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リエージュ~バストーニュ~リエージュ2015

春のクラシック最終戦はベテランのバルベルデが得意のスプリントで優勝して幕を閉じた
 
Photo: Graham Watson

ベテランの3度目の勝利

春のクラシックシーズンを締めくくるリエージュ~バストーニュ~リエージュが、4月最期の日曜日にベルギー南部の風光明媚なアルデンヌ地方で開催された。
 
この日は一日中断続的に雨が降るあいにくの天気になったが、最後は10人の選手でのゴールスプリントになり、スペインのアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)が2006年、2008年につづいて3度目の優勝を果たした。
 
4日前に開催されたフレッシュ・ワロンヌでも、バルベルデに負けて2位になっていたフランスのジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ)は、またしてもビッグタイトル獲得を逃し、悔しそうに拳を振り下ろした。
 
バルベルデは2006年と同様に、同じ年にアルデンヌの2つのクラシックを両方制した選手になった。それは1951年と1952年にスイスのフェルディ・クブラーが2年連続で成し遂げて以来の快挙だった。
 
リエージュで5回優勝したベルギーのエディ・メルクスですら、同じ年にアルデンヌの2つのクラシックを制したのは生涯でたった1度だけだ。
 
一週間前に開催されたオランダのアムステル・ゴールド・レースでも2位になっていたバルベルデは、この2つの勝利でUCIワールドツアーランキング首位の座も獲得している。

2人のチャンピオン

どんよりと曇ったリエージュのスタート地点は、時折雨が落ちる不安定な天気のせいか例年よりも観客は少なかった。そこでひときわ大きな声援を受けていたのは2人のチャンピオンだった。
 
1人はアムステル・ゴールド・レースで優勝した現世界チャンピオンのミハウ・クウィアトコウスキー(エティックス・クイックステップ)。ベルギーに住んでいるポーランド人たちが、祖国のチャンピオンの応援するために大勢やってきていた。
 
そしてもう一人は、地元ベルギーのチャンピオン、フィリップ・ジルベール(BMC)。しかし彼は、4日前のフレッシュ・ワロンヌで落車に巻き込まれ、右ヒジと右ヒザを負傷していた。そのため当初は出場すら危ぶまれていたのだが、スタートに元気な姿を見せ、誰よりも大きな歓声で迎えられた。
 
31km地点から逃げ出した8人の選手の中には、驚いたことにエース格のディエゴ・ウリッシ(ランプレ・メリダ)が加わっていた。彼は昨年のジロ・デ・イタリアでサルブタモールの陽性になり、9ヶ月の資格停止処分を受け、それが終了してレースに復帰したばかりだった。
 
8人の逃げは48km地点で集団に8分近いタイム差を付けたが、チームヨーロッパカーが集団のコントロールを開始したため、107km地点のバストーニュに到着した時には4分に減っていた。この日は一日雨の予報だったのだが、ベルギー最南部では太陽が顔を出していた。
 
後半戦に入り、厳しいアルデンヌの丘越えがスタートしてレースは動き始めた。ゴールまで77.5km地点にある、壁のようなストックーの丘を逃げグループはバラバラになって這い上がり、その後方にはアスタナ勢が引く集団が1分後に迫っていた。
 
この丘でアンドレイ・グリフコ(アスタナ)がアタックし、下りで集団もバラバラになった。つづくオト・ルベーの丘で最後まで逃げていたウリッシたちはグリフコのグループに追いつかれて仕事を終えた。
 
アスタナは攻撃的な走りを続け、残り70kmではタネル・カンゲルトとミケーレ・スカルポーニが、フリアン・アレドンド(トレック)、マヌエーレ・ボアロ(ティンコフ・サクソ)、エステバン・チャベス(オリカ・グリーンエッジ)とともに先行した。
 
残り59kmのロズィエールの丘で先頭からアレドンドとボアロは脱落。丘の頂上で残りの3人はエティックス・クイックステップ、モビスター、カチューシャが引く集団に1分差を付けていた。
 
ナーバスになり始めた集団では、残り42km地点で大落車が発生した。ディフェンディング・チャンピオンのサイモン・ゲランズ(オリカ・グリーンエッジ)や、一昨年の勝者であるダニエル・マーティン(キャノンデール・ガーミン)も巻き込まれた。実はアラフィリップも、ここで落車した選手の1人だった。
 
日本から出場していた新城幸也(チームヨーロッパカー)もこの大落車に巻き込まれて負傷し、救急車で搬送されてしまった。
 
ゴールまで残り34.5km、ジルベールの故郷の町がふもとにあり、『PHiL』の文字が1.7kmに渡ってペイントされたラ・ルドゥトの丘で、先頭からカンゲルトが脱落したが、スカルポーニとチャベスは丘の頂上でまだ集団に36秒のタイム差を付けていた。
 
しかし、この2人もゴールまで残り25kmを切って小さくなった集団に吸収され、レースは振り出しに戻った。
残り19kmのロッシュ・オー・フォコンの丘で、メイン集団からロマン・クロイツィーゲル(ティンコフ・サクソ)がアタックし、ジャンパオロ・カルーゾ(カチューシャ)が合流。2人は集団に数10秒差を付けて先行した。集団からはヤコブ・フグルサン(アスタナ)が飛び出し、残り16kmで先頭は3人になった。
 
さらに集団からはジョバンニ・ビスコンティ(モビスター)がアタックし、アラフィリップが追走。ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)、ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)とともに前を追ったが、3人を捕らえることはできなかった。
 
ゴールまで残り6.4km、最後のサン・ニコラの丘が始まり、ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)やバルベルデが集団を引き、3人の逃げを捕まえた。この動きで先頭集団からはジルベールが脱落してしまった。
 
アルカンシエルのクウィアトコウスキーも先頭集団でサン・ニコラの丘を越えることはできなかった。そしてニーバリも残り1.7kmで集団の後方に落ちていた。
 
アンスのゴールへと向かう最後の上り坂が始まり、残り1kmのフラム・ルージュで最初にアタックしたのは、ダニエル・モレノ(カチューシャ)だった。
 
残り500メートルでモレノは後続に差を付けて先行していたが、ベテランのバルベルデはためらうことなく自らモレノを捕まえに飛び出し、その後方にはホアキン・ロドリゲス(カチューシャ)がピタリと付いていた。
 
バルベルデは最後のカーブに入る手前でモレノを捕まえ、ホームストレートは10人の選手でのゴールスプリントになった。そこで『無敵』の異名を持つバルベルデを倒せる選手はいなかった。彼は3度目の勝利の喜びを、ゴールで待っていた妻子と分かち合った。
 
■優勝したバルベルデのコメント「最後は先頭で本当にすべての動きに注意を払っていた。アラフィリップがまだそこに居るのには気がついていたが、彼だけを注意していたわけではない。先頭グループはまだ大きく、いかなるアタックも決定的なものになりかねなかったからだ」
 
「アンスの坂で、モレノが飛び出したのを見ていた。こうした高速で厳しいレースでは、誰もが疲れているのはわかっていた。モレノを捕まえるには苦しい思いをするだろうが、彼も最後には苦しむだろうという確信はあった」
 
「スプリントに備えてエネルギーをセーブしたかったが、彼が本当に行ってしまうと気が付いたので、残り600メートルでアタックし、彼を捕らえた。でも、最後のスプリントのための“一撃”だけは残しておいたから、やり遂げられたのさ」

第101回リエージュ~バストーニュ~リエージュ結果

1 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)6時間14分20秒
2 ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ/フランス)
3 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)
4 ルイ・コスタ(ランプレ・メリダ/ポルトガル)
5 ロマン・クロイツィーゲル(ティンコフ・サクソ/チェコ)
6 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)
7 セルヒオ・エナオ(チームスカイ/コロンビア)
8 ドメニコ・ポッゾビーボ(AG2R・ラモンディアル/イタリア)
9 ヤコブ・フグルサン(アスタナ/デンマーク)
10 ダニエル・モレノ(カチューシャ/スペイン)