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メイド・イン・ジャパンならではのクオリティ ミノウラ2017年モデルの注目モデル

1986年、世界初の磁石式負荷装置を採用したサイクルトレーナー・マグターボを開発したミノウラ。以来、磁石式負荷にこだわりながら市場の声を反映し、さまざまな3本ローラーや固定ローラーを開発してきた。そんなミノウラの2017年モデルの新製品から、メイド・イン・ジャパンにこだわった2つの注目モデルを紹介する。
 
text:浅野真則

固定ローラーと3本ローラーのいいとこ取り FGシリーズハイブリッドローラー


サイクルトレーナー、いわゆるローラー台は大きく分けて3本ローラーと固定式がある。3本ローラーは、実走感に優れ、ペダリングスキル向上トレーニングにも活用できる反面、常にバランスを取りながら走る必要があり、乗るのに慣れが必要だ。固定式は、安定感があり、インターバルトレーニングのような高強度トレーニングに活用しやすい。一方、実走感には乏しく、ペダリングスキル練習に使うのは難しい。

すなわち、3本ローラーと固定式は、それぞれ一長一短あり、それぞれのメリットとデメリットが正反対の関係にある。インドアトレーニング中心のサイクリストは、固定ローラーと3本ローラーを適材適所で使い分けたりしていた。

そんなサイクルトレーナーの常識を打ち破るような新製品が、FGシリーズハイブリッドローラーだ。同シリーズは、三脚のような部分でフロントフォークを固定し、3本ローラーのようなユニットに後輪を乗せることで、固定ローラーの安定感と3本ローラーのような自然な走行フィールを両立。まさしく両者のハイブリッドであり、双方の良さをいいとこ取りしたシリーズと言える。

後輪を固定しないので、ホイールベースさえ合わせれば、ロードバイクだけでなく、MTBや小径車でも使えるのもポイント。もちろんそれも視野に入れ、フロントフォーク固定部はスルーアクスルだけでなく、MTBハブの新規格ブーストにも対応するアダプターを発売予定という。

ラインナップは、7段階の負荷調整機構と前輪固定部の高さ調整機構を備えたFG540と、2段階の負荷調整機構を備えながら、軽量で持ち運びやすいFG220の2モデル。それぞれを詳しく見ていこう。
 

ヒルクライムトレーニングにも使えるFG540


上位モデルのFG540は、7段階という負荷調整の幅広さが特徴だ。最大負荷にすると、時速40kmで走った時に324W出せるため、高負荷トレーニングにも対応する。後輪が固定されていないので、ローラーに自然な負荷がかかり、かなり実走に近い感覚で乗れる。

一方で、フロントフォークを固定する方式でバイクにダメージを与えないか、もがいたときにフォークが外れる危険性はないのか気になるところだが、心配は無用。フロントフォーク固定部にはエラストマーを内蔵し、ヘッドやフォークに加わる負担を低減してくれるのだ。さらにこのモデルは重量もあるので安定感があり、多少激しくもがいてもびくともしなかった。

フロントフォークの取り付け部は、高さを5段階に調整でき、それぞれ0%、3%、6%、8%、10%の勾配に相当する傾きを再現できる。ヒルクライムのトレーニングにも最適だ。本体は三脚部分とローラー部分を外してコンパクトにすることができる。とはいえ、重量があるので持ち運びにはあまり向いていない。実質的に固定ローラーのように部屋に据え置いて使う形になるだろう。
 

持ち運び可能でレース会場でのアップに使えるFG220


FG220は、基本的な構造は上位モデルのFG540と同じだが、負荷調整機能は2段階となり、フロントフォーク固定部の高さ調整機構は省略されている。とはいえ、負荷をオンにすると時速40km走行時に240W出せるので、ホビーサイクリストには十分な負荷がかかる。

重量は6kg台と軽い。本体はローラー部分と三脚部分をまとめてたたんでコンパクトにできる。折りたたんだときのサイズは、固定ローラーよりも場所を取らないほどだ。折りたたんだ状態で収納できる専用のバッグも付いてくるので、持ち運びも簡単。レース会場でのウォーミングアップにも使える。部屋のスペースが限られていてコンパクトに本体をたたみたい人、レース会場に持って行ってアップに使いたい人にはおすすめだ。
 

メイド・イン・ジャパンのこだわりポイント


ローラー台の精度を高める厳しい自社基準を設定している。本体の後輪を乗せるローラーは、国内メーカーから素材を仕入れ、ミノウラの本社工場で組み立てている。ローラーを作る専門の工程があり、ここではローラーの素材となるアルミ鋼板の厚みのばらつきをJIS規格以上の厳しい基準でチェック。さらに組み立ての段階で偏心具合もチェックし、回転時に共振しないようにバランスも取っている。ベアリングの圧入も専用の治具で行い、スムーズな回転を実現している。
 

固定式だけでなく、自重式にも切り替えられる ライブライドシリーズLR961/LR541


固定式ローラーのライブライドシリーズにも新しいモデルが追加になった。自重式と固定式をレバーひとつで切り替えられるLR961とLR541だ。

自重式とは、バイクの後輪を支えるアーム部分が固定されておらず、サドルに加重したりハンドル側に体重を移したりすることで負荷装置とタイヤの当たり具合が変化するタイプ。実走に近い自然な走行感が得られ、ペダリングスキル向上のための練習にも使いやすいのが特徴だ。固定式のようにタイヤと負荷装置の当たり調整をする必要がなく、タイヤの摩耗も少ない。ミノウラのローラー台としてはこの方式を採用するのは初めてだ。

一方、固定式はバイクの後輪を支える部分が固定されており、負荷装置とタイヤの当たり具合が変化しないタイプ。固定ローラーでは一般的な方式で、ミノウラの従来の固定ローラーはすべてこの方式を採用してきた。常に安定した負荷が得られ、インターバルトレーニングのような高強度トレーニングに向いているが、実走感には乏しいというデメリットもある。タイヤと負荷装置の当たり調整が必要で、負荷を一定に保つにはタイヤの空気圧管理もシビアに行う必要がある。また、タイヤの摩耗も他の方式に比べるとやや激しい。

両方式をレバーひとつで切り替えられるのがライブライドシリーズLR961とLR541が採用するSWフレームだ。フレームは単体でも販売され、ミノウラの固定ローラーを持っている人なら負荷ユニットを付け替えれば自重式と固定式を切り替えられる最新機能を最小限のコストで手に入れられる。この配慮はうれしい。
(*SWフレームのみの画像)

では、それぞれのモデルの特徴を詳しく見ていこう。
 

ツインマグユニットで圧倒的な負荷がかかるLR961

LR961は、自重式と固定式をレバーひとつで切り替えられるSWフレームを採用したライブライドシリーズの新しいフラッグシップモデル。負荷ユニットはネオジウム磁石を2個使用したこれまでのハイエンドモデルと同じタイプで、13段階の負荷調整が可能。最高レベルに設定すると、時速40kmで829Wとなり、エキスパートライダーも満足のいくレベルの高負荷まで対応する。この場合、アウターではロー側でも相当にギアが重いので、ホビーライダーには最大負荷までは必要ないかもしれないし、LR541でも十分だろう。

SWフレームは、自重式で使用する際の安定感を重視し、あえてこれまでのモデルよりフレーム重量を増やしているという。自重式でペダリング練習をする時に高回転で回しても、固定式で高負荷でもがくような場面でも、ローラー台の安定感があって頼もしかった。台が安定することで振動も少なく、静粛性も非常に高い。使用時の音を近くで聞いたが、部屋や床を隔てれば聞こえないであろうレベルだった。これなら集合住宅でも使いやすいのではないだろうか。

トータルの重量はおよそ13kgと、レース会場に持ち運んでアップに使うにはちょっとつらいレベル。しかし、それと引き替えに得た安定感や静音性の高さにより、集合住宅のような近隣の住人に気を遣うような場所でも気兼ねなく使えるのは大きなメリットと言えそうだ。

ANT+とブルートゥースの両通信規格に対応し、パソコンやスマートフォン、タブレットと連携させてミノウラのトレーニングアプリ・ライブライドやヴァーチャルサイクリング・ZWIFTを楽しむこともできる。スマートトレーナーとしても使えるのは魅力だ。手持ちのサイクルコンピューターにデータを飛ばすこともできるので、市販の解析ソフトでトレーニングログを一元管理している人にも使いやすい。
 

必要十分な負荷と価格のバランスを実現したLR541

LR541は、上位モデルと同じ自重式・固定式を切り替えられるSWフレームに、ネオジウム磁石を1個使った7段階の負荷調整が可能な負荷ユニットを組み合わせたミドルグレード。負荷レベルを最大にすると、時速40kmで472Wと、必要十分な強度のトレーニングが行える。ホビーライダーならこれでも十分だろう。

SWフレームの安定感は、このモデルでも味わえる。自重式での高回転ペダリングでも、固定式の全力でのモガキでも、今までのローラー台以上の安定感がある。重量もLR961よりはやや軽いが、やはりこれまでの固定ローラーと比べると少々重い。レース会場に持って行ってアップに使うような使い方はちょっと厳しいかもしれない。

このモデルの魅力のひとつは、上位モデル同様にスマートトレーナーとしても使えること。ANT+やブルートゥースでパソコンやスマートフォン、タブレットなどと連携させて、ライブライドやZWIFTを利用することもできる。定価が3万円台半ばなので、スマートトレーナーとしてはかなり安価なのは魅力だ。
 

メイド・インジャパンのこだわりポイント 最新の工作機械を使って作られるSWフレーム

SWフレームは、ミノウラ本社工場が新たに導入したレーザー加工、ブレーキプレスによって素材の切断や加工を行って各パーツを製造。これらを治具とロボット溶接で正確に溶接。最後に職人の手で仕上げ加工と検品を行うことで、高品質を実現している。


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ミノウラのメイド・イン・ジャパンのこだわりについては、「サイクルスポーツ」2017年2月号に掲載の本社工場見学ルポで詳しく紹介。乞うご期待!

 

問い合わせ先

箕浦
0584・27・3131
http://www.minoura.jp/japan/