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ジロのすみっこから、僭越(せんえつ)ながらお届けします その2
2016.05.23
過酷な闘いを続ける選手に帯同するスタッフの仕事もまた過酷
チームスタッフの朝は早い。特に5月21日の第14ステージのような距離210㎞と長いステージとなるとなおさらた。レース時間が長くなる分、スタート時間も早いので、ホテルからスタート地点までの移動時間、準備に必要な時間などを逆算。8時30分にはチーム全員でホテルを出発し、スタート地点であるアルパーゴまで移動。チームバスを先頭に高速道路を隊列を組んで進んでいく。自分はといえば、寝たのが0時だったのだが、時差ボケで朝の5時過ぎには目が覚めてしまい、寝坊とは無縁であった。
この日、いちばんの早起きはメカニックだ。トラックにしまってあったバイクを、チームカーのルーフキャリアに乗せ換え、トラックとバスを軽く洗車。そしてマッサーたちがチーム関係者全員のスーツケースをメカニックトラックに積み込んで、その間に選手たちは朝食をとっている。というのを8時30分までに終わらせて、スタートへ出発しなければならないのだ、組織運営としてのノウハウがいくつも詰まっているなと感心してしまう。
スタート地点に到着すると、チーム関係車両駐車エリアにさっとクルマを止めて、バイクを走れる状態に準備する。と、さらっと説明したが、スタート地点についてからもちょっとごたごたする。道路は完全封鎖されているのだが、キャラバン隊やオーガナイザーのクルマ、大会スポンサーのVIPカー、警察車両、チーム関係車両、メディアが乗ったクルマと、小さな町の道路を埋め尽くす大量の車両が流入しているので、交通整理が絶対に必要になる。自分の印象だとツールは理路整然とされているが、ジロはベースとして決めごとがあるものの、その場で臨機応変にアレンジしてどうにかしている感じ。
チームカーの隊列が駐車スペースに進んでいくと、なぜかその手前のスーパーの駐車場にいったん避難を始めた。なんでかなー、と思っていた1分後にはキャラバン隊の隊列が正面からやってきて駆け抜けていく。ちょっと誰かがもたついたらキャラバン隊の行き場はなくなるし、チームバスもかなりの距離をバックしなきゃいけなくなったはず・・・。なんてアバウトな!と思うのは日本人だからなのかもしれない。
そんなちょっとした出来事を経て、チーム車両の駐車場所を確保。バイクをルーフキャリアから降ろして、選手の準備が整うまでに最終調整。メカニックの動きを見ていると、いつも調整しているか、洗車している。テレビ中継ではチームカーに乗って、トラブルに対処しているところしか映らないが、実際にチームと移動していると洗車、調整、洗車、調整。ととにかく忙しそう。
最難関山岳ステージということで、リヤスプロケットのローには29Tが装備されていた。フロントインナーは36T。34Tは使わないという。翌5月22日の第15ステージは10kmの山岳タイムトライアルが行われたが、ギヤ比はそのまま。リアディレーラーにロングケージは使っていなかった。
準備同様、撤収の手際の良さも大切
レースが終われば、すぐに撤収することも大切。いち早くホテルに到着して選手を休ませるため、そしてメンテナンスの場所と、時間をホテルでしっかり確保するためだ。バイクはもちろんチームバス、チームカーなどの洗車も行う。田舎道や山坂を走り続けたクルマはホコリや虫で汚れてしまう。スポンサーの名前を全身にまとったチームカーは常にピカピカじゃなきゃいけないのだ。
ニッポ・ヴィーニファンティーニに3人いる日本人メカニックの中で、福井響メカが今回のジロ全日程帯同している。彼の手を見せてもらったが、洗剤、ケミカル、タイヤとの摩擦などで傷んでいるように見えた。本人はさほど気にしていない様子だったが、メカニックの仕事量を物語っているように感じられた。