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パイオニア・ペダリングモニター 新機能を使って本格的トレーニングを始めよう!(後編)

パイオニアペダリングモニターのトレーニングアシスト機能は、手軽にパワートレーニングを行うためのノウハウが詰まっている。今回はその機能をフル活用し、目標レースに向けたトレーニングを行うためのアイデアを紹介する。
 
text:浅野真則 photo:吉田悠太
presented by パイオニア

ペダリングモニターはロングライド志向の人にもおすすめ

自転車の楽しみ方はさまざまだが、ペダリングモニターに興味がある人はレース志向が強いのではないだろうか。だが、「ペダリングモニターは必ずしもレーサーのためだけのものではない」というのが筆者の考えだ。

自分のFTP(1時間持続可能な平均最大パワー)を知ることは、自分が垂れない限界のペース(スピードではなくパワーを指標としたペース)を知ることにつながる。スピードを指標にすると上りでオーバーペースになってしまうので、ロングライドではパワーを一定に保つような走り方、特にFTPを超えないように走ることが重要になる。したがって、ペダリングモニターのパワーメーターとしての機能を活用すれば、ロングライドのペース管理もできるのだ。

また、ペダリングの効率を上げることで、同じ出力をより少ないスタミナで出せるようになれば、ロングライドをよりラクに走れるようにもなる。そうすれば、より長く、より過酷なコースに挑戦できるようになるはずだ。

そこで今回は、読者自身が目標としているイベントの種類ごとに、トレーニングアシスト機能を活用した基本的なトレーニングプランを提案したいと思う。
 

なりたい自分になるには? 実走派ライター浅野流・目標別強化術

今回ターゲットとするのは、ヒルクライム、ロングライド(エンデューロ含む)、ロードレースの3種類のイベント。

これらはいずれも走り方が異なるため、求められる能力も異なる。したがって、それぞれのイベントに特化したメニューをこなすのが効果的だ。

とはいえ、最低限の体力的なベースがないうちにこれらのトレーニングを行うのは難しい。

そこで、ここでは各種目共通するフィジカルベースアップトレーニングに役立つメニューと、目的ごとに特に重点的に取り組みたいメニューをトレーニングアシストのなかに用意されているプログラム(例 B11:FTP計測)から紹介する。

 

パワートレーニングの基本となる自分のFTPを知ろう

パワートレーニングは、ライダーの出力(パワー:W)を指標に、運動強度を決めて行うトレーニング。強度を決める物差しとなるのがFTPだ。

FTPとは1時間持続して出せるパワーのこと。実際に1時間TTをして測ってもよいが、20分TTの出力の95%を簡易的にFTPとしてもよい。より正確に測りたい場合は、トレーニングアシストにFTP計測のメニューもあるので活用しよう。

B11:FTP計測
FTPを高い精度で推定するため、高ケイデンスで1分×3セット→レスト5分→5分全力走→レスト10分→20分全力走の順で行い、20分全力走の平均最大パワーの95%をFTPとする。

FTPはトレーニングを続けるうちに変化するので、月1回程度はFTPを再計測し、適正な強度でパワートレーニングを行うようにしよう。
 

全種目共通のベーストレーニング

トレーニングは、体力面を向上させるフィジカルトレーニングと、ペダリングなどの能力を高めるスキルトレーニングとに大別される。

このうちフィジカルトレーニングでは、強度の低いベースづくりのトレーニングを重ね、少しずつ高強度のメニューをプラスしていくのが基本的な流れだ。

いきなり高強度の練習をしようと思っても、体力的に厳しいだけでなく、トレーニングの効果も高めにくいからだ。

トレーニングアシストの中で「トレーニング入門」に紹介されている内容は、トレーニングの基礎知識を身につける上でとても役立つ。中でもパワートレーニングを行うならA1の時間ベーストレーニングの考え方をしっかり身につけたい。

スキルトレーニングには、ペダリングトレーニング入門の内容が役立つ。ここで紹介されているメニューはすべての種目に通じる。どのイベントを目標にする場合もまんべんなく実施したい。特に下記の3つのメニューには重点的に取り組もう。
 

トレーニング入門

A1:時間ベーストレーニング
トレーニングでは運動強度と時間をベースにトレーニングを組み立てるのが基本。基準となる時間に対して目標のパワーを保つ練習を行うとよい。ベースづくりという意味では10分走や20分走など少し長めの時間をパワー基準の一定ペースで走れるように繰り返し練習しよう。
慣れてきたらこのメニューを複数回繰り返したり、前回紹介したMMPチャレンジの10分または20分をベーストレーニングとして取り入れてもよい。
 

ペダリング入門


C3:6時を意識した基本ペダリング
3時の位置で最大の力を加え、4時、5時で脱力を意識する基本的なペダリングスキルを身につける
C4:引き脚ペダリングテクニック
引き脚側で無駄な力が入っていると、引き脚側の脚が重りとなって踏み脚の踏力を打ち消してしまう。引き脚側を抜重する感覚を覚える
C5 :高ケイデンスペダリング
高ケイデンスでのスムーズなペダリングを意識する練習
 

ヒルクライム向けのトレーニング


【ねらい】1時間程度のTT力強化とともに、ダンシングとシッティングのペダリングをマスター

ヒルクライムは、基本的には「上りコースで行われるタイムトライアル」である。
ライバルとの順位を競うならアタックを仕掛けたりそれに対応するケースも考えられるが、よりよいタイムで走ることを目指すなら、自分のFTP付近のパワーで走り続ける能力が求められる。
また、上りコースなので、平地とは違ったペダリングスキルを身につけることも重要だ。ダンシングとシッティングの使い分けだけでなく、アタックする際の「攻めるダンシング」と体重を乗せてペダリングし、筋肉を休める「休むダンシング」の使い分けもマスターしたい。

●パワートレーニング入門
B2:クライミングトレーニング
上りコースでケイデンスを目安にパワー値を一定に保って走る。斜度の変化に応じてこまめにシフトチェンジし、パワーとケイデンスをなるべく一定に保って走る(スピードは斜度がきつくなるほど遅くなる)。
B5:平均最大パワー(MMPチャレンジ5分、10分、20分)
FTP強度で走り続ける能力を高めるには、20分走をベースのメニューとして繰り返し行うのが効果的。レースが近づくにつれて10分走や5分走を取り入れ、さらに高いパワーを出せるようにしたい。

●ペダリングトレーニング入門
C6:ヒルクライムトレーニング

上りコースでスムーズなペダリングを意識する練習。
C7:ダンシングトレーニング
ペダルに体重を乗せるだけでなく、筋力も動員してスピードを上げる「攻めるダンシング」と、ペダルに体重を乗せて極力筋力を使わずに脚を休める「休むダンシング」の違いを意識する練習。
 

ロングライド・エンデューロ向けのトレーニング


【ねらい】FTP向上で長時間淡々と走り続けるスタミナを養う

マイペースで規定のコースを完走することを目指すロングライドでは、時には10時間近い長時間、一定の出力で巡航する能力が求められる。エンデューロで順位を競うような先頭集団で走る場合は、アタックや集団での駆け引きなどロードレースに近い要素が入ることもあるが、ベースとして求められるのは長時間走り続けるスタミナだ。
また、ペダリング効率を高めることで、同じ出力をラクに出せるようにもなるので、ペダリングトレーニングにも精力的に取り組もう。

 

B3:エアロダイナミクストレーニング
一定のパワーを保ちながら、ハンドルの持ち方を変えて走る。エアロフォームで高速巡航する際にもパワーを落とさずに走れるようにする。
B5:平均最大パワー(MMPチャレンジ10分、20分)
FTP強度で走り続ける能力を高めるには、20分走をベースのメニューとして繰り返し行うのが効果的。エンデューロなら10分程度のやや高強度のMMPチャレンジも入れ、より高い強度で走れるようにしたい。

 

ロードレース向けのトレーニング


【ねらい】アタックに応戦し、自ら仕掛けるための短時間高強度にフォーカスする

ロードレースでは他のライダーと集団を作って走ることが多いが、レース中 は駆け引きがあり、アタックやペースアップなどによって絶えずペースが変化するのが特徴。

一定ペースで走れないことが多く、ペースの変化に対応することがカギとなる。また、最後はゴールスプリントになることも多く、他の種目に比べて短時間で爆発的なパワーを発揮する必要もある。ペース変化への対応と勝負を決めるスプリント力を強化するための短時間高強度トレーニングに重点的に取り組もう。
 

B3:エアロダイナミクストレーニング
一定のパワーを保ちながら、ハンドルの持ち方を変えて走る。エアロフォームで高速巡航する際に高いパワーを保って走れるようにするのがねらい。
B5:平均最大パワー(MMPチャレンジ10秒、30秒、1分、3分、5分)
繰り返しのアタックやペースアップに対応する1分、3分、5分のMMPや、スプリント力につながる10秒、30秒のMMPの強化。継続時間の長いものから取り組みはじめ、レースが近づくにつれて少しずつ短時間高強度のメニューをプラスしていく。
B7:パワー値を用いたインターバルトレーニング
目標パワーでインターバルトレーニングを行うことで、繰り返しのアタックに対応する耐性を養う。

 

インターバルタイマーでインターバルトレーニングが簡単に

サイクルコンピューター(SGX-CA500)にはインターバルトレーニングを行うときに便利なインターバルタイマーという機能が搭載されている。これは、インターバルトレーニングのモガキとレストそれぞれの時間と目標パワー、何セット行うかを任意に設定できるというものだ。さらに、ウォーミングアップやクールダウンの時間のほか、モガキのパートの目標パワーをセットごとに●Wずつ上げるというエスカレーションを設定することもできる。

トレーニングアシスト機能とは異なり、サイクルコンピューターから設定できるので、Wi-Fiが使えない環境でも簡単にメニューが作れる。

例えば30秒500W−レスト30秒のインターバルを10セットというメニューを組みたければ、
・インターバル時間:30秒
・インターバルパワー:500W
・エスカレーション:0W
・レスト時間:30秒
・レストパワー:250W
・インターバル回数:10
とし、メニューを保存すればよい。あとはメニュー行う前にトレーニング開始のボタンを押せば、タイマーが作動してアップが始まり、モガキやレストの開始を知らせてくれるだけでなく、きちんとラップも取ってメニュー終了までサポートしてくれる。ロードレース向けのインターバルトレーニングを行うのにぜひ活用したい機能だ。
 

インターバルタイマーを活用したビルドアップトレーニング

インターバルタイマーでは、レスト時間を0にすることもできる。この機能とエスカレーションを活用すれば、ビルドアップトレーニングもできる。
ビルドアップトレーニングとは最初は抑えめのペースで走り、時間がたつごとにペースを上げ、最後はオールアウトまで追い込むというトレーニングだが、調子に関係なくその日の限界まで追い込めるというメリットがある。

例えば20分のビルドアップトレーニングで、入りを270Wにして5分ごとに10Wずつ上げていき、最後は300Wまで上げるというメニューを作る場合、
・インターバル時間:5分
・インターバルパワー:270W
・エスカレーション:10W
・レスト時間:0
・レストパワー:0W
・インターバル回数:6
とすればよい。

ペダリングモニターはビギナーにも優しいトレーニングシステム

パワートレーニングは効率よく強くなるために欠かせない。ペダリングモニターも105仕様のモデルが登場するなど低価格化が進み、パワートレーニングはホビーサイクリストにとってもより身近なものになりつつある。

しかし、多くのサイクリストはペダリングモニターを十分に活用できているとは言えないのが現状だ。パワーやペダリングのデータが表示・記録されても、そのデータをどう活用すればいいのか分からない人が多いからだ。

トレーニングアシスト機能やインターバルタイマーは、ペダリングモニターという高度なトレーニングシステムを簡単に活用できるようにユーザーをサポートする機能と言える。特にトレーニングアシストは基本的なトレーニングに関する知識や具体的なメニューも提供し、パワートレーニングをより身近なものにする、これまでのトレーニング機器にはなかった機能だ。

トレーニングアシストを活用すれば、ペダリングモニターは決して“高価なおもちゃ”には成り下がらない。自分の現状だけでなく、「なりたい自分に向けて何をすればいいか」という明確な道筋を示してくれるからだ。このことは、特にビギナーにとって、さまざまなパワーメーター・トレーニング機器の中からペダリングモニターを選ぶ大きなメリットになるはずだ。
 

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