入門ロードバイク 2015【ピナレロ、メリダ】
20万円台で乗れる!ピナレロ・ラザ
ピナレロのカーボンモデル「ラザ」は、価格は約25万円とシマノ・105完成車としては相場だが、昨年の11速化で基本性能が大幅に上がった。そのフレームでまず目を引くのは、大きく湾曲したオンダフォークだろう。これは〈走る・曲がる・止まる〉に必要な剛性を確保しつつ、 路面からの衝撃をすばやく吸収・減衰するための形状で、2000年代前半に登場して以来、ピナレロのハイエンドモデルに採用されてきた。
左右非対称設計を取り入れていることも売りの一つ。自転車という乗り物は駆動系パーツが右側に付いているため、ペダルを踏むとフレームの左側より右側に多くの力がかかる。ピナレロはフレームの形状を左右非対称にして、自転車の左右バランスを整えた。 これもオンダフォーク同様ピナレロ独自の技術である。
じつは、ラザのこの特徴的なフレーム形状は、上位モデルであるマーヴェルとまったく同じもの。 形状を同じにすることで、高価格車の優れた設計をそのまま使えるほか、金型(製造時に必要なフレームの型)を共有できるため、製造コストを下げることもできる。 ラザは、ピナレロの技術と財産を存分に生かした入門機なのである。
ピナレロが持つ技術と財産を存分に生かした入門モデル
PINARELLO RAZHA
シマノ・105完成車価格/25万3000円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・105
ホイール●シマノ・WH-RS010
タイヤ●ヴィットリア・ザフィーロ 23C
ハンドルバー●モスト・ザイロンアルミ6061
ステム●モスト・タイガー ALU
サドル●モスト・ボブキャット
シートポスト●モスト・アルミシートポスト C H
試乗車実測重量●8.56kg(500サイズ、ペダルなし)
サイズ●425EF、440、465、500、515、530、540、550、560、575、595
カラー●928ブラック×レッド、930ホワイト×ブラック、946ネイキッド、947ブラック×ピンク、962 スカイレプリカ
■BBの新規格が乱立している昨今。しかしピナレロは、BB部のメンテナンス性や耐久性、精度を重視し、昔ながらのスレッド方式を使い続けている
■ヘッドベアリングは、上側が1-1/8インチ、下側 に1-1/2インチという上下異径仕様。これによりブ レーキングやハンドリング時の安定感を高めている
安井行生のラザ試乗レポート
入門機に必要なのはバランスである。何台も経験したベテランなら、突出した軽さや反応性を追求し、走りの好みを先鋭化させていくことができるが、ビギナーが重視すべきは快適性・加速力・安定性などのバランスだ。
このラザのバランスだが、ほぼ完璧だといっていい。硬すぎず柔らかすぎず、まさに「ちょうどいい剛性感」にピンポイントで仕上げてある。加速はスムーズで力強く、ペダルのひと踏みひと踏みが楽しくなる走り。快適性は高いがフワフワではなくコシのある乗り味なので、路面の状況やタイヤの働きぶりを看取しやすい。
エントリーモデルながら11種類のフレームサイズを用意していることも賞賛に値する。サイズを多く用意すればフレームの金型もそれだけ多く必要になる。金型は非常に高いため、価格を下げようとすればサイズ展開を絞らざるをえない。ハイエンドモデルであっても3、4種類で済ませているメーカーも多いなか、ピナレロはエントリーグレードまで手を抜かない。1台目のロードバイクとして文句なしにオススメできる一台である。
BRAND STORY
インテグラルヘッド、カーボンバック、左右非対称設計など、多くの技術トレンドを作り出してロードシーンを牽引する1952年創業のイタリアンブランド。数々のトップチームに機材供給を行なうレース常勝ブランドでもあり、2012年、2013年とツール・ド・フランスを連覇した。近年は低~中価格帯モデルも充実させている。
ピナレロジャパン TEL 072・238・0039
text●安井行生 photo●金上学
20万円台で乗れる!メリダ・ライド 4000
設計とデザインをドイツで行ない、生産は最先端の台湾という製造形態を確立し、ハイクオリティのバイクを生み出しているメリダ。 ロードもMTBもともにトップレーサーを有するプロチームへの機材供給を積極的に展開し、輝かしい勝利を収めている。
RIDE 4000はリヤ11~32Tの11速を採用し、部分的に新型シマノ・105をアッセンブルして、手に入れやすい価格を実現。 ホイールには下位グレードながら フルクラムを採用し、完成車ならではの統一感を見せている。
フレームには上位モデルの優れた振動吸収性能を持つRide CF2カーボンフレームを採用し、特殊な植物由来のバイオフラックスファイバーをシートチューブとチェーンステー、さらにフォークにも配置し、不快な高周波振動をカットする。そしてカーボンの積層を改良して通常のカーボンよりも大幅に振動吸収性能を高めることに成功した。
シートステーを扁平形状にする ことで、路面からの振動吸収を高めるサスペンション機能をもたらしたフレックスステーが、ライダ ーを疲労させる原因を軽減し、スムーズな走行感や快適な乗り心地を実現する。長時間のペダリングを中速域で続けるために最も適した性能を引き出している。
ロングライドやエンデューロに最適なエンデュランスロードだ。もちろん将来的にシマノ・Di 2へのアップグレードにも対応している。
優れた振動吸収性を持つエンデュランスロードバイク
MERIDA RIDE 4000
シマノ・105完成車価格/21万2037円(税抜)
フレーム●カーボン
フォーク●カーボン
コンポーネント●シマノ・105
ホイール●フルクラムレーシング・コンプ
タイヤ●コンチネンタル・ウルトラスポーツ 25C
ハンドルバー●コントロールテック・ワン
ステム●コントロールテック・ワン- 5
サドル●メリダ・レース5
シートポスト●コントロールテック・T5
試乗車実測重量●8.35kg(50サイズ、ペダルなし)
サイズ●44、47、50、52、54
カラー●シルクUD×ブラック×スカイブルー、シルクUD×アントラシート×グリーン
■写真下・左:シートステーを縦方向に薄く扁 平形状にすることで、路面からの振動吸収を高めるサスペンション 機能のフレックスステーが効果的
■写真下・中:サドルは好みの分かれるところ。 高いものならいいというわけでもないので、使い込んでから交換するのもあり。座り心地は悪くない
■写真下・右:下側1.5インチの大径ベアリングを擁するXテーパーヘッドとフォークの高剛性化が、ハンドリングを安定させている
■バイオファイバーを採用したことで、ハンガーまわりなどがしっかりとした剛性感を有しつつ、長距離でも疲労感を少なくする振動吸収性を備えている
■ライダーに直接触れる部分は、自分に合ったものを選びたい。ブレーキレバーはコントロール性にも影響が出るが、105はとても持ちやすく使いやすい
小林徹夫の ライド 4000 試乗レポート
まず感じるのはヘッドチューブの長さだが、メリットとして考えればドロップハンドルに慣れない初心者や、ロングライドメインの人にはピッタリだろう。
フレームの剛性感もしっかりしていながら路面からの振動を伝え難いので、耐久向けにいいと感じる。長いヘッドチューブも、ずっとある程度の集団内で走れる耐久ではデメリットにならないし、むしろ頭を上げ続けているのに適しているので、まわりの状況をつかみやすいし首や肩の疲労も軽減されるだろう。
路面からの衝撃がかなり緩和されるので、荒れた路面に突入しても跳ねる感じが少なく、ハンドルを取られることもな くコントロールしやすくなっている。快適性と走行性が保たれているので、初心者でも扱いやすく感じるはずだ。
ステアリングの感覚は、ダンシングで ハンドルを振る場合も左右への進路変更も、クセがなく軽い印象だ。それでいてフロントブレーキの効きもしっかりとし た感覚がある。上りではケイデンスを上げたときに、よりスムーズに走る感だ。
BRAND STORY
メリダは台湾で1972年に起業し、86年からはオリジナルブランドを立ち上げて世界各 国に供給している。本部や製造工場は台湾にあるが、研究開発はドイツに置かれている。400以上の自転車メーカーがしのぎを削るドイツにあって、つねに高い技術と品質を保持して、他メーカーと技術連携をして自転車を製造するOEMも得意とする。
ミヤタサイクル TEL044・221・0191
text●小林徹夫 photo●金上 学