トピックス

TOJに参戦したNIPPO・ヴィーニファンティーニに密着!【東京】

マリーニの区間優勝とポイント賞獲得を狙って挑んだ最終ステージは…

司令塔不在の東京ステージ

大阪府堺市で開幕した第18回ツアー・オブ・ジャパン(アジアツアー2.1)は、1週間の闘いを終えて最終目的地である東京へ到着した。最終日の第7ステージは高層ビルが立ち並ぶ日比谷シティ前からパレードし、1周14.7kmの大井埠頭周回コースを14周する平坦コースで競われた。

 

天気予報では雨が降ると言われていたのだが、予報は外れて終日雨はふらず、大井埠頭の周回コースでは日差しが暑いくらいだった。NIPPO・ヴィーニファンティーニは美濃ステージで区間優勝したネオプロのニコラス・マリーニが2勝目とポイント賞獲得を狙う戦略だった。

 

しかし、前日の伊豆ステージでマッティア・ポッツォがリタイアし、チームは5人で闘わなければならなかった。しかもポッツォはキャプテンとしてここまでチームをまとめていた要の選手であり、スタート前には黒枝士揮もポッツォがいないことに不安を感じていた。

 

東京ステージはいつものようにスタートからアタックがかかり、大井埠頭の周回コースに入ると集団から8人が逃げ出した。

 

メンバーはラファー・シティウイとウラジミール・グセフ(スカイダイブドバイ)、内間康平と西園良太(ブリヂストン・アンカー)、ホセビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)、ディラン・ガードルストーン(ドラパック)、チュンカイ・フェン(ランプレ・メリダ)。そしてNIPPO・ヴィーニファンティーニの山本元喜は、この逃げを潰すつもりで加わっていた。

 

残り12周回の終わりに設定されていた中間スプリントポイントはガードルストーンが先頭で通過し、山本が2位に入った。ここで集団とのタイム差は53秒あった。この後、山本はチームから集団へ戻れという指示を受け、逃げから離脱した。

先頭からチュニジアチャンピオンのシティウイとトリビオが抜け出し、残り5周回に入ったとき、集団とのタイム差はまだ1分開いていた。しかし集団はゴールスプリントを目指してペースアップし、残り3周で逃げを吸収した。

 

最終周回は集団で突入したが、最後の左コーナーで曲がりきれなかった選手が落車。その後も落車がつづいて混沌となったゴールスプリントを制したのは、昨年も東京ステージで優勝していたイタリアのニッコロ・ボニファツィオ(ランプレ・メリダ)だった。

 

今大会唯一のUCIワールドチームだったランプレ・メリダは、総合争いにこそ絡まなかったが、伊豆と東京の2ステージで優勝し、バレリオ・コンティがポイント賞のブルージャージ、イリア・コシェボイが新人賞のホワイトジャージを獲得し、自分たちがこのレースの主役であったことを誇示していた。

 

NIPPO・ヴィーニファンティーニのマリーニは区間3位でレースを終えた。チームは最後の表彰台に誰も上ることはなく、2015年のツアー・オブ・ジャパンを闘い終えた。

 

しかし、大門宏監督はこの日のマリーニの成績を大いに評価していた。「3位でも上出来だった。普通だったら表彰台なのだから。彼はまだアンダー23の選手で、プロ1年目で、3位でも本人はがっかりしてないと思う。今日も周りはみんなエリートの選手だった。(同い年の)ボニファツィオに負けたのはくやしいかもしれない。2人はアマチュア時代から勝ったり負けたりを繰り返しているから」

 

「今日は思ったような展開にならなかった。中間でポイントを取りたかったが、山本が逃げに入ってしまっていた。かと言って、彼が後ろに残っていたらよかったかどうかはわからない」

 

「(マリーニのアシストは)4人しかいなかった。ランプレのように地脚のあるアシストだったらよかったが、マリーニがスプリントできるようにあの逃げを抑える力はなかったかもしれない」

 

「それができなかったので、いい展開ではないと思っていた。今日はポッツォがいたら良かっただろう。だからチームカーを呼んでくれればよかったのだが…指示系統がよくなかった」と、大門監督はこの日のレースをふり返っていた。


東京ステージはコース沿道からの補給受け渡しが禁止されていたため、チームカーまで下がってボトルをもらわなければならなかったのだが、それもうまくできていなかったと言う。「水も途中で取りに来なかった。最後の1周でやっと山本が取りに来たくらいだった…」

 

UCI公認レースでは、ワールドツアーでしか無線の使用が許可されていない。アジアツアーのクラス1のレースであるツアー・オブ・ジャパンでは、競技中の指示はチームカーから監督が選手に直接伝えるか、ポッツォのようなキャプテンが采配をふるうしかないわけだ。

 

ここまで司令塔としてチームをまとめていたポッツォが、伊豆ステージでリタイアしたことは、黒枝もスタート前に心配していたように、やはり大きな痛手だった。ポッツォがいればマリーニがまた勝てたかどうかは別として、チームが東京ステージで悔いの残らない走りをできたことは確かだ。

 

 

■ツアー・オブ・ジャパン 第7ステージ(東京)結果

1 ニッコロ・ボニファツィオ(ランプレ・メリダ/イタリア)2時間17分14秒

2 ブレントン・ジョーンズ(ドラパック/オーストラリア)

3 ニコラス・マリーニ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/イタリア)

7 黒枝士揮(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)

46 山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)

50 ディディエール・チャパッロ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/コロンビア)

55 アントニオ・ニーバリ(イタリア)

[ツアー・オブ・ジャパン2015 個人総合最終成績]

1 ミルサマド・プルセイェディゴラフール(タブリスペトロケミカルチーム/イラン)16時間17分53秒

2 ラヒーム・エマミ(ピシュガマン・ジャイアントチーム/イラン)+24秒

3 ホセイン・アスカリ(ピシュガマン・ジャイアントチーム/イラン)+52秒

7 ディディエール・チャパッロ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/コロンビア)+1分37秒

42 山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)+24分33秒

54 アントニオ・ニーバリ(イタリア)+35分18秒

72 黒枝士揮(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/日本)+54分02秒

83 ニコラス・マリーニ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ/イタリア)+1時間08分43秒

(http://www.toj.co.jp/2015/)

大門監督のTOJ総合評価:チャパッロとマリーニは満点

ツアー・オブ・ジャパンの長い闘いを終えたNIPPO・ヴィーニファンティーニの大門宏監督に、このレースでのチームとしての総合的な評価を聞いた。

 

「これまでの成績から言うと総合優勝したこともあるし、総合2位だったこともあり、今回はヨーロッパで契約も取れないような選手が上位5位くらいまで占めていて、まあ一般的な理論からすればNIPPOは全然ダメだったということになるかもしれないが、ボクは個人的には満足している」

 

「何と言っても2年間ブランクがあって、ちゃんと走れるのかと言われていたディディエール・チャパッロが信用を得られたわけだし、チームにとっては収穫だった。自分が責任者だから、彼が期待に応えてくれたのはよかった。選手を選ばなければならない監督という立場としては、それが今回の一番の収穫だった」

 

「ニコラス・マリーニもこういうところで勝ててよかった。クリテリウムと合わせて2回勝ち、最終日は3位だった。彼にとってはすごくステップアップになったと思う。今回は最近のTOJのメンバーの中では一番若いメンバー構成だった。そういう意味でもよかったと思う」

 

チームは2012年と2013年にベテランのフォルトゥナート・バリアーニが総合優勝し、昨年はグレガ・ボレが総合2位になっていた。

 

その華々しい過去の成績と比較してしまえば、今年はチャパッロの総合7位が最高位で、紙の上ではけっして良くはなかったのだが、成績表を見ただけではわからない成果がチームにも選手にもあるものだということが、今回はよくわかった。

 

「こういうレースは一人一人に成績が求められるし、成績も出せるものなので、ある意味弱いところも見えた。そのなかでチャパッロとマリーニは、ちゃんと自分の力を明確に示すことができた」

 

「チャパッロは上りでイタリア人以上に力のある選手として成績を出し、チームから信用を得ることができたと思う。マリーニもまだアンダー23の選手なのにエリートを相手にスプリントして、今日も3位で上出来だった。彼もTOJに来なければ、そういうことはできなかったわけだ」と、評価した大門監督。この2人は10点満点の出来だったと語っていた。

 

「アントニオ・ニーバリはちょっと走れなかった。まだ若い、というか、もろさが出た感じだった。もう少し走れてもよかった。強かったとは言えない。イタリア人スタッフからどうだったかと聞かれたら、ダメだったと言うしかない。よかったとは言えない」と、ビンチェンツォの弟に対する評価は厳しかった。

 

ニーバリも前半戦はよく走れていたのではないかと思うのだが「あれくらい走れるイタリア人はいくらでもいる」と、大門監督は一蹴した。「開幕前に話していた通り、2年くらい見なければわからないものだが、今回はあまり収穫がなかった」

 

その一方で、最終日前日にリタイアしてしまったマッティア・ポッツォに対する大門監督の評価は高かった。「彼はTOJに来るまでは全然いい所がなかった。シーズン初めはツール・ド・サンルイスへ行ったが全然走れず、ずっと低空飛行している感じだった」

 

「ジロ・デ・イタリア直前は明らかに成績が出せていなくて、ジロのメンバーにも選ばれなかった。しかし、TOJにもジロにも選ばれていない選手だっている。そういう中でTOJのメンバーに選ばれて日本へ来て、山岳賞ジャージを獲得した。今年目立った成績を出したのは初めてだった」

 

「山岳賞を2回取って、リーダーとしてマリーニも導いた。イタリア人スタッフもポッツォはまだ大丈夫なんだと思っただろうし、本人もホッとしたと思う。次につながった感じだ」

 

「ポッツォは期待されていたのに成績を全然残していなかったが、今回はしっかりと自分の仕事を果たした。彼がいるかいないかで、これだけ違うのだということも明らかにできた」

 

「今年はああいう感じでレースを止めることが多かった。調子が出ないとか、よくないとか、常にそう言っていた。昨日降りて今日いなかったのは残念だったが、ポッツォがいなければマリーニも優勝できなかったかもしれないし、個人的には(途中でリタイアしたことは)気にはしていない。彼はTOJに来て、自分の役割を果たしたと思う」と、大門監督は話していた。

 

チームのムードメーカーでもあるポッツォは、今後のレースでも日伊の若い選手たちをまとめるキャプテンとして、チームに欠かせない存在になるにちがいない。

 

開幕前夜に大門監督は「このレースが成長のきっかけになってほしい。自分には何ができるのか、どこが弱いのかを見極めてほしい。そして結果を残し、とにかく自信をつけてほしい」と語っていたが、参加した6選手のうち、半数はその期待に応える走りができたわけだ。

ハレの舞台で結果が残せなかった日本人選手たち

山本元喜と黒枝士揮は、NIPPO・ヴィーニファンティーニに所属する日本人選手として、ツアー・オブ・ジャパンはハレの大舞台だったわけだが、満足のいくような結果は残せずに終わった。

 

大門監督の評価も厳しかった。「山本はいい時もあったが、ちょっと足踏みをしている。もうちょっと頑張らなければならない。黒枝に関しても同じだ。2人に関しては物足りなかった」

 

「日本人選手は成長過程において、我慢をしていくしかない。やはり忍耐がないといけない。勝てるわけではないのだから。この1レースでの判断ではないが、こういうハレの舞台である大事なレースで一発屋のような強いところを見せられなかったのはすごくマイナス点だった」

 

「何か光るものを持っている選手というものは、チャンスに強いものだ。今回のTOJでは寺崎武郎(ブリヂストン・アンカー)が強かったが、ああいうふうに光るものがないとダメだ」

 

「そういう意味では山本も黒枝もちょっと心配な材料が多かった。こういうレースでいいところを魅せられる奴じゃないと。今回は2人揃っていいところはなかった。でもまあこんなものだ。別府史之や新城幸也も、若い頃はそんなレースばかり繰り返していた。彼らはまだ22、23歳なので、我慢して見ているしかない」

 

「今日も山本にはこんなことではダメだと言った。黒枝にも、マリーニが優勝したときに彼の後ろを外してしまっていたので、そんなんじゃダメだと話していた。今日はまだよかった方だと思う」

 

「山本にしても黒枝にしても成績がない。彼らはこれまで成績を出していた選手なので、今成績がないということは彼らのためによくない。どんどん自信がなくなっていく。勝てないということは、彼らにとって良いことではない」

 

「それを我慢して次に繋げられるのか、そのまま崩れてしまうのか。彼らは今、そういうところにいる。耐えて維持して上がれる選手は少ない。だから勝てる選手は少ない。しかし、競争というものはそんなものだ」

 

「ジュニアから勝ち上がってきた選手がいきなりアンダー23に上がると勝てなくなる。アンダー23からエリートでも、いきなり上がるとみんな勝てない。それが淘汰だ」

 

「山本も黒枝も、その狭間で悩んでいるところだ。ただ、その悩む時期はそんなには長くはない。契約も取れなくなるし、レースにも連れて行ってもらえなくなってしまうのだから、とにかく耐えて頑張るしかない」

 

「レースに連れて行ってもらえるだけありがたいと思わなければならない。そしてレースに連れて行ってもらったら、もう言い訳はできない。早く結果を出さなければならない」

 

「日本の選手に関しては、プロコンチネンタルチームで続けられるのか、もう続けられないのかという狭間に立たされている中でどんどんテストされていく。その中で結果を残せるかどうかだ」と、大門監督は話していた。

 

結果が出せなかったことは、本人たちが一番よくわかっている。今回のTOJで得た多くの経験を次のレースで生かし、一日も早く監督の期待に答えられるような成績を出してほしい。

2016年へつなげるために

UCIプロコンチネンタルチームに昇格して初めて挑んだNIPPO・ヴィーニファンティーニのツアー・オブ・ジャパンはこうして幕を閉じた。次に彼らの活躍が観られるのは10月のジャパンカップ(アジアツアー1.HC)になるのかと思ったのだが、まだ出場は確定していないという。

 

ジャパンカップはUCIワールドチームを数多く招待することで集客を狙うイベントであり、イタリア登録のUCIプロコンチネンタルチームであるNIPPO・ヴィーニファンティーニは、主催者にとってはワールドチームよりも格下のチームになり、十分な条件の招待を出しもしないのが現状だ。

 

「招待されれば目一杯頑張るが、招待されなくてもレースはいくらでもある。2日後にはツアー・オブ・ハイナン(中国/アジアツアー2.HC)があり、そこはまとまったお金を交通費として出してくれるから何の問題もないし、賞金も高いから選手にとってもいい。だからハイナンには絶対に出る」と、大門監督は話していた。

 

チームや選手にとって良いレースを選ぶことも、監督として重要な仕事だ。UCIプロコンチネンタルチームに昇格したNIPPO・ヴィーニファンティーニは、もう昨年までのような日本のチームではなく、日本から世界へと羽ばたいたインターナショナルなチームなのだとはっきり感じた。

 

大門監督はすでに1年先、2年先を見つめている。「2016年につながることが、自分にとってはすごく大事。2015年、2016年とやって、プロコンチネンタルチームとしての基礎を固めて、それで2017年、2018年へとつなげていたいと思っている。だがやはり、そのためには日本人選手が強くならないとダメだなと思っている。1人でもいいから、強い日本人は必要だ」

 

ツアー・オブ・ジャパンの期間中、日本人選手たちの走りを常に気をかけていた大門監督は、将来NIPPO・ヴィーニファンティーニでスターになるような強い日本人選手を探していたのだろう。あるいは、青い鳥はもう近くにいるかもしれない。

 

 

● TOJ総集編は『BSフジ』で6月20日(土)14:00~14:55放送!

http://www.bsfuji.tv/top/pub/toj.html

ナカジ編集長が山本、黒枝、ポッツォに独占インタビュー!

■山本元喜「日本のレースで日本人が活躍しなきゃいけない」

CS:毎日書かれているブログを読んだんですが、キャプテンのポッツォといりいろやり取りしているんですね。指示をもらってそう動く。今回の仕事としてはアシストですか?
山本(以下Y):アシストもありますが、総合も狙えるなら狙いたいと思っていました。TOJの場合、アシストできるようなステージは激しくなんで。


CS:激しくないというのはレースとして?
Y:レースの動きとして激しくないですね。メインでアシストしていたのは美濃でした。フィニッシュが平坦なので、集団ゴールになる。アシストをしていても大きくタイムを失うことがないです。それ以外のハードなステージは自分が前に残るために走っていたというイメージです。


CS:順位というのは総合で少しでも上の方でレースを進めたいということですか?
Y:はい。まあ、ほとんど富士山ステージで決まるようなものなんですけどね(笑)。ただ、富士山ステージ終了時点で自分は日本人3位でした。でも伊豆で遅れてしまって10位になってしまった。疲れていたのもありますが、うまく自分の中でかみ合わなかったです。油断があった。ランプレ・メリダのフェンと飛び出したんですが、集団が迫ってきたと思って自分は踏むのをやめてしまった。でも、フェンは吸収されなかった。


CS:自分に点数をつけるなら何点ですか?
Y:うーん、20~30点くらいです。反省点が多いです。TOJは力ずくで決まると思っています。力ずくで前に前にいけば逃げが決まる。イラン勢がコントロールを始めると誰もアタックしなくなる。でも、ヨーロッパなら集団をコントロールしようとするチームが現れても、気に食わなかったらバンバンアタックがかかる。ブリッジかける選手がいる。ツアー・オブ・ターキーの時は1時間くらいアタック合戦だったこともありました。ワールドツアーチームがおしまいっていっても、まだアタックがかかるという展開があった。スタートからアタック決まるまでのしどさはTOJの比じゃないです。


CS:今年からチームにフル参戦していますね。どうですか?
Y:春先から入って、ツール・ド・サンルイスが初戦でした。チーム内でもいちばんシーズンインが早かった。レベル高いレースばっかりで引きずり回されて苦しんでいます。ただ、日本のレースに帰ってくると自分が楽に走れているのがわかります。向こうで苦しみを思い出せば、楽に走れます。とはいえ、力がまだ全然たりていない。イラン勢に歯が立たない。日本のレースで日本人が活躍しなきゃいけないと思っています。


■黒枝士揮「厳しいTOJ」

CS:TOJは母国凱旋レースでしたが、率直な感想を聞かせてください。
黒枝(以下K):うーん、冬からヨーロッパではしって、引きずられるレースが多くて。それで体がぼろぼろになっていたのか、自分が思っていたようには走れなかったのが残念です。あまり結果もよくなかったし、走っていた感じも余裕がなかった。


CS:スタート前の目標はなんでしたか?
K:そうですね、個人としてはステージ優勝。美濃、東京で。チームとしては総合を狙っていましたが、イランの強さの前に・・・難しかったですね。自分の体調もよくなかった。


CS:チームで総合狙いのチャパッロは、富士山の前までには大きく遅れなくて、いいタイムで臨めていましたね。
K:チャパッロの富士山ステージのタイムは、今までであれば優勝タイムだった。でも今年はコースレコードが更新されてしまって、厳しいですね。


CS:次はツール・ド・コリアですか?
K:まだ正式には決まっていないですが、予定としてはコリアに行ってそのあとに全日本選手権を走ります。ロードレースだけですね。


CS:チームは昨年から所属していますね、去年と今年で選手生活として変わったことはありますか?
K:生活としては変わっていません。でも、今年からチームがプロコンチネンタルに昇格したことで、参加するレースのレベルが上がりました。その分、体へのダメージが大きいです。全然違います! 


CS:例えるならどんな感じですか?
K:自分はスプリントに自信を持っていました。でも、昨年まで走っていたレースは、スプリントに至るまでのスピードがあんまり速くなかったということに気が付きました。今年走っているレースは、スプリントが始まるまでのスピードについていくために脚を使ってしまい、いざスプリントをする段になると、もう脚が残っていない、スカスカになってしまっているという状態です。もう一段階レベルを上げないとスプリンターを名乗れないなと思いました。


CS:東京ステージでは最終局面まで前方に残れていたんですよね?
K:そうですね・・・。今日のレースはあんまり速くなかったんですが、調子がよくなかったです。それと、ヨーロッパのレースでは引きずり回されるばっかりで勝負勘が鈍っていました。ラスト300mを切ったくらいでいったんペースがゆるんだんです。そこで、右にスペースが空きました。そこからバコーンと行ければよかったんですが、躊躇してしまいました。その判断ミスで後ろに閉じ込められてしまって、自分の走りに自信を持ててなかったです。この反省を次に生かしたいです。


CS:点数をつけるなら
K:うーん、難しいですね。10点・・・。というか点数はつけられないくらい悪かったです。NIPPOとして活躍しなきゃいけないレースだったにもかかわらず、体調を合わせることができなかったです。

 

キャプテン、マッティア・ポッツォに聞く TOJ、黒枝と山本について

CS:キャプテンとして走ったTOJはいかがでしたか?
ポッツォ(以下P):キャプテンとして、チームの動きをチェックして、レースのシチューエーションにあわせてどうしたらいいのかを指示していました。3日間レッドジャージ(山岳賞)を着られたのは嬉しかったです。僕はスプリンターでクライマーじゃないんですが(笑)。最初の3日間は山って言っても山じゃなかった。簡単な上りだった。それよりも幸せだったのは、ニコラス・マリーニが第3ステージの美濃で優勝したことです。彼は速かった。ラスト1kmでドラパックチームのリヤホイールに付くようにと言ったんです。その選択がよかった。


CS:すばらしいアドバイスでしたね!
P:そう!あと、チャパッロ。彼の力を信じていたけれど、数レースしか走っていなかった。今年になってから。Giro dell'Appennino(イタリア)とこのレースだけ。TOJ前は1レースしか走っていないけど彼は強いと思った。リアルクライマーですね。(今年は勝てなかったけれど)来年は彼は富士山ステージで勝てるかもしれない。なぜなら今年は40分台、数年前のバリアーニとアレドンドと同じタイムで走れています。すごく強いですね。
そして僕、(ちょっと残念そうに)。ちょっと風邪気味で臨んだTOJでした。でも、考えないようにしていました(笑)。毎日ハードに闘い、伊豆ではちょっと健康に問題があって、”生き残って”最終ステージを走りたかったけど、そうすればマリーニをアシストしたり、ステージ優勝をねらうことも出来たし・・・。
2年前に初めて、TOJと熊野に参戦するために日本に来てステージ勝って、ポイントジャージも手に入れた。とても日本が好きだよ。また日本に来られて嬉しい。「私は日本が大好きです!」、「ありがとうございます!」(日本語で!)

CS:もうひとつ質問があります。2人の若い日本人選手についてどう思いますか?
P:士揮(黒枝)はマリーニを助けられる選手になると思います。2人とも若い。もう1年闘うことが必要ですね。元喜(山本)は強い。士揮よりも強いと思うけれど、士揮の方がレースの走り方はうまいですね。でも元喜は本当に体力的に強いと思います。それはとても大切なこと。日本でいちばん強い選手の1人になれるんじゃないでしょうか。でも彼はレースで力をどう使うか、気持ちと脚がリンクする必要があります。そうすればとても強い選手になれると思う。すごく速いっていうわけじゃない、でも強いですね。


CS:2人とも、もっとレースを走って、もっとトレーニングすることが必要?
P:いいえ、”練習”が必要です。毎レースで学んでいかなければなりません。ヨーロッパのレースはそれぞれ違いがある。どうレースするのか、アタックやスプリントをどうするのか。そうすれば次に我々が日本に来たときに、より活躍できると思います。

 

 

 

[NIPPO・ヴィーニファンティーニTOJ密着レポート]

■堺ステージhttp://www.cyclesports.jp/articles/detail.php?id=714

 

■いなべステージhttp://www.cyclesports.jp/articles/detail.php?id=716

 

■美濃ステージhttp://www.cyclesports.jp/articles/detail.php?id=728

 

■南信州ステージhttp://www.cyclesports.jp/articles/detail.php?id=729

 

■富士山ステージhttp://www.cyclesports.jp/articles/detail.php?id=730

 

■伊豆ステージhttp://www.cyclesports.jp/articles/detail.php?id=731