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フランスのデマールがサプライズ優勝! ミラノ〜サンレモ 2016

シーズン最初のビッグ・クラシックは
4年ぶりで天気に恵まれ、
集団ゴールスプリントで決着した

 
Photo: Graham Watson / ANSA / PERI - ZENNARO

295kmの闘いの結末

 
イタリア北部で開催されるミラノ~サンレモ(UCIワールドツアー)は、ラ・プリマベーラ(春)の愛称で親しまれるシーズン最初のビッグ・クラシックだ。2013年は吹雪に見舞われ、その後の2年間も冷たい雨のレースになったが、主催者が開催を土曜日に戻した今年は、ラ・プリマベーラに春の日差しが戻ってきた。

しかし、この日はジェノバに近いリグーリア海沿岸の町アレンツァーノで崖崩れが発生して通行止めになったため、急きょコースを変更し、高速道路を使用して迂回した。このコース変更により距離は4km長くなり、291kmから295kmになった。


ディフェンディング・チャンピオンのジョン・デゲンコルプ(ジャイアント・アルペシン)は怪我で欠場し、開幕前に優勝候補として名前が上がっていたのは、スイスのファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)、世界チャンピオンのペーテル・サガン(ティンコフ)、ティレーノ~アドリアーティコで総合優勝したグレッグ・バンアーベルマート(BMC)、そして一昨年にゴールスプリントを制したアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ)だった。

24歳のフランス人スプリンター、アルノー・デマール(FDJ)は、直前に参加したパリ~ニース(UCIワールドツアー)の第1ステージで区間優勝していたが、降雪でレースが途中で中止になった翌日のステージで、ヒザに違和感を覚えてリタイアしていたこともあり、ミラノ〜サンレモの優勝候補として彼に星を多く付けるレース評論家はいなかった。
 
 
今年のレースで明暗を分けたのは、ゴールまで残り30km地点で発生した落車事故だった。

ミラノから逃げ続けた11人の選手たちは、サンレモまでの長い道程で集団に最大10分半のタイム差を付けたが、リグーリア海沿いの丘越えが始まった時には2分差にまで追い詰められていた。

レース終盤を迎え、逃げを追って緊張する集団では落車が相次ぎ、チプレッサ峠越えが間近に迫った残り30kmで、オーストラリアのマイケル・マシューズ(オリカ・グリーンエッジ)や英国のゲラント・トーマス(チームスカイ)、そしてデマールが巻き込まれる大きな落車が発生した。

幸いこの落車でビッグネームがレースを棄権する事態にはならなかったが、彼らはスピードの上がった集団に復帰するために、多大なエネルギーを費やさなければならなくなってしまった。

集団はチプレッサ峠のふもとで逃げを全て吸収した。チプレッサ峠では地元イタリアのジョバンニ・ビスコンティ(モビスター)がアタックし、英国のイアン・スタナード(チームスカイ)と逃げ出した。

峠を下りきったところで先頭の2人にダニエル・オス(BMC)、マッテーオ・モンタグティ(AG2R・ラモンディアル)、ファビオ・サバティーニ(エティックス・クイックステップ)のイタリア・トリオが合流したが、5人はポッジオまで逃げ切ることはできなかった。

80人程度の集団は1つのまま、ゴールまで残り9kmのポッジオの坂に入った。このゴール前最後の坂を上り切る前に、集団からアタックを成功させたのは、元世界チャンピオンのミハウ・クフィアトコフスキー(チームスカイ)だった。彼は単独でポッジオの頂上を通過し、下りでライバルたちに5秒程度の差を付けて逃げ続けた。

しかし、クフィアトコフスキーはフラム・ルージュを独走で通過することなく、カンチェッラーラの追撃で集団に吸収されてしまった。そしてノルウェーチャンピオンのエドワルド・ボアソンハーゲン(ディメンションデータ)を先頭に、レースは最後の1kmを迎えた。

その闘いのちょうど中間地点で、ネオプロのコロンビア人スプリンター、フェルナンド・ガビリア(エティックス・クイックステップ)が、2番手を走っていたバンアーベルマートの後輪に接触して転倒。彼のすぐ後ろを走っていたアルカンシエルのサガンとカンチェッラーラはかろうじて巻き込まれずに済んだが、スプリントに参加することはできなかった。

ガビリアの落車で緊張の糸が切れたスキを付いて、最初にスパートしたのはベルギーのユルフン・ルーランツ(ロット・ソウダル)だったが、後方からスパートしたデマールにあっさり追い抜かれてしまった。デマールには英国のベン・スウィフト(チームスカイ)が付いていたが、彼にはフランス人を出し抜く力は残っていなかった。
 
 
残り30kmの落車で遅れたデマールは、チプレッサ峠で集団に追いついていた。そして最後のゴールスプリントを制し、祖国フランスにサンレモで1995年のローラン・ジャラベール以来、21年ぶりの勝利をもたらした。同じフランス出身のナセル・ブアニ(コフィディス)は、デマールの後方でハンドルを叩いて悔しがっていた。彼はメカニカル・トラブルで、最後のスプリントを競うことができなかったのだ。

レースの流れを変える落車を起こした21歳のガビリアは「あれは僕の過失だった。とてもいい位置取りだったのに、どうやってスプリントしようかと考え始めて、一瞬集中力を失ってしまった。それでバンアーベルマートの車輪に接触してしまったんだ」と、事故の状況を語っている。そのミスがなければ、初出場のガビリアがミラノ~サンレモを制するサプライズがあったかもしれない。


■24歳でミラノ~サンレモを制したデマールのコメント「(落車で)ゲームは終わったと思った。僕はチプレッサで素晴らしい脚を持ち、その後、ラダニュース、レザ、コノバローバスを見つけ、彼らがポッジョのふもとで元の位置に戻してくれた。

そこでエネルギーを費やしてしまったと思っていたが、その苦労にもかかわらずポッジョはうまく上れた。誰もが疲れ切っていたが、僕には失うものがなかった。

通常よりも遠くからスプリントを始めたとき、レースがどう展開しているのかわからず、逃げが全員捕まっていたのかどうか確信がまったくなかった。しかし、レース先導車が勝利に向かってスプリントしていると教えてくれたんだ。

すべての自転車選手が勝利を夢見る5大クラシックの1つ、ミラノ~サンレモで勝つことは良い経験を与えてくれたと思う」


 

チプレッサ峠の疑惑

驚きの勝利の翌日に、デマールの栄光には陰りがさした。彼はゴールまで残り30kmの落車に巻き込まれたあと、集団に復帰するため、チームカーに捕まってチプレッサ峠を上ったのだど、他の選手たちから告発されたのだ。もちろん彼はそれを否定している。

イタリアのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)が、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで失格になったときのように、確固たる証拠となる映像でも出てこない限り、今後デマールが処罰されることはないだろう。
 

第107回ミラノ~サンレモ結果

1 アルノー・デマール(FDJ/フランス)6時間54分45秒
2 ベン・スウィフト(チームスカイ/英国)
3 ユルフン・ルーランツ(ロット・ソウダル/ベルギー)
4 ナセル・ブアニ(コフィディス/フランス)
5 グレッグ・バンアーベルマート(BMC/ベルギー)
6 アレクサンダー・クリストフ(カチューシャ/ノルウェー)
7 ハインリッヒ・ハウスラー(IAM/オーストラリア)
8 フィリッポ・ポッツァート(サウスイースト・ベネズエラ/イタリア)
9 ソニー・コルブレッリ(バルディアーニ・CSF/イタリア)
10 マッテーオ・トレンティン(エティックス・クイックステップ/イタリア)
 
 
(http://www.milanosanremo.it)