたダートで思うような走りができずに後れを取っていた。
しかし、砂浜でもマクドナルドは速かった。今年は直線が短くなり、クネクネと曲がったエリアやYの字を2つつなげたような特殊なエリアが加えられ、自転車を降りて走らなければならない時間が多くなっていたのだが、彼のスピードは決して落ちなかった。
 
砂地獄で有名なベルギーのコクセイドで優勝した経験のあるベルデンでさえ、今年のサンド・エリアには手こずっていた。「3年前よりもコースの難易度は上がっていた」と、彼はレース後に振り返っていた。
 
レースは半分が終わった時点で、1位のマクドナルドと2位のベルデンには1分30秒以上のタイム差が付き、よほどのアクシデントがない限りマクドナルドの連覇は確実になってしまった。
 
そこで観客の注目は、竹之内悠(ベランクラシック・エコイ)と山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)の3位争いに集まった。竹之内は脚の肉離れというハンデを抱えての参戦だったが、日本チャンピオンとしての意地があった。
 
一方の山本は今シーズンでの引退が決まっていて、シクロクロス東京は現役最後のビッグレースだった。沿道には大勢の仲間やファンが駆けつけ、大きな声援が彼の背中を押し続けた。2人の死闘は最終周回まで続いた。
 
冷たい雨と、泥と、砂と闘った1時間の終わりに、マクドナルドは昨年と同じように沿道の観客とタッチして勝利の喜びを分かち合い、フィニッシュラインを通過した。ベルデンは1分半遅れの2位でゴールしたが、39歳という年齢を考えれば十分な結果だった。
 
そして3位の選手がホームストレートに戻ってくるのを、誰もが固唾を呑んで見守った。現れたのは、弱虫ペダルのジャージを着た山本。彼は竹之内との死闘を制し、最後の晴れ舞台で表彰台に上がることができたのだ。
 
勇者たちの熱い闘いを祝福するように、表彰式が始まる頃には雨は上がっていた。お台場という東京の中心部で開催される唯一のシクロクロス大会は、来年5年目を迎える。
 
昨年は大雪、そして今年は雨天に見舞われたが、どんな気象条件であってもシクロクロスファンの足が遠のくことはないことは実証された。来年はもっとパワーアップして、さらなる成長を見せてほしい。
 
[エリート男子結果/11周]
1 ザック・マクドナルド(サイクロクロス・プロジェクト2015/米国)1時間00分21秒
2 ベン・ベルデン(Wカップ/ベルギー)
3 山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム/日本)
4 竹之内悠(ベランクラシック・イコイ/日本)
5 ティム・ジョンソン(キャノンデール pb cyclocrossWorld.com/米国)
6 前田公平(ビオレーサー/日本)
7 門田基志(チームジャイアント/日本)
8 ティム・アレン(フィードバック・スポーツ/
9 小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム/日本)
10 濱由崇(スピードワーゲンシクロクロスチーム/日本)

★★★優勝したザックにちょこっと独占インタビュー★★★

Q:今シーズンはどうだった?
 
アップダウンのあるシーズンだったけれど、東京でいい終わり方ができたから幸せだよ。今シーズンは2つのチームに所属していた。最初のチームはシーズン途中で財政難になってしまったからだ。
 
今サポートしてくれているサイクロクロスプロジェクトはユースやジュニアを育成していて、無料のクリニックを開いたりしている。米国でもっとたくさんの子供たちにレースをして欲しいんだ。
 
でも、来シーズンはもっといい契約が取れればいいなあと思っている。どこかのファクトリーチームに入りたい。それにもっと国内でのサポートが受けられることを望んでいる。
 
Q:大学にはあと何年通う?
 
それは契約次第。それによって1年間にどれくらいレースを走るか、どれくらい学校に行くかの配分が変わるからだ。
 
Q:野辺山も走っているけれど、どちらのコースが好き?
 
お台場の方がずっと好きだよ。野辺山のコースはランニングがとてもヘビーでゆっくりだ。一歩一歩が泥に足を取られ、走り続けるとものすごくエネルギーを消耗する。
 
今日のランニングは雨でちょっとキツくなったがとても速かった。お台場では平地を走っているけれど、野辺山ではアップヒルを走っているみたいなんだよ。それが2つのレースの大きな違いだ。野辺山のランニングは本当にキツイんだ。
 
Q:将来の目標は?
 
まずは米国選手権で勝つこと。今年は3位になったから、それ以上の結果が出せると思う。もし、いい契約が取れればヨーロッパでも走って、ワールドカップでトップ10入りを目指してトレーニングをしたい。
 
Q:東京観光は?
 
去年はすぐに帰らなければならなくて観光はできなかったけれど、今年は火曜日の夜の飛行機だから2日間あるんだ。フィッシュ・マーケットや東京タワーに行こうと思っている。それから野辺山で来日した時に、渋谷に行ってとても気に入ったから、もう一度行きたいな。
 

女子は日本チャンピオンの豊岡が圧勝!

今年は海外選手の参戦がなかった女子(CL1)のカテゴリーは国内選手だけでのレースになり、日本チャンピオンの豊岡英子(パナソニックレディース)がスタートから飛び出して先頭に立った。
 
冷たい雨は最後まで降り続いたが、豊岡はライバルである宮内佐季子(チームチェーンリング)の必死の追い上げを寄せ付けず、そのまま独走でゴールした。
 
[女子結果(CL1/5周)]
1 豊岡英子(パナソニックレディース/日本)34分12秒
2 宮内佐季子(チームチェーンリング/日本)
3 坂口聖香(パナソニックレディース/日本)
 
2日目の午前中にはキッズレースが開催された。この時間帯はまだ曇りで、シクロクロスに挑戦する子供たちに天の神様はやさしかった!






シクロクロス東京に初出展の亀の子束子では、泥専用洗剤発売を記念して弱虫ペダルシクロクロスチームとのコラボトートバッグ付き特別セットが販売されていた





人気漫画『弱虫ペダル』の作者、渡辺航さんは今年もエンデューロに参戦。沿道に駆けつけた大勢の女性ファンから黄色い声援を浴びていた

今季で引退の山本和弘、最後のお台場で3位!

今シーズンは弱虫ペダルシクロクロスチームの看板選手として走り、JCXシリーズで優勝した山本和弘は、32歳の若さで現役から退くことになった。
 
最後のビッグレースとして走ったシクロクロス東京では、誰よりも多くの声援を受け、シケインでは得意のバニーホップを見せるたびに大歓声が上がっていた。
 
引退後もこの世界から離れることはなく、スポーツサイクルを広める活動をしたいと語っていた。
 
■山本和弘のコメント
 
「日本人トップということはスタート前から意識していたので、純粋にうれしい。世界選に日本代表として一緒に走った悠と2人で接戦のレースができたので、すごく気持ちよくゴールできた」
 
「悠とはコーナーごとに肩と肩がぶつかり合うような闘いができて、自分自身もすごく熱くなった。悠にもすごく感謝している」
 
「(シクロクロスの魅力は)今日はとくに思ったが、応援してくれる人たちとの距離がものすごく近い。やはり何周もぐるぐる回るから、その応援がものすごい力になった。監督が近くにいるのもすごく見えた」
 
「聞こえる声を選手はパワーにできるのがシクロクロスのいいところ。近いからこそ、魅せたいという気持ちがすごく湧いてくる。選手にとってもいい競技だと思う」
 

問い合わせ先