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CYCLE SPORTS.jpが選ぶ2016年10大ニュース・海外サイクルロードレース編
2016.12.31
1. マイヨ・ジョーヌのフルームが自転車を捨てて走った!?
2016年の海外ロードレースで最も記憶に残っているのは、何と言っても7月のツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)のモン・バントゥ区間で、マイヨ・ジョーヌを着たクリストファー・フルーム(スカイ)が信じられないアクシデントに巻き込まれ、壊れた自転車を捨てて走り出したこのシーンだ。
モン・バントゥ山頂に吹き荒れた強風の影響で、急遽ゴールが予定よりも6km手前に変更になったことで、沿道に観客があふれかえり、その壁に阻まれたTV中継用のバイクが急停止し、すぐ後ろを走っていたフルームら3選手が転倒したためだった。
幸い選手たちには大したケガはなく、救済措置によってタイムも失わずに済んだが、一歩間違えれば大惨事になっていたかもしれないアクシデントだった。
今年のツールでは、第7ステージで残り1kmのフラム・ルージュが倒壊するアクシデントもあり、たまたま通りかかった英国のアダム・イェーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ)が軽いケガを負った。
◆ツール・ド・フランス2016レポート→ http://www.cyclesports.jp/articles/detail/66509
2. クライスヴァイクがチマ・コッピの下りで転倒し、マリア・ローザを失った
5月のジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)では、最終日の2日前に開催された山岳ステージで、マリア・ローザを着たステフェン・クライスヴァイク(ロットNLユンボ)が、チマ・コッピのアニェッロ峠の下り坂で転倒し、5日間守った総合首位の座を失ってしまうアクシデントがあった。
今年のジロは絶好調のクライスヴァイクが総合争いから脱落した翌日に、ベテランのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)が、コロンビアのエステバン・チャベス(オリカ・グリーンエッジ)を打ち負かして劇的な逆転劇を演じ、2度目の総合優勝を果たした。
◆ジロ・デ・イタリア2016レポート→ http://www.cyclesports.jp/articles/detail/63609
3. 世界チャンピオンのサガンが100回記念大会のロンドで初優勝
昨年米国で開催されたリッチモンド世界選手権で優勝し、今季は世界チャンピオンの証であるアルカンシエルを着ていたスロバキアのペテル・サガン(ティンコフ)が、100回記念大会のロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー)を初制覇し、モニュメントと呼ばれるビッグクラシックで初優勝した。
26歳のサガンはその後、ツール・ド・フランスで5度目のマイヨ・ベール(ポイント賞)を獲得し、中東のカタールで開催されたロードの世界選も連覇。今季はUCIワールドツアーランキングとUCIワールドランキングの両方で首位の座を獲得した。
◆ロンド・ファン・フラーンデレン2016レポート→ http://www.cyclesports.jp/articles/detail/61355
4. リオ五輪のロードレースは魔の下りカーブで落車が続出
8月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された第31回オリンピック競技大会の男子ロードレースでは、終盤に先行していたイタリアのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)とコロンビアのセルジオルイス・エナオ(チームスカイ)が、ビスタ・シネーザの下りカーブで転倒するアクシデントがあった。
この事故でレース展開は大きく変わり、最後はベルギーのグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMC)が、デンマークのヤコブ・フルサング(アスタナ)とポーランドのラファウ・マイカ(ティンコフ)をゴールスプリントで下して優勝し、金メダルを獲得した。
ビスタ・シネーザの魔の下りカーブでは、男子の翌日に開催された女子のロードレースでも終盤に先頭を走っていたオランダのアンナミーク・ファンフルーテンが転倒し、大怪我を負う事故が発生していた。
5. デゲンコルプらジャイアント・アルペシンの6選手が交通事故に遭った
1月中旬には、スペインでトレーニング・キャンプを行っていたUCIワールドチームのジャイアント・アルペシン(ドイツ)に所属する6人の選手が、トレーニング中に対向車線を走ってきたクルマに正面から突っ込まれて負傷する事故があった。
事故に遭ったのはワレン・バルギル(フランス)、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ)、チャド・ハガ(米国)、フレドリク・ルドビクソン(スウェーデン)、ラモン・シンケルダム(オランダ)、マクシミリアム・ヴァルシャイド(ドイツ)の6人だった。
デゲンコルプは左手の人差し指に切断寸前のひどいケガを負ってしまい、今季は春のクラシックレースに出場することができなかった。彼は昨年、ミラノ〜サンレモとパリ〜ルーベで優勝していた。
6. ミラノ~サンレモで初優勝したデマールに不正疑惑?
イタリアに春の到来を告げるクラシックレース、ミラノ~サンレモ(UCIワールドツアー)は、フランスのアルノー・デマール(FDJ(エフデジ))が落車でカオスになった集団ゴールスプリントを制して初優勝した。
ところがその翌日に、デマールはゴールまで残り30kmの落車に巻き込まれた後、集団に復帰するためにチームカーに捕まってチプレッサ峠を上っていたと、他の選手たちから告発されてしまった。
もちろんデマールはそれを否定し、証拠になるような映像もなかったため、彼のタイトルが剥奪されるようなことはなかった。しかし、この疑惑により、彼の初めてのモニュメント・クラシック制覇の栄光は、いささか陰りを帯びてしまった。
7. ベルギーで2人の若い選手が亡くなった
春先にはベルギーで悲しい事故が続いた。3月のヘント~ウェヴェルヘム(UCIワールドツアー)では、25歳のアントワン・デモワティエ(ワンティ・グループゴベール)が落車に巻き込まれた際、不運にも大会車両のバイクに衝突され、搬送先の病院で息を引き取った。
その前日にフランスで開催されたクリテリウム・アンテルナシオナル(ヨーロッパツアー2.HC)で、心臓発作を起こした22歳のダーン・ミンゲール(ルーベ・リールメトロポール)も、治療を受けていた病院で2日後に亡くなり、訃報が続いたベルギーは悲しみに沈んだ。
その悲しみがまだ癒えていない5月には、バロワーズ・ベルジャン・ツアー(ヨーロッパツアー2.HC)でふたたび大会車両のバイクによる事故が発生し、ベルギーのスティグ・ブルークス(ロット・ソウダル)が頭部に重傷を負ってしまった。彼は長らく昏睡状態に陥っていたが、12月に入ってやっと意識を取り戻したと発表されている。
8. UCIが新ルール『悪天候時実施要項』を導入した
国際自転車競技連合は今年1月1日から、悪天候時実施要項(EXTREME WEATHER PROTOCOL)と言う新しいUCIルールを導入した。これは極端な気象条件(みぞれ、積雪、強風など)がスタート前に予測されている場合、競技者の安全と健康を絶対的な優先事項とし、競技の中止や変更などの措置を取らせるものだ。
この新ルールに基づき、3月に開催されたイタリアのティレーノ~アドリアーティコ(UCIワールドツアー)の主催者は、低温で峠は降雪のおそれがあるという予報が出ていたクイーンステージの第5ステージを中止にする決定を前日に下した。
その数日前に、フランスで開催されていたパリ~ニース(UCIワールドツアー)が降雪に見舞われ、競技途中で中止になった騒ぎも、この決定に影響していたのだが、皮肉なことに当日は天気予報が外れ、雪は降らなかった。
9. スイスのカンチェッラーラが現役引退
スイスのファビアン・カンチェッラーラ(トレック・セガフレード)は、昨年のジャパンカップで来日した時、発表した通り、今季が現役最後の年になった。彼は8月にリオ五輪男子個人タイムトライアルで2度目の金メダルを獲得し、有終の美を飾った。
リオ五輪が現役最後のUCIレースとなったが、カンチェッラーラは10月のジャパンカップサイクルロードレース(アジアツアー1.HC)に来日し、ジャパンカップ・クリテリウムで日本のファンに最後の走りを見せてくれた。
11月にはカンチェッラーラ公式ファンクラブがあるベルギーで、『チャオ、ファビアン!』という盛大な引退イベントが開催された。6日間レースが開催されるゲントのベロドロームで行われたこのイベントは、6200枚の前売り券が完売だった。
10. シクロクロス世界選でメカニカル・ドーピングが初めて見つかり、自転車の検査が強化された
1月末にベルギーのフーズデン・ゾールドルで開催されたシクロクロス世界選手権で、史上初めて自転車に電動モーターを仕込むメカニカル・ドーピングの違反者が摘発された。2010年にイタリアのTV局RAIがこの不正行為の存在を世に知らしめ、UCIがX線を使用した自転車検査をスタートして6年が経過し、遂にそれが噂ではなく、現実に行われているのだとわかったのだ。
この事件を受けて今季はロードレースでも、タブレットを使用した新システムで自転車の検査を強化したが、幸か不幸か違反者はまだ見つかってはいない。しかし、不正はいつか暴かれるにちがいない。