パリ~ニース 2015 ハイライト
最終日前日に地元のガロパンがマイヨ・ジョーヌ獲得
フランス南東部のニースがゴールとなるパリ~ニース(UCIワールドツアー)は『太陽へと向かうレース』と呼ばれているが、今年は目的地で選手を待ち受けていたのは冷たい雨だった。
ニースに到着した最終日前日の第6ステージが始まったとき、総合首位のマイヨ・ジョーヌを着ていたのは世界チャンピオンのミハウ・クフィアトコフスキー(エティックス・クイックステップ)だった。
クフィアトコフスキーはプロローグで優勝し、初日からマイヨ・ジョーヌを着用した。パリ~ニースにはボーナスタイム制度があるため、第3ステージで一度マイケル・マシューズ(オリカ・グリーンエッジ)に総合首位の座を明け渡していたが、翌日の頂上ゴールでふたたび奪い返していた。
その頂上ゴールで区間優勝したのは、2年前にこのレースで総合優勝したオーストラリアのリッチー・ポート(チームスカイ)だった。昨年はクリストファー・フルームの代理で急遽ティレーノ~アドリアーティコ(UCIワールドツアー)に参加しなければならなくなり、タイトル防衛はできなかったのだ。
ポートは標高1201メートルのクロワ・ド・ショブレでチームメートのゲラント・トーマス(チームスカイ)とともにクフィアトコフスキーを蹴落とし、8秒差を付けてゴールした。この時点で、マイヨ・ジョーヌに返り咲いたクフィアトコフスキーとポートのタイム差はたった1秒しかなかった。
ところが激しい総合争いを演じる2人の前に、雨のニースで思わぬ伏兵が現われた。カテゴリー1と2の峠をいくつも越える第6ステージの終盤に、マイヨ・ジョーヌのクフィアトコフスキーとポートが闘っている隙を突いて、地元フランスのトニ・ガロパン(ロット・ソウダル)がアタックを成功させてしまったのだ。
ガロパンは30km近い独走を成功させ、クフィアトコフスキーに1分以上の差を付けてニースのゴールへと到着し、総合首位に躍り出てマイヨ・ジョーヌも獲得した。エズ峠を上る最終日の個人タイムトライアルを前に、彼はポートに36秒差、クフィアトコフスキーに37秒差を付けることに成功した。
昨年のツール・ド・フランスでも逃げてマイヨ・ジョーヌを獲得していたガロパンは、ふたたびフランスに光をもたらしたのだ。
「(最終日は)ベストを尽くす。エズ峠は熟知している。今年の冬はトレーニングで少なくとも20回は上った。そんなにキツイ上りじゃあない」と、ガロパンは最終日の個人タイムトライアルで総合首位の座を守る意欲に燃えていた。
フランスの夢を打ち砕いたオーストラリアTTチャンピオン
しかし、ニースに太陽が出なかったように、フランスにも栄光の瞬間は訪れなかった。
エズ峠を上る9.6kmの個人タイムトライアルも雨天の中で競われた。36秒差で最終日を迎えたポートは、前日の終盤に転倒するアクシデントにも見舞われていた。しかし、オーストラリアTTチャンピオンのポートはケガにも雨にも影響されず、最速でエズ峠を駆け上がったのだ。
ポートが20分23秒でフィニッシュラインを通過し、区間トップに立った瞬間、フランスは敗北を認めざるを得なかった。マイヨ・ジョーヌのガロパンはまだエズ峠に挑んでいたが、逆転の可能性はまったくなかったのだ。
ガロパンはポートより1分39秒遅れのタイムでゴールし、表彰台にすら上れなかった。「今週みたいな脚だったら可能なはずだったのに、今日は調子がよくなかった。ものすごくガッカリだ…」と、ゴールしたマイヨ・ジョーヌは肩を落とした。
ポーランドTTチャンピオンのクフィアトコフスキーにも、エズ峠でポートを追い落とす力はなかった。「エズ峠でポートを打ち負かすのはあまりにも難しいことはわかっていたから、ボクたちは昨日勝負に出たのだが、うまくいかなかった。でも、1週間のレースで自分にはチャンスがあることを学んだよ」と、新人賞を獲得したクフィアトコフスキーは前向きだった。
■逆転で2度目の総合優勝を果たしたポートのコメント
「前回よりもちょっと甘美に感じている。とてもハードだった。すべては最後のステージにかかっていた。だからエズ峠の最終日に勝ったのはとても大きかった。昨日は時間を浪費し、いい位置取りだったときに落車もした。タイヤに圧力がありすぎて、理想的ではなかった。氷の上を走っているようだった」
「36秒差は大きかったが、今朝はいい感じで自信があった。ガロパンには昨日のパフォーマンスの疲れがあることを望んでいた。この坂はトレーニングで何度も上っている。多分今日はトレーニングの時よりも速く走ったと思うよ」
第73回パリ~ニース 個人総合最終成績
1 リッチー・ポート(チームスカイ/オーストラリア)29時間10分41秒
2 ミハウ・クフィアトコフスキー(エティックス・クイックステップ/ポーランド)+30秒
3 シモン・シュピラク(カチューシャ/スロベニア)+30秒
4 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)+30秒
5 ゲラント・トーマス(チームスカイ/英国)+41秒
6 トニ・ガロパン(ロット・ソウダル/フランス)+1分03秒
7 ヤコブ・フグルサン(アスタナ/デンマーク)+1分05秒
8 ラファエル・バルス(ランプレ・メリダ/スペイン)+1分24秒
9 ゴルカ・イサギレ(モビスター/スペイン)+1分38秒
10 ティム・ワロンス(ロット・ソウダル/ベルギー)+2分18秒
[各賞]
■ポイント賞:マイケル・マシューズ(オリカ・グリーンエッジ/オーストラリア)
■山岳賞:トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル/ベルギー)
■新人賞:ミハウ・クフィアトコフスキー(エティックス・クイックステップ/ポーランド)
■チーム成績:チームスカイ(英国)
[各ステージの優勝者]
■プロローグ :ミハウ・クフィアトコフスキー(エティックス・クイックステップ/ポーランド)
■第1ステージ:アレクサンダー・クリストフ(カチューシャ/ノルウェー)
■第2ステージ:アンドレ・グライペル(ロット・スーダル/ドイツ)
■第3ステージ:マイケル・マシューズ(オリカ・グリーンエッジ/オーストラリア)
■第4ステージ:リッチー・ポート(チームスカイ/オーストラリア)
■第5ステージ:ダビデ・チモライ(ランプレ・メリダ/イタリア)
■第6ステージ:トニ・ガロパン(ロット・ソウダル/フランス)
■第7ステージ:リッチー・ポート(チームスカイ/オーストラリア)