BH ウルトラライトエボ 試乗レポート
登坂に特化した個性あふれる超軽量フレーム
見た目はウルトラライトと変わらない。形状はウルトラライトもウルトラライトエボも同じだとい う。おもな変更点は2つ。まずはフレーム素材だ。
ウルトラライトに使用される素材の割合は、東レ のT700が70%、T800が13%、M40が6%、その他11%。ウ ルトラライトエボは、T800が48%、M40が28%、T700が14%、その他10%となった。大ざっぱに言えば、より軽くて硬い材料を手に入れたのだ。
製造法も大きく変わった。ウルトラライトは金型にカーボンシートを並べ、ブラダーと呼ばれる空 気袋を膨らませて圧力をかけ成型するというおなじみのモノコック製法。しかしエボは、芯材にブラ ダーではなく固形の発泡スチロー ル材を使うのだという。
これにより、成型時に圧力を正確にかけられるようになり、フレーム内壁のバリやシワを排除することができる。応力を担わないムダな部分を可能なかぎり少なくしたのだ。芯材は成型後に燃やしてしまうという。小さくなった燃えカスは、BB部から取り出す。これらの変更により、前作と同等の剛性を維持しながら約100gの軽量化を達成している。
BH ULTRALIGHT EVO
ビーエイチ・ウルトラライトエボ
フレームセット価格/42万円(税抜)
シマノ・デュラエース完成車価格/90万円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・デュラエース
ホイール●マヴィック・ キシリウムSLS
タイヤ●マヴィック・イクシオンプロ(フロント)グリップリンク、(リヤ)パワーリンク
ハンドルバー●EVOカーボン
ステム●FSA・OS-99CSI
サドル●プロロゴ・ゼロ2
シートポスト● EVOカーボン
試乗車実測重量●6.42kg(XSサイズ、ペダルなし)
サイズ●XXS、XS、SM、MD、 LA、XL
カラー●マットレッドストロークカーボン、マットイエローストロークカーボン
どんなに優れたフレームもフォークで駄作になることがあるが、このフォークは後輪が地面を蹴って生まれる推進力を邪魔しない。フレームとのマッチングは文句なし
ボリュームのあるハンガーまわり。 BB規格 はBHとFSAが提唱する BB386エボを採用。BB幅を広くとることができるため設計自由度が高く、広い互換性を持つ
筆のような細いシートステーに対し、ヘッドはかなり太い(上下異径、下側1.5インチ)。メリハリのある設計でフレーム重量700gを達成。ケーブル類はすべて内蔵される
無骨な形のチェーンステー。左右非対称形状だが、両方とも縦に長い長方形断面。剛性重視の設計だろう。 チェーンステー長は全フレームサイズで共通である(402mm)
細身のシートステーと27.2mmのシートポストを採用し、快適性にも配慮。とはいえ高弾性&高強度の素材になったため、乗り心地はレーシー。減衰は速いので不快ではないが
安田行生の試乗レポート
乗る前にジオメトリー表を確認する。フレームサイズはXXS ~ XLの6種類で、ヘッドはやや立ち気味。XS ~ LAの4サイズでリーチが4mmしか変わらないなどいびつな面もあり、サイズ選びの際には注意する必要があるが、少なくともリーチの逆転は見られない。
走り出すとあまりに軽いペダリングにびっくり仰天である。カンカンと軽薄な軽さではなく、ヒュンヒュンという上質な軽さだ。これが、加速や登坂において大きな武器となる。とくに坂での進みっぷりは最強。緩斜面でのキレ味は、上りが得意と評価される有力ブランド定番軽量フレームの上をいく。ウルトラライトエボは、現在のロードバイクシーンでもっとも上りが得意なフレー ムのひとつである。
振動の減衰は速いが、衝撃はしっかりと伝わってくる。そのため、より快適性が高くロングライドにも適する従来のウルトラライトも併売されるという。BHは、軽量フレームをさらに「加速と登板に特化したウルトラライトエボ」と「快適なロングライドもこなすウルトラライト」という2つの方向性に分けてラインナップするようになったのだ。
バイクを振りやすいのもウルトラライトエボの大きな特徴だ。曲がりたがるジオメトリーなのか、ハンドリングはかなり機敏で、コーナーでは鮮やかに身を翻し、坂でのダンシングではヒラリヒラリ舞うように走ってくれる。
クセは強いが、クライマーのペダリングに真摯に応える一本である。無味無臭の万能モデルがもてはやされる現在、これほど個性が光るフレームも珍しい。