デローザ・スカンジウム 試乗レポート
名機のDNAを受け継ぐ アルミフレーム
「セッサンタ・アルミニウム」は、90年代に世界選を制した名機「メラク」以来となるデローザの高級アルミとして、目の肥えたサイクリストの間でひそかに注目されており、製品のレギュラー化も望まれていた。
デローザはそんな声に応えて、このセッサンタ・ アルミニウムのフレームを「スカンジウム」のモデル名に改めて、2015年モデルに加えてきた。 チュービングは車名にもある希少金属のスカンジウムを添加した 7000系のアルミ合金で、軽さと剛性・堅ろう性をバランスしている。
もちろん製造はクザーノにあるデローザの工房で、熟練したビルダーが手がける。チューブ接合部にTig溶接のビード痕を残さないスムーズウエルディングの技法は、かつてのメラクをほうふつとさせる美しい仕上がりだ。
そしてフレームサイズは、セッサンタと同じカスタムフィットの「ブラックレーベル」が適用され る。スカンジウムの価格は高級カーボンフレームが買えるほどだが、 サイズオーダーが可能で、久しぶりのデローザ本気のアルミモデルとなれば、マニアにとって食指を動かされる存在となるだろう。
DE ROSA SCANDIUM
デローザ・スカンジウム フレームセット価格/46万円(税抜)
シートステーはきわめてオーソド ックスな丸断面で構成される。その外径は19mm以上と太く、トップチュ ーブとの接合位置を幅広く確保することでねじれ剛性を高めている
大径のトップチューブは横方向への扁平加工が施される。アルミフレームらしい高い反応性を得つつも過剛性を抑え、ペダリングにおける脚への負担を軽減するための設計だ
下側のベアリング径をワンポイントファイブ規格としたテーパードヘッドチューブを採用。翼断面形状のフォークとともに、フロントまわりは大きなボリュームで剛性を高める
アルミの名機メラクから受け継ぐ角断面のチェーンステー。外径も昔とほぼ変わりはないように見える。横方向への扁平加工などは一切されず、あくまでも反応性を重視している
トレンドにのっとりハンガーシェルは、幅広タイプのプレスフィット 86規格を採用。ダウンチューブのBB側は横方向への扁平加工を施し、ハンガーまわりのねじれ剛性を高める
吉本 司の試乗レポート
アルミロード全盛の90年代後半は、イタ車がもっとも輝いていた最後の時代。その当時の最高傑作の一つがデローザ・メラクだ。それと比べてこのスカンジウムは、テーパードヘッドなどを身にまとい筋肉質な外観へと変貌を遂げているが、チェーンステーはメラクさながら角断面タイプが配置され、かつてのファンにはうれしい仕様だ。
かなりの大径チュービングにはなったもののアルミ缶のようなパリパリの肉薄感ではなく、それよりもやや肉厚のある印象。剛性は高いが過度な感覚はなく、ペダリングでは気持ちのよいレベルの刺激を脚に受けながら、アルミらしい響きのある軽さと力強さで加速する。その感覚はデローザらしいシャープにして素直な走りだ。
乗り心地はカーボンフレームに慣れた体にはどうしてもゴツゴツした感覚もあるが、我慢のできないレベルではなく、オーソドックスなバックステー形状から考えればかなり高レベル。脚にストレスの少ないペダリングフィールを含め、この快適性はスカンジウム素材によるものかもしれない。
個人的に気になる部分があるとするならフロントフォークだ。もう少し重厚感のあるタイプのほうが、バイクを振ったときの動きが安定する。あくまで憶測だが、密度感と重厚感のあるアルミフレームには、かつてのピナレロや現在のタイムのようにPMT工法のカーボンフォークのほうが重厚感はあり、相性がいいのかもしれない。
とはいえ、スカンジウムは高級アルミらしいシャープな加速感、デローザらしいクリーンで素直な走りを楽しめる。高価だが、金属フレームに新たな選択肢が産まれたのは、マニアにとって歓迎すべき一台である。