ティレーノ~アドリアーティコ 2015
コロンビアのキンタナがまた1つ歴史を塗り替えた!
西のティレニア海と東のアドリア海。イタリア半島に面したこの2つの海を結ぶステージレース、ティレーノ~アドリアーティコ(UCIワールドツアー)は今年、50回の節目を迎えた。
しかし今年は開幕から天候には恵まれず、標高1675メートルのテルミニッロ山に挑んだ最難関ステージもゴールは吹雪に見舞われてしまった。その過酷な闘いを制したのは、南米コロンビア生まれのナイロ・キンタナ(モビスター)だった。
キンタナは昨年のジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)でも、雪のステルビオ峠でアタックしてマリア・ローザをつかみとり、総合優勝への足がかりを作った。彼にとって雪は幸運のしるしにちがいない。
唯一の頂上ゴールステージで区間優勝したキンタナは、総合で同じコロンビア出身のライバルであるリゴベルト・ウラン(エティックス・クイックステップ)に48秒、スペインのアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)には1分3秒差を付けて最終日の個人タイムトライアルを迎えた。
しかし、10kmと短い距離の個人タイムトライアルでは、逆転劇が演じられるような大差が付くことはなかった。キンタナは表彰台で紺碧のリーダージャージを着て、海の支配者の証であるトライデントを受け取った。
南米コロンビアの選手がイタリアのティレーノ~アドリアーティコで優勝したのは、史上初の出来事。2月に25歳の誕生日を迎えたばかりのキンタナは、新人賞も獲得した。彼はまた1つ、自転車競技の歴史を塗り替えたのだ。
吹雪の頂上ゴールでアタック!
第50回大会は突然のコース変更で始まった。トスカーナ地方のティレニア海に面したリド・ディ・カマイオーレは、開幕直前にひどい嵐に見舞われてしまったのだ。初日に22.7kmのチームタイムトライアルが行なわれる予定だったコースには木々がなぎ倒されて使用できなくなり、主催者は予定を変更して短い個人タイムトライアルを行なう決定を下した。
この変更で総合を争う選手たちは、初日から思わぬハンデを背負うリスクがなくなった。5.4kmの個人タイムトライアルでは大した差が付くことはなく、もっとも成績がよかったウランに対してイタリアのビンチェンツォ・ニバリ(アスタナ)は1秒、コンタドールは9秒、キンタナは11秒しか遅れていなかった。
日曜日に行なわれた最難関の山岳ステージがスタートしたときにも、もっとも離れているウランとキンタナでも17秒差。冷たい雨の中、序盤に逃げ出したグループには、ニバリをアシストするベテランのミケーレ・スカルポーニ(アスタナ)が加わっていた。
ゴールへと続く16kmのテルミニッロ山の登坂が始まると、先頭グループは次第に小さくなり、コンタドールのティンコフ・サクソやウランのエティックス・クイックステップが引くメイン集団が後方に迫っていた。
ゴールまで残り5kmで、先頭はスカルポーニ1人になっていた。そこでメイン集団からアタックしたのがキンタナだった。すぐにニーバリが反応して追いかけたが、その後輪に食らいつくことはできなかった。
キンタナはスカルポーニを交わして先頭に立つと、雨が雪に変わっていくテルミニッロ峠を勝利に向かって単独で上り続けた。後方ではコンタドールやフランスのティボー・ピノ(FDJ)、ウランが何とか抜け出してキンタナを追おうとしたが、成功はしなかった。
残り3kmを切って、その攻防の中から飛び出したのはオランダのバウケ・モレマ(トレック)だった。彼は吹雪の中を単独でキンタナを追走し、41秒遅れの区間2位でゴールした。この果敢な走りでモレマは、今年のティレーノ~アドリアーティコで総合2位の座を獲得できたのだ。
その後方で、ウランとコンタドールは55秒遅れでゴールしたが、ニバリは2分16秒遅れてしまい、総合でトップ10にすら入ることができなかった。
「最後の上りはとても寒くなるとわかっていた。精神的な準備はできていた。チームがずっと面倒を見ていてくれたから、ボクは毎日エネルギーを温存できていた。そして彼らがボクを最後の上りへと送り届けてくれたんだ」と、総合首位に立ったキンタナは明かした。
「集団には緊張感があった。みんなアタックするかどうかお互いを見合っていた。前日にはそうしている隙にスカイの選手(プールス)が漁夫の利を得た。今日はペースが落ちた瞬間に、ボクがアタックする決断を下したのさ」
そして吹雪の表彰台で紺碧のリーダージャージにソデを通したキンタナは、最終日までそれを誰にも譲り渡さなかったのだ。
第50回ティレーノ~アドリアーティコ 個人総合最終成績
1 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)25時間11分16秒
2 バウケ・モレマ(トレック/オランダ)+18秒
3 リゴベルト・ウラン(エティックス・クイックステップ/コロンビア)+31秒
4 ティボー・ピノ(FDJ/フランス)+35秒
5 アルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ/スペイン)+39秒
6 スティーブン・カミングス(MTN・クベカ/英国)+40秒
7 ウォートル・プールス(チームスカイ/オランダ)+56秒
8 ドメニコ・ポッゾビーボ(AG2R・ラモンディアル/イタリア)+59秒
9 アダム・イエーツ(オリカ・グリーンエッジ/英国)+1分09秒
10 ロマン・クロイツィーゲル(ティンコフ・サクソ/チェコ)+1分11秒
[各賞]
■ポイント賞:ペーテル・サガン(ティンコフ・サクソ/スロバキア)
■新人賞:ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)
■山岳賞:カルロス・キンテロ(コロンビア/コロンビア)
[各ステージの優勝者]
■第1ステージ:アドリアーノ・マローリ(モビスター/イタリア)
■第2ステージ:イェンス・デブースル(ロット・スーダル/ベルギー)
■第3ステージ:グレッグ・ヴァンアーベルマート(BMC/ベルギー)
■第4ステージ:ウォートル・プールス(チームスカイ/オランダ)
■第5ステージ:ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)
■第6ステージ:ペーテル・サガン(ティンコフ・サクソ/スロバキア)
■第7ステージ:ファビアン・カンチェッラーラ(トレック/スイス)