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メルセデス・ベンツ×キャノンデールトップ対談! ビジネスパーソンが語る“6ホイール”

6ホイールというフレーズを聞いたことはあるだろうか。クルマを利用することでよりスポーツバイクライフを楽しもうというコンセプトだ。今回は6ホイールの各ジャンル「クルマ」からはメルセデス・ベンツ日本代表取締役社長兼CEO 上野金太郎 氏、「スポーツバイク」からはキャノンデール・ジャパン代表取締役社長 池田 新 氏の両トップが語り合う、“ビジネス6ホイール”インタビューをお届けする
 
text:中島丈博 photo:佐藤正巳

2人ともサイクリストでトライアスリート

CS:まずはお二人の自転車歴を教えていただけますか?
上野:僕の自転車歴は、メルセデス・ベンツ日本に入社後、20代なかばにパナソニックのロードバイクを手に入れて、つくばの耐久レースや琵琶湖一周などにチャレンジしました。社内に自転車部があり、その仲間と。周りはどんどん海外メーカーのバイクに買い換えていきましたが、僕はずっと最初の1台を乗り続けていました。つぎにミヤタのMTBを購入。未だに持っています。

ちょっと間が空きまして4年ほど前でしょうか。トライアスロンをはじめるきっかけがあって、サーヴェロ・S5を購入しました。中古ですが。そこから自転車熱が再燃! ついこの間、キャノンデールのスーパーシックスエボをカスタムラボ(カラーやパーツをオーダーできるシステム)で注文したんです。
 
CS:一気に再燃しましたね! このカラーのコンセプトは?

上野:少し前に4輪レース用のヘルメットをカラーオーダーしていたのですが、このバイクもそれに合わせたカラーリングにしました。それがチャコールグレーとマットブラックのロゴ、グロスイエローのラインが入ったデザインですが、ワイヤの色など細かく指定できて楽しいですね。妻からは、これ以上バイクが増えるの?と、チェックが入っているのですが……。12歳の頃レーシングカートをやっていたので、ハンドルスポーツにはなじみがあるんです。完成したら社内で自慢しようと思っています。すごく楽しみですね。
 
サイクリングの面では、思い付きで琵琶湖一周にでかけたこともあります。若かったですね。最近だとツール・ド・東北にも参加したのですが、残り20kmのところでメカトラブルでリタイヤしてしまいました。すごく悔しかった、ここまで走ったのに! と思いました。
 
CS:池田社長は?

池田:前職はアシックス、そのときにランニングを始めました。その後、アシックスオセアニア社長だったときにトライアスロンをはじめて、そこで自転車と出会いました。毎朝ランニングか、ローラー台トレーニングのどちらかをやっています。

ローラー台をやりながら日経MJの電子版を読むというのが日課です。ちょうど日経MJの更新頻度に合わせてローラー朝練をするようにすると、ペースがちょうどいいんです。ケイデンスが落ちないようにだけ気にしています。ちょっと変態チックなところもありますが、アイアンマンに出場するようになってからはそれが普通になりました。
 
上野:僕はこういう風にならないようにしようと思っています(笑)。冗談ですが、そこまで追い込めるというのはうらやましいですね。ローラーやりながら何かをするというのは……。考えられないですね(笑)。
 
 

コラボレーションのきっかけは鹿屋体育大学

CS:現在、メルセデス・ベンツもしくはキャノンデールのオーナーに対して、イベント会場でメカニックサービスを行うコラボレーションキャンペーンを行っていますが、このアイディアはどちらからお話があったのでしょうか?

池田:僕の方からです。昨年1月に上野社長の本「なぜ、メルセデス・ベンツは選ばれるのか?」を読んでものすごく感銘を受けました。それで、モータージャーナリストの河口まなぶさんにお願いして、お会いする機会を作っていただきました。

その本を読むきっかけが、メルセデス・ベンツのプロモーション手法が、いままでのイメージを覆すような斬新なものだったからです。アニメーションを用いたり、マリオとコラボレーションしたものだったり。CMを記憶している人も多いのではないでしょうか。そこに昨年6月。鹿屋体育大学をサポートするというニュースが舞い込んできて、さらに衝撃を受けました。キャノンデールがバイクをサポートしている大学だからです。自分が読んでいた本の主人公と、同じチームをサポートすることになったというのは、何かの巡り合わせだと感じたのがきっかけでした。

でもコラボレーションといっても、一緒にイベントに出るというだけではなく、もうひとつインパクトが欲しいと思った。そこで、サイクルイベントの会場においてキャノンデールのオーナー、もしくはメルセデス・ベンツのオーナに対して、弊社のメカニックがイベント会場でメカニックサービスを行うという内容にしました。
例えば、外してある前後輪を自分で取り付けるためのノウハウを持っているとしても、それを自分でやることにどこか不安があると思うんです。そこをプロのメカニックに任せることで、思いっきりイベントを楽しめるようになる。そういう提案をさせていただきました。
 
CS:その提案を聞いてどう思われましたか?

上野:最後の部分、走る前に自分で組み立てて不安だ。というお話しがありましが、僕は一緒に走りに行く仲間に自転車に詳しい人がいるので、お願いしてしまいます。とはいえ、お願いしておきながら不安がないわけじゃない。組んでもらっておいてこんなことを言うのは申し訳ないのですが。

と、いつも思っていたところにこのコラボレーションの提案をいただいた。その不安を解決できるものです。より信頼度の高い人にやってもらえるというのは重要。
自転車に限らずいろいろなスポーツをクルマを通じてサポートすることで、新しい試み、ライフスタイルをサポートする存在でありたい。クルマを通じて広げていきたいと思っています。ゴルフ、アウトドア、トライアスロン。どれにおいてもそうです。その点において、このコラボレーション内容が腹に落ちた。

それに、このコラボレーションは第3者から売りつけられたものじゃない。自分がもともとサイクリストで、屋久島で鹿屋体育大学の選手に助けられて、その恩を返したいと思い、サポートをはじめて、そしてキャノンデールさんと巡り会った。縁があるわけです。
 
メルセデス・ベンツが高額商品で縁遠い存在だったところから、より多くの人たちに購入検討対象にしてほしい。その人達にどうやってリーチするかというのは長年の課題だった。それがこのご縁で1本の線につながったんです。
 
六本木メルセデス・ベンツ コネクション前にて
六本木メルセデス・ベンツ コネクション前にて

「クレイジー」が新たな顧客層を切り開く

池田:トラディショナルなメルセデス・ベンツのイメージを持っている人からすると、AクラスのアニメーションCMをはじめ、新しいことをするリスクを負いながらも新しい顧客を開拓していこうという強い意志を感じました。

キャノンデールのポリシーに「クレイジー、パッショネイト、パフォーマンス」というのがあるのですが、僕は「クレイジー」が一番好き。最初は人々からそう思われるようなことに果敢に挑戦し、それをカタチにしてきたという歴史があります。上野社長がやられていることもきっと「クレイジー」と言われたと思います。それでも挑戦し、実績を上げているところに感銘を受けました。
 
CS:一連のCMシリーズは社内ではかなりの議論が巻き起こったのでしょうか?

上野:セールスマーケティングの長だった時にあのCMを製作しました。無理は承知。ただ、何をやりたいのかが大切だった。われわれは商品には絶対の自信があります。なので、仮にあの奇抜なCMで引き寄せられてメルセデス・ベンツのクルマを買ってしまったとしても、それはいい買い物になる自信がありました。

われわれのブランドコアは「ダス・ベスト・オーダ・ニヒト(最善か無か)」。一連のアニメーションCMもいちから妥協無く作り上げました。それゆえ、ここまで詰めて作り上げたもので、商品も良くて、それで売れなかったら仕方ないという覚悟がありました。もちろん失敗できないという思いも大きかったですけどね。社内で完成したCMを最初に見せたときは、全員が口をぽかんと開けていましたが……。

結果的には、新世代のメルセデス・ベンツが登場するタイミングを強く印象づけることができました。多方面から親しみを感じてもらいたいという狙いは、達成できたと思います。国内のみならず、海外でも使われたほどです。マーケティングを追求していく。それは何が目標か、売れることが最も大切。売れなかったらそのマーケティングは失敗です。ただの賑やかしになってしまったら、的外れだったということになります。
 
池田:コラボレーションスタート以降、キャノンデールとしても学ばせてもらう事がとても多いんです。先日、博多阪急の前で、メルセデス・ベンツとキャノンデールのコラボ展示会を行いました。そこを訪れたお客さんの反応でとても興味深いものがありました。メルセデス・ベンツのクルマの価格が書かれたボードを見て、700万円のクルマが残価設定ローンで月々の支払いはこれくらいとある。その横に39万円のキャノンデールのバイクが置いてある。そこでのお客さんの反応は「自転車って高いのね!」というものだったんです。当然クルマの方が高いのに! 聞けば残価設定ローン表示を集中的に使い出したのは新世代メルセデスを発表したタイミングだったそうなんです。ユーザー層を若い世代へ広げたいというタイミングだったと。
 
上野:残価設定ローン、月額いくらかという訴求をしようと思ったのは、スポーツバイクの売れ方を見た部分があります。クルマ離れが叫ばれていたタイミングで100万円前後の高級バイクが売れている。とても不思議だった。ふと家計を見て見ると携帯電話料金が家族4人で月々数万円かかっている。家計の内訳には優先順位があり、その中にどう入れてもらえるかが課題だと考えました。食費、光熱費、携帯代と並ぶように”クルマ”を入れてもらうための方法を考えました。そこでローンの内容に車両価格だけではなく、保険も入れよう、税金も。全部まとめたパッケージを作りました。

また、かつては輸入車はすぐ壊れて修理費がかかるというイメージがありました。今はそんなことはないのですが、そこで3年間修理、消耗品の費用を全部入れた「メルセデス・ケア」というものを再訴求した。さらに、4〜5年間のメンテナンスや故障、トラブル対応のパッケージを組み合わせ、ファイナンスの商品パッケージのなかに組み込みました。それを始めた当時は3割程度の利用率だったのが、5割になりました。またこの言い方をリースではなく、残価設定ローンという言い方にした。これによって2つのメリットがあります。1つはオーナーシップを感じてもらえる、もうひとつは大事に乗ってもらえるので中古車としての価値が落ちない。これが新世代メルセデスをどう売ったらいいのかというノウハウを集めた結果です。
 
池田:そのアイディアをキャノンデールでも実現したいと思い、そのアイディアを拝借させていただきました。モーターサイクル購入の場合、ローン利用率は5割。ところがスポーツバイクにおいてはたった5%しかない事がわかりました。幼少の頃からの自転車購入体験を振り返ると、即金で購入するものというのがあります。そこで、スポーツバイクの価格を見てしまうと、とても買おうと思わなくなってしまう。なのでキャノンデールも月額訴求を行うことにしました。
 
 

6ホイールライフの魅力は?

鹿屋体育大学のチームカーとしても使われているCLAシューティングブレーク
鹿屋体育大学のチームカーとしても使われているCLAシューティングブレーク
メルセデス・ベンツ純正ルーフキャリアもオプションで用意されている
メルセデス・ベンツ純正ルーフキャリアもオプションで用意されている
上野社長がオーダーしたキャノンデール・スーパーシックスエボ
上野社長がオーダーしたキャノンデール・スーパーシックスエボ
CS:実際にクルマもバイクも手に入れたとき、そのメリットをどう考えますか?

池田:都会でバイクに乗るだけだと、コミューターとしての使い方になってしまう。交通量も信号も多い。あるデータによるとスポーツバイクを買った人のうち1年以上乗り続けている人は半数にも満たないというのがある。ではどうやったら楽しみ続けてくれるのか? それには「心に残る、印象的な経験」が欠かせないと考えます。

それは都会の真中ではなく、自然豊かで、景色がいい。さらには、信号も少なく走りやすい道でのサイクリングだと思っています。その経験ができれば、スポーツバイクに乗り続けてくれると考えています。そのフィールドまでの移動手段としてクルマという存在はとても心強いものと言えますね。それと私自身、輪行が苦手で……。クルマであれば、最低限の分解だけで、梱包などを気にせず積みこむことができるというのも魅力です。
 
上野:たまにしかロードバイクに乗らない僕と、いつも乗っている体力のある人が同じコースを走ろうとなったとき、集合地点にたどり着くまでになるべく体力を温存したい。せっかくの休日にちょっと遠くへ走りに行くのだから、あんまり荷物の心配もしたくない、帰りに温泉で汗だって流したい。ちょっとわがままかもしれないんですが、せっかくの休日を満喫したいなって思いますよね。目的地まで自走で往復するのも、それはそれですばらしい。でもクルマを使えばまた違った自由度の高いプランを組むことができると思うんです。自転車遊びの幅を広げることができると。
 
 

サポートしているシエル・ブルー・鹿屋の塚越さくら選手がリオ五輪代表に内定!

六本木メルセデス・ベンツ コネクションで行われたチーム結成発表会。中央が日本代表の塚越さくら
六本木メルセデス・ベンツ コネクションで行われたチーム結成発表会。中央が日本代表の塚越さくら

CS:サポートしているシエル・ブルー・鹿屋の塚越さくら選手がリオ五輪代表に内定しました。どんなお気持ちですか?

池田:もちろんすごく喜ばしいことですね。試乗会を何度か手伝ってもらったことがあるのですが、とても接客がうまい! 黒川監督の教育のたまものだと思います。そこで一緒に試乗をした人たちはみんな彼女のファンになってしまいます。そんな彼女がリオ五輪に出場できるというのは心の底から応援したいですね。
 
上野:正直、彼女たちの過去のレースを見たことがあるわけではありませんが、プレゼンテーションなどで会う彼女は礼儀正しく真面目。芯がしっかりしていますし。五輪に出たことによって有名になった人にお会いすることはあっても、自分の知り合いが五輪代表に内定するという経験はなかなかない。出場を知ってから「本当に!?」と思ったくらいに感動しました。

すごいと思うのは「五輪に出場しそうだ」と言われていて、本当に代表に選ばれるということ。周りからのプレッシャーに負けてしまう人が多いはずですし。われわれがサポートしている選手が出場というのは鼻が高いです。また社員の士気も上がりました。社内の自転車好きたちは自分のいる会社が日本代表をサポートしていると、ものすごく喜んでいます。
 


 

池田新(Ikeda Arata):1969年生まれ(47歳)。東京大学出身。アシックスのマーケティングのトップとして同社初の直営店立ち上げをリード。2013年にキャノンデール・ジャパン代表取締社長に就任。趣味はトライアスロンでアイアンマン2回完走。

上野金太郎(Ueno Kintaro):1964年生まれ(52歳)。早稲田大学出身。87年に大学卒業後、創業間もないメルセデス・ベンツ日本に入社。以後、営業、広報、ドイツ本社勤務、社長室等を経て、2012年に代表取締役社長 兼 CEOに就任。趣味はゴルフ、トライアスロン。



キャノンデール http://www.cannondale.com/ja-JP/Japan
メルセデス・ベンツ http://www.mercedes-benz.co.jp/