現地で登場したのはモデルナンバー「F10」が与えられた新しいドグマ。2014年に登場し、ピナレロのベストセラーモデルになったF8を改良するのは容易なことではなかったはず。90レースで勝利を挙げた名車にメスを入れるために、同社は3つの目標を作った。
1.TTバイクで培った空力性能をF8の性能と融合させること
2.ピナレロらしさである下りの速さ、高いハンドリング性能を維持する。もちろん全フレームサイズで
3.美しいこと
まず1を実現するためCFD解析が行われた。もちろんTTバイクのデザイン全てをロードバイクに投入することはできない。最小限の機能で最大限の効果を上げられるパートが吟味された。その結果フォークブレード、トップチューブ、ダウンチューブの形状を変更されることになった。空気抵抗低減のために、他社にはワイヤ類を徹底的にフレームに内蔵しているモデルもあるが、F10はそうではない。その理由を先の開発者に尋ねると「ワイヤの内蔵は効果があるが、最小限にとどめている。使いやすさにはこだわりたかった」と。
2のピナレロらしいハンドリング、運動性能を実現するために東レT11001Kカーボンをフレーム素材に採用。剛性は7%アップ。重量は6.3%軽くなった。ちなみに530サイズで820gとのこと。ヘッドパーツは上が1-1/8インチ、下が1-1/2インチの上下異径。重量を軽くすることを考えれば、下ワンを1-1/4インチに小さくするという選択肢もあるが、「それではピナレロらしいハンドリングは実現できない」と、あくまでも総合力を考えた選択になっている。
3の美しさについては、先に触れたトップチューブの形状などを決定するときに、CADだけに頼らず手仕事で造形を作りこんでいった。この他にも細かいアップデートが成されている。フレーム単体ではなく、全てのパーツが取り付けられ、ライダーが乗車した状態で最も抵抗が少なくバランスが良くなるようブラッシュアップが行われた。