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パイオニア・ペダリングモニターシステム 徹底解剖&使いこなしのヒント 第2回

ペダリングモニターシステムの魅力を十分に体感するには、ヘッドユニットと解析サービス「シクロスフィア」をセットで活用することが重要だ。ペダリングモニターで計測したペダリングデータを表示できるヘッドユニットは、現在のところパイオニアのサイクルコンピューターだけで、解析サービスもこのシクロスフィアしかないからだ。

すなわち、パイオニアペダリングモニターは、計測、表示、解析が三位一体となって初めて最高のシステムとなる。そこで今回は、解析サービスに焦点を当て、活用方法や具体的な使い方を紹介する。

第1回をまだ読んでない人は→こちら
text:浅野真則 photo:吉田悠太

ペダリングモニターシステムでパワーの質が分かる

パワーメーターや心拍計などのトレーニング機器を使う目的は、その場でデータを見ながら走ることでも、走行ログを眺めて満足することではない。もちろんそのような楽しみ方もできるが、これだけだと本来のポテンシャルを十分に活用しているとは言えない。高度に活用するなら解析サービスを活用して自分の走りを分析し、今後のトレーニングに生かしていくことが重要だ。

特にペダリングモニターシステムでは、シクロスフィアの使いこなしがシステムを活用できるか否かのカギとなる。

シクロスフィアは、ペダリングモニターに最適化された解析サービスだ。走行距離や時間、平均速度や平均出力といったトレーニングを通してのログが残るのはもちろん、ある特定のポイントのペダリングを地図からたどることもできる。
 

例えば、レースの中でアタックがかかった局面で、自分がどのように走ったのか——例えばダンシングで攻めたのか、それともシッティングでしのいだのかさえも分かる。ここまで解析できるサービスは、ペダリングモニターシステムしかない。

さらには、ペダリング時に脚の力がどれぐらい有効に推進力として生かされているかを示すペダリング効率、ペダリング時の踏力の方向や大きさ、トルクなどの詳細なデータも分かる。ライダーがどのように走り、どのようにペダリングしたかがデータを通じて明らかになるのだ。

これらのデータは、活用しなければあくまで走行中の情報のひとつに過ぎないが、うまく活用できれば好調時と不調時の比較、さらには不調からの脱出のヒントまで提供してくれる。

データのアップロードは、サイクルコンピューターをパソコンのUSBポートに接続して行うことも可能だが、Wi-Fi経由でのアップロードも可能(SGX-CA500使用時)。自宅に戻ってからアップロードするだけでなく、レース会場や出先などでデータをWi-Fi経由でアップロードし、iPhoneなら その場でログを確認することもできる。

 

ペダリングやフォームを見直すきっかけにも



今回、筆者のトレーニング中の走行ログを例に、システムの活用方法の一例を紹介しよう。

この走行データは、アップダウンが連続するやや上り基調の10kmほどのコースでタイムトライアル形式の全力走を行った際に記録されたもの。ひとつは絶不調時、もう一つは調子が回復基調にあるときのデータだ。
両者を比較すると、一般的なパワーメーターで表示されるようなデータだけを比較しても、好調時は絶不調時より数値が軒並み向上していることが分かる。

 
走行ログ好調時
走行ログ好調時
走行ログ絶不調時
走行ログ絶不調時


●タイム(走行時間)向上
16:31→15:49(42秒短縮)
●平均出力(平均ペダリングパワー)アップ
273.0W→325.6W(52.6W向上)
●平均スピードアップ
時速35.9km→時速37.5km(時速1.6km向上)


このうちスピードやタイムは風向などの条件で変わりうるので、一般的なパワーメーターでは出力とタイム、スピードから総合的に判断することになる。もしくは単純にパワーを比較することで好不調を判断するバロメーターとしている人も多いのではないだろうか。

ところが、ペダリングモニターシステムでは、パワーの質を左右するバロメーターであるペダリング効率や平均トルクなどのデータからも好不調を判断することが可能だ。

●平均ペダリング効率向上
43.1%→49.3%
●平均トルク向上
15.5/15.8N・m→18.8/18.4N・m(右/左)


両データを比較すると、これらのデータからも調子が上がったことが裏付けられる。

 

感覚がデータでも裏付けられる

今回調子を崩したのは、フォームを崩したことが原因だった。パワートレーニングを続ける中で「出力に注目して高い出力を出す」という点ばかり気にしてトレーニングを続けた結果、「パワーを出さねば」と無駄な力みが入り、いつしかフォームを崩してしまっていた。そのことに気付かないまま練習を重ねるうち、大きくフォームが崩れ、さらに調子が悪化するという負のスパイラルに陥っていたのだ。
ちなみに、絶不調時から好調への回復局面で、筆者は次のようなポイントを意識し、その結果走りが改善したという実感を持っている。

●ポイント1
シッティング時に脚の力だけでペダルを踏もうとしてしまっていたので、股関節(特に大腿骨付け根の関節)をダイナミックに動かすことを意識するようにした。
→臀部や腰回りの大きな筋肉を使えるようになり、ペダルにしっかりトルクが伝わっていると感じるようになった。

●ポイント2
ダンシングでは、踏む感じではなく、体重をしっかりペダルに乗せることを強く意識。6時以降は踏み脚のじゃまをしないように抜重することも意識した
→ヒルクライムや平坦での加速時にラクにスピードが乗るようになった。出力も出るし、高い出力を維持できるようにもなった。

「ペダリング時に体重がペダルにしっかりと乗るようになった」という実感についてはペダリング効率のパラメーターから裏付けられる。また、「大きな筋肉をダイナミックに使えるようになったことで、高い出力を楽に出せるようになり、長時間持続することができるようになった」という実感についても、メニュー中の平均パワーだけでなく、ペダリング効率が上がっていることからも裏付けられる。
このように、ペダリングモニターを活用することで、今まで感覚に頼りがちだった調子作りを含めたコンディショニングも、データの裏付けを得ながら行うことが可能になる。これまではトレーニングを進めるにしても「この方向性で合っているのか」を確かめるすべは経験や感覚に頼るしかなかったが、数値を見ながら進歩の手応えを得ることで、的外れな方向に努力することは避けられ、効果的にトレーニングを進めることができる。僕はこれだけでもペダリングモニターを使う意味はあると思う。

 


パイオニアペダリングモニターシステム徹底解剖の短期集中連載は、いよいよ次回が最終回。

次回は、シクロスフィアをよりディープに活用し、具体的なトレーニングにどのように結びつけていくかというアイデアの一例を紹介しよう。

第1回はこちら
 
浅野真則●あさの・まさのり プロフィール
「サイクルスポーツ」をはじめとする自転車専門誌やWEBサイトなどで活動する自転車ライター。実業団登録選手としてJエリートツアーに参戦中で、2014年は実業団レースで優勝1回、入賞1回を記録。5年ほど前から日々パワーメーターを活用しながら精力的にトレーニングライドを行っている。ペダリングモニターシステム使用歴は1年ほどで、もっと使いこなすために日々勉強中だ。

 

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